2024年から始まる新NISAに向けて、東証上場ETFから、日本の高配当を対象としたものを、あらゆる角度比較して、オススメETFを浮き彫りにします。
米国のETFと比べて、東証上場ETFは弱いと言われてました。ただし、最近はなかなか駒が揃ってきたようです。
2022年の日本株は分配金がかなり増えたので、高配当ETFは増配祭りだったようです。どんなETFがあるのでしょうか。コンセプトにも注目が集まります。前半は8つのETFを個別に紹介します。後半は8つのETFの様々なでデータで比較します。
※定期的にデータを更新しています
序盤は8つETFの基本データを比較
前半は、8つETFのコンセプトや組込上位銘柄、業種比率など基本データを1つずつ紹介
後半は、業種、利回り推移、増配率、トータルリターンなどをグラフで比較
最後に、今回のデータをランク付け、気になるトップは?
- 今回紹介する8つの日本株高配当ETF
- ETFを会社ごとに分けて、概要を説明
- 1577(NEXT FUNDS 野村日本株高配当70連動型上場投信)
- 1489(NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信)
- 1478(iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETF)
- 2564(グローバルX MSCIスーパーディビィデンド-日本株式 ETF)
- 1651(iFreeETF TOPIX高配当40指数)
- 1494(One ETF 高配当日本株)
- 1698(上場インデックスファンド 日本高配当(東証配当フォーカス100))
- 2529(NEXT FUNDS 野村株主還元70連動型上場投信)
- 高配当ETFの業種別の組込比率トップ5(東証33業種)
- 利回り推移を確認しよう
- トータルリターンを比較する
- 過去に購入した場合、取得価格に対する現在の利回り(YOC)は?
- 過去の増配率は?
- 3、4、5年増配率を使った今後のYOC予想一覧
- それぞれの項目をまとめると?
- まとめ
今回紹介する8つの日本株高配当ETF
今回取り上げる8つのETFです。いずれも東証に上場しており、日本株を対象とした高配当ETFです。
上から純資産総額の大きい順に並んでいます。100億以上が対象です。
野村アセットマネジメントのETFが3つランクインしています。NEXT FUNDSシリーズの【1577】(NF日本株高配当70)、【1489】(NF日経高配当50)、【2529】(NF株主還元70)です。ブラックロックやグローバルXは、米国ETFでもおなじみですね。
※8つのETFすべてが2024年から始まる新NISAの成長投資枠の対象となりました
ETFを会社ごとに分けて、概要を説明
今回ご紹介する日本株高配当ETF8選の基本データです。数値が赤色は、他のETFよりも秀でているという意味です。オレンジ色は赤色に次ぐ2番手グループという意味です。
左から純資産総額の高い順に並んでいます。
経費率は0.2~0.3%台がほとんどです。グローバルX社の【2564】(GXスーパーディビ)だけは0.429%と少し高いですね。
ETFの背景色は運用会社のコーポレートカラーにします。野村があずき色、ブラックロックが黒、グローバルXがオレンジ色という感じです。大和アセットマネジメントだけは、他社と被っていたので、紫色にしました。
分配金の支払いは基本的に年4回ですが、【1478】(iSMSCI高配当)と【1494】(One高配当)は年2回です。
現在の利回りは【2564】(GXスーパーディビ)が5%台、【1489】(NF日経高配当50)が4%台と素晴らしいです。なお、利回りは過去1年分配金を現在の株価で割った数値です。
1577(NEXT FUNDS 野村日本株高配当70連動型上場投信)
それではETFごとに個別に見ていきましょう。まずは【1577】(NF日本株高配当70)。NEXT FUNDS 野村日本株高配当70連動型上場投信。下の画像はクリックすると拡大します。
※「業種別配分」「組込上位10銘柄」は2023年1月末のデータです
純資産総額は730億円と最も大きいです。配当の継続性や流動性に配慮し、利回り上位70銘柄を均等に組み入れています。米国上場ETFなら【SPYD】の利回りを少し低くした感じですね。
業種は銀行が16%と多く、建設業、化学、保険業、卸売業と続いています。均等加重なので、上位銘柄を意識する必要はあまりありませんが、組込上位10銘柄は銀行や保険など金融関連がほとんどです。2022年は銀行のリターンが最も良かったので、銘柄入れ替え後に株価上昇した銀行株の比率が上がったということです。
【1577】の分配金の推移は?
分配金の推移です。2020年に減りましたが、それ以外は順調に増えています。
2023年は1月、4月ともに前年同期を上回りましたが、7月はわずかに減りました。
ちなみに日本の高配当ETFは、ほとんどの銘柄が2020年のコロナ・ショックで減配しています。増配率は5年や7年で約10%となかなか優秀です。
【1577】の分配金と株価の関係
過去1年分配金と株価の比較です。
株価は長期で見ると横ばいですね。分配金の伸びは悪くないです。
【1577】を過去に買った場合は?
株価、利回り、YOCです。YOCというのは、過去にこの銘柄を買った場合、取得価格に対する利回り(YOC=Yield on Cost)です。この黄色の線が左肩上がりの場合は、株価好調&増配傾向にあるといえます。
利回りは直近1年間の分配金を株価で割った数値です。いわゆる分配金利回りのことです。
株価が軟調だった2020年7月に買っていた場合、YOCは約6.3%になっています。設定当初の2013年3月に購入していれば、YOCは約6.7%です。
赤い線の利回りは現在は約3.6%と高いですが、2019年よりも前は3%を下回っていることが多かったですね。
一番売れている高配当ETFだけあって、全体的に安定した高配当&増配と言えそうです。

1489(NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信)
つぎは【1489】(NF日経高配当50)。NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信。
純資産総額は670億円で、最近売れ行きがかなり好調です。
※「業種別配分」「組込上位10銘柄」は2023年1月末のデータです
対象は日経平均225社の中から、利回り上位50銘柄。利回り加重に加え、流動性を加味したウエートで組み入れます。配当利回りの高い大型株が上位に組み込まれます。米国ETFなら【SPYD】【HDV】【VYM】を合わせて利回りを高くしたイメージですかね。
業種は銀行が21%とかなり多く、卸売業、鉄鋼、保険業、化学と続いています。組込上位の業種はバラバラです。配当銘柄で有名な大型企業ばかりです。銀行は三井住友、みずほ、三菱UFJの三大メガバンクが揃っていますね。
【1489】の分配金の推移は?
分配金の推移です。2018~2021年にかけては横ばいでしたが、2022年はかなり増えました。
2023年に入っても、1月と4月は前年同期を上回りましたが、7月は下回りました。3年増配率は19%と高いです。最近売れ行きが好調な理由が、増配によるものと言えそうです。
【1489】の分配金と株価の関係
過去1年分配金と株価の比較です。
株価は横ばいでしたが、2022年後半ごろから急上昇しています。2022年以降の過去1年分配金の伸びは素晴らしいです。
【1489】を過去に買った場合は?
株価、利回り、YOCです。株価が軟調だった2020年3~10月に買っていた場合、現在YOCは8%弱になっています。赤い線の利回りは現在は4.2%と高いですが、以前は4%を下回っていることもありました。
現在株価が上がっているにもかかわらず、利回りの高さを維持しているというのは、増配傾向ということですね。
日本株の高配当銘柄を個別に買うよりも、このETF1本にまとめてしまうという方法もありですね。

1478(iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回り ETF)
つぎは【1478】(iSMSCI高配当)。ブラックロック社の「iシェアーズMSCIジャパン高配当利回りETF」です。
純資産総額は620億円で、3番目に売れています。経費率が0.209%と今回の8ETFの中では最低水準です。
大型株と中型株が対象で、配当性向や配当の継続性、財務指標の要件を満たした銘柄から、配当利回りの高い銘柄で構成される指数と連動しています。
業種は情報・通信業が16%です。食料品も上位で、ディフェンシブな業種が結構組み込まれており、何が何でも利回り重視というわけではなさそうです。銀行が上位に入っていないのが、同じブラックロック社の【HDV】とも似ています。組込1位は半導体製造装置の東京エレクトロンですね。時価総額加重なので、大企業が上位を占めています。
【1478】の分配金の推移は?
【1478】の分配金は年2回支払われます。2020、2021年は低迷していましたが、2022年の8月に一気に増えました。直近の2023年8月は、前年同期と比べると少なかったです。
【1478】の分配金と株価の関係
過去1年分配金と株価の比較です。
2022年8月に一気に増えたので、過去1年分配金は多いです。ただし直近の2023年8月はイマイチでした。株価は上昇傾向です。
【1478】を過去に買った場合は?
株価、利回り、YOCです。【1478】は中配当&株価上昇が見込めるETFと言えます。そのため、早くに買うとYOCは上がりますね。2016年6月に買っていた場合、現在YOCは4.3%になっています。
赤い線の分配金利回りは、やや不安定です。3.5%を超えることも、2.5%以下もあります。株価が上がりすぎて、直近の分配金が今ひとつだったので、現在の分配金利回りは約2.4%と、あまり高くないですね。

2564(グローバルX MSCIスーパーディビィデンド-日本株式 ETF)
つぎは【2564】(GXスーパーディビ)。グローバルX社の「グローバルX MSCIスーパーディビィデンド-日本株式 ETF」です。
純資産総額は290億円です。今回紹介するETFの中では設定が2020年と一番新しく、4番目に売れているので、売れ行きは好調です。
基本は利回りの高い25銘柄の均等加重です。配当の継続性、セクターバランスなども考慮しています。米国上場ETFなら【DIV】と【SPYD】の中間ですかね。
業種は海運業、鉄鋼業、建設業の順で、銀行がありません。REITやゴム製品なども入っており、かなり独特です。ただし、海運業、鉄鋼業、証券、商品先物取引業は、景気敏感の代表格ですね。このあたりを多く組み込むことで、利回りを高くする戦法ですね。景気後退時に不安定になる可能性がありそうです。
組込1位は日鉄物産。難易度の高そうな銘柄が並んでいます。
【2564】の分配金の推移は?
分配金の推移です。最初に分配金が支払われたのが2020年10月なので、コロナ・ショックは経験していません。順調に伸びていますが、スタートした時期が良かったという考え方できそうです。
直近の2023年4月の分配金は前年同期を上回りましたが、7月は0円でした。1年増配率は23.1%です。
【2564】の分配金と株価の関係
過去1年分配金と株価の比較です。
株価は横ばいが続いていましたが、2022年末より上昇しています。分配金は順調です。期間が短いので、何とも言えませんが。
【2564】を過去に買った場合は?
株価、利回り、YOCです。2020年10月に買っていた場合、現在YOCは約7.5%になっています。青い線の株価、赤い線の利回りも上昇しています。今後、景気後退局面を迎えた場合、真価が問われそうです。
【2564】は利回りは魅力ですが、組込銘柄が少し特殊なので、サテライト的に保有するのが良さそうです。

1651(iFreeETF TOPIX高配当40指数)
【1651】(大和高配当40)です。大和アセットマネジメント社の「ダイワ上場投信-TOPIX高配当40指数」です。
※2023年4月4日に名称が「iFreeETF TOPIX高配当40指数」(iF高配当40)に変更されました
純資産総額は220億円。経費率が0.209%と今回の8ETFの中では最低水準です。
TOPIX100のなかから、利回りの高い40銘柄で構成。時価総額加重平均で組み入れます。配当利回りの高い大型株が対象なので、【1489】と似ています。
ただし、こちらは時価総額加重平均を採用しています。一般的に時価総額加重平均にした場合、株価上昇は狙えますが、利回りが少し劣ります。実際利回りは2.58%と、今回の8つのETFの中で唯一3%を下回っています。
セクター上位2つが銀行業、卸売業というのは【1489】と同じです。組込上位10銘柄には三大メガバンクが入っています。利回り高めの大企業がバランスよく入っており、オーソドックスな高配当ETFですね。
【1651】の分配金の推移は?
分配金の推移です。2018年以降は、横ばいです。2022年に増えているETFが多い中、それほど増えていません。
2022年と比較して、2023年は少し下回っています。
【1651】の分配金と株価の関係
過去1年分配金と株価の比較です。株価は2021年初頭から上昇しています。ただし、分配金はあまり増えていません。
【1651】を過去に買った場合は?
株価、利回り、YOCです。2021年以降株価がかなり上がっていますが、分配金は横ばいのため、分配金利回りは下がっています。2020年は分配金利回り4%以上でしたが、最近は2%に近づいています。株価上がりすぎ&分配金の伸びが今ひとつですね。
1494(One ETF 高配当日本株)
つぎは【1494】(One高配当)。アセットマネジメントOne社の「One ETF 高配当日本株」です。純資産総額は200億円。
TOPIXが対象で、10年以上連続増配か、安定した配当を維持している40~50銘柄が組み込まれています。配当利回り加重平均を用います。米国ETFなら【VIG】と【SDY】に、利回りを少し高くしたイメージですね。
業種は建設業がトップで21%とかなりの比重です。以下、銀行業、化学、卸売業と続きます。それなりに安定している建設業が首位というのが、連続増配系という感じですね。
増配系が対象で、かつ利回り加重なので、組込上位銘柄は少し特殊です。
【1494】の分配金の推移は?
分配金の推移です。コロナ・ショックの2020年に減配していないのが、増配系の特徴を現わしています。暴落時に強さを見せるのが、分配金からわかりますね。分配金は年2回なので、少し物足りないという人もいるかもしれません。
2023年4月は382円で過去最高額でした。
【1494】の分配金と株価の関係
過去1年分配金と株価の比較です。株価は最近は少し上がっています。分配金は着実に増えています。
【1494】を過去に買った場合は?
株価、利回り、YOCです。分配金が増えているわりに、株価があまり上がっていないので、利回りは少しずつ上がっています。2018年は2%ぐらいでしたが、2020年以降は3%を超えています。YOCは早くに買うと、それなりに上がります。
1698(上場インデックスファンド 日本高配当(東証配当フォーカス100))
【1698】(上場高配当)です。日興アセットマネジメント社の「上場インデックスファンド 日本高配当(東証配当フォーカス100)」です。
純資産総額は180億円。設定が2010年で、今回の8ETFの中では最古参です。
TOPIX1000と東証REIT指数の構成銘柄から、時価総額と予想配当利回りに注目した「東証配当フォーカス指数」に連動したETFです。株式90銘柄、REIT10銘柄です。
【1698】は配当利回りをベースに、時価総額加重平均で選んでいるので、米国の高配当ETFには例えづらいですが【DHS】か【HDV】が近いかもしれません。TOPIXの上位銘柄が結構含まれているので、【VYM】っぽさもあります。
セクター上位は食料品、銀行業、電気機器です。業種のバランスはよく、分散されています。
【1698】の分配金の推移は?
分配金の推移です。日本株は3月決算が多く、3月と9月の年2回、配当を払う企業がほとんどです。【1698】は決算月によってETFの中身を2つのポートフォリオに分けています。それにより、年4回の分配金の差を少なくしています。分配金の均一化を目標としているのが特徴です。
2020年のコロナショックで低迷しましたが、2022年に一気に増えました。2023年は1月は前年同期より大幅増でしたが、4月はわずかに減り、7月は増えました。
【1698】の分配金と株価の関係
過去1年分配金と株価の比較です。設定から10年以上経過しています。どちらも順調に伸びています。
【1698】を過去に買った場合は?
株価、利回り、YOCです。ここ1年で分配金がかなり増えたこともあり、2012年に買っていた場合、YOCは9%を超えています。米国上場ETFの【VYM】といい勝負です。
ただし、2022年の分配金が多すぎただけという見方もできます。2023年の分配金がどうなるか、注目したいですね。

2529(NEXT FUNDS 野村株主還元70連動型上場投信)
最後は【2529】(NF株主還元70)。NEXT FUNDS 野村株主還元70連動型上場投信。純資産総額は150億円です。
金融・保険業を除く銘柄の中から、配当、自社株買い等の株主還元を積極的に行っている70銘柄が対象です。高配当ETFは銀行などの金融関連が多くを占めているので、珍しいコンセプトです。
金融少なめで株主還元というETFなので、米国ETFなら【HDV】と【SDY】の中間ぐらいのイメージでしょうか。
業種は化学が14%と多く、建設業、情報・通信業、電気機器と続いています。組込上位10銘柄は他の高配当ETFとは異なりやや特殊で、金融以外が満遍なく入っています。
【2529】の分配金の推移は?
分配金の推移です。設定が2019年と最近なので何とも言えませんが順調に増配しています。2020年に本格的に分配金を支払い始めたので、コロナ・ショックでのダメージがあったかどうかは何とも言えませんね。3年増配率は13.1%と好調です。
2023年は1月、4月ともに前年同期を上回りましたが、7月は減りました。
【2529】の分配金と株価の関係
過去1年分配金と株価の比較です。期間が短いので判断が難しいですが、分配金の増え方は良いですね。
【2529】を過去に買った場合は?
株価、利回り、YOCです。2020年の株価は結構低迷しています。ただ、その後はなかなかのペースで回復しました。利回りはあまり変化はないです。増配傾向なので、早くに買っているとYOCは上がっています。
たとえば、同じ野村アセットマネジメントの【1489】をコアにした場合、サテライトとしてこの【2529】を保有するという方法は相性が良いかもしれませんね。
高配当ETFの業種別の組込比率トップ5(東証33業種)
ここからは後半戦。8つのETFのデータを比較していきます。
まずは8つのETFの業種別組込比率トップ5を見ていきましょう。東証33業種による分類です。
8つのETFすべてでトップ5にランクインしたのは卸売業です。いわゆる商社ですね。2022年はかなり好調でした。三菱商事、三井物産など利回りの高い大型銘柄が多いです。
銀行業は5つのETFでランクインしました。1位もしくは2位に入っています。2022年の業種別リターンで銀行は首位だっただめ、株価が上がってETF内の比率が高くなったという意味です。個別銘柄でも、三菱UFJ、三井住友、みずほの三大メガバンクは上位に入っていたETFが多かったですね。
化学と建設業は4つのETFにランクイン。野村アセットマネジメントのETF【1577】(NF日本株高配当70)、【1489】(NF日経高配当50)、【2529】(NF株主還元70)に入っています。
グローバルX社の【2564】(GXスーパーディビ)は業種が特徴的です。海運業、鉄鋼、証券・商品先物取引業という、景気敏感株の代表格がすべて入っています。
近年の業種別成績は?
ちなみにこちらはTOPIX17シリーズの年ごとのパフォーマンス。野村アセットマネジメントのデータです。
東証33業種が細かすぎるので、TOPIX17シリーズは利便性を重視して、より大雑把に区切ったものです。
右端が2022年。首位の銀行は39%も上昇しました。3位に商社・卸売りで、こちらは21%のパフォーマンスです。商社・卸売りは2021年は2位、銀行は4位なので、2年続けてパフォーマンスが良かったことになります。
株価が上がるとETF内での比率も上がるので、業種別では商社と銀行はほとんどの高配当ETFの上位にいるわけです。
利回り推移を確認しよう
それでは2014年以降の利回り推移をチェックしましょう。利回りは過去1年分配金から算出しました。株価は月に1度、月末のものです。8つのETFを1つのグラフにすると分かりづらいので、2つに分けます。
まずは純資産総額の大きな4つのETFです。
【1489】(NF日経高配当50)と【2654】(GXスーパーディビ)は現在の利回りが5%弱くらいで、かなり利回りが高いです。
いずれのETFも現在は利回りが高い状態です。株価が低迷しているというよりは、2022年日本の高配当銘柄は増配ラッシュで分配金が増えたからです。現在利回りは平均よりも約1%高いです。
純資産額の小さな4ETFの利回り推移
今度は純資産総額の小さい4つのETFを見てみましょう。
【1651】(大和高配当40)は2020年3月頃は4.4%ほど利回りがありましたが、現在は約2.6%まで下がっています。現在利回りは平均よりも約0.6%低いです。
逆に【1698】(上場高配当)の現在利回りは平均よりも約1%高いです。
トータルリターンを比較する
トータルリターンを比較します。トータルリターンとは分配金を再投資した株価リターンのことです。CAGR(Compound Annual Growth Rate/年平均成長率)で計算します。手数料や税金は考えません。2023年1月末基準のデータです。
まずは1年と2年のトータルリターン。
【1489】(NF日経高配当50)が1年、2年リターンともに20%以上と圧倒的です。利回りも5%弱と高いのに、リターンも素晴らしく申し分ないです。
次点は【1651】(大和高配当40)。2年リターンが22.4%と高く、1年リターンも17.2%と高水準。このETFは利回りが3%を切っているので、今回紹介したETFの中では、インカムよりもキャピタル重視と言えます。
【1577】(NF日本高配当70)【2564】(GXスーパーディビ)【1698】(上場高配当)もなかなかです。2年リターンが18%前後ですね。
2年リターンは日本株の高配当ETFはいずれも素晴らしいです。14%をクリアしています。
中期のリターンはどうか?
続いて3年と5年のトータルリターンを見てみましょう。設定から間もない【2564】はデータなし。【2529】は5年リターンがなしです。
3年リターンは【1489】(NF日経高配当50)が15.1%と素晴らしく、【1651】(大和高配当40)が14%で続いています。1年や2年リターンと同じ傾向です。【1478】(iSMSCI高配当)は10.7%と3番目にいいですね。このETFは1年や2年リターンは今ひとつでしたが、3年は素晴らしいです。
5年リターンになると【1651】(大和高配当40)が6%、【1489】(NF日経高配当50)が5.9%と逆転します。【1577】(NF日本高配当70)は3年、5年ともに最下位です。
トータルリターン全体では【1489】(NF日経高配当50)がトップで、【1651】(大和高配当40)が2番手、3番手以下とは少し差がつきました。
過去に購入した場合、取得価格に対する現在の利回り(YOC)は?
過去にETFを購入していた場合、現在、取得価格に対する利回り(YOC)はどのくらいになっているでしょうか? 1、3、5、7、9年前にETFを買っていたら、現在どうなっているかというデータです。
一番右端の灰色の棒グラフが現在の利回りです。下に数値も書いてあります。
3年前はオレンジ色で、こちらも数値も表示しています。2020年2月なので、ちょうどコロナ・ショックの頃です。なので5年前よりも3年前の方が株価が下がっているため、3年前に購入したETFのYOCは高い数値となっています。
いずれも全体的に左肩上がりなので、過去に購入した方が株価が低く、現在YOCが高いということですね。
【1489】(NF日経高配当50)は3年前に購入した場合は、現在7.2%と高いYOCです。
歴史の長い【1577】(NF日本高配当70)と【1698】(上場高配当)は9年前YOCがあります。どちらも6%近くですね。
利回りが低くてあまり増配していない【1651】(大和高配当40)は、過去に買っていてもそれほどYOCは高くなりません。
過去の増配率は?
増配率について見ていきましょう。増配率は1年あたりの幾何平均です。CAGR(Compound Annual Growth Rate/年平均成長率)とも言います。
表の上段は1年ごとの過去1年分配金と、前年からの増配率です。背景がピンク色がマイナスです。2021年がマイナスが多いですね。起点月が1月や2月がほとんどで、そこから過去1年分配金という意味なので、2021年は実質的に2020年のコロナ・ショックがあった年という意味です。
表の下段は現在を起点とした1~9年間の増配率。年平均をCAGRで計算します。背景のオレンジ色が濃いほど、増配率が高いという意味です。この部分をグラフで見てみましょう。
1年増配率は?
まずは1年と2年の増配率。2022年は日本の高配当株が増配ラッシュだったため、赤い棒グラフの1年増配率はとてつもない数値が並んでいます。【1489】(NF日経高配当50)、【1478】(iSMSCI高配当)、【2564】(GXスーパーディビ)、【1698】(上場高配当)は40%を超えています。
その一方、【1651】【1494】は少し物足りないです。
2年増配率も高水準。青い棒グラフです。コロナ・ショックで減配した2020年が対象のためですね。ここでも【1489】(NF日経高配当50)が37.1%と抜群です。【1698】(上場高配当)、【2529】(NF株主還元70)は25%前後と素晴らしいです。
3~5年増配率は?
3年、4年、5年増配率を見ていきましょう。設定から日が浅い【2564】や【2529】はデータはありません。
3、4、5年いずれも【1489】(NF日経高配当50)が15%前後と高水準。次点は【1698】で10%をクリアしています。【1577】【1478】【1494】も10%前後と悪くないです。今ひとつなのは【1651】。トータルリターンは素晴らしかったですが、増配率はそれほどよくありません。
増配率でも【1489】(NF日経高配当50)が断トツでした。利回り、トータルリターン、増配率といずれもトップクラス。最近売れ行きがかなり好調なのもデータ面から裏付けがされています。
3、4、5年増配率を使った今後のYOC予想一覧
3、4、5年増配率を使用した将来YOC予想をまとめました。表の下の部分です。背景の青色が濃いほど、数値が高いです。表の下段、上が20年後YOC予想、下が10年後YOC予想です。
現在の過去1年分配金額と3、4、5年前の同時期の過去1年分配金額を比較して、幾何平均で年間増配率を計算し、それを使って将来YOCを予測します。
YOCとはYield on Costのことで、取得価格に対する利回りのことです。2023年2月17日の終値でETFを買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。「分配金は再投資しない、税金や手数料は考慮しない」で検証します。
3年増配率から10、20年後YOCを予想する
まずは3年増配率を使ってYOCを予想します。左側の濃い棒グラフが10年後YOC予想。右側の薄い棒グラフが20年後YOC予想です。
10年後、20年後ともに【1489】(NF日経高配当50)が好調です。増配率が17.3%とかなり高いので、このままのペースで増配し続ければ、20年後YOCは113%です。【1698】(上場高配当)も高い数値ですね。
今回紹介するほとんどのETFは2022年の分配金が多かったので、現在の増配率はどの期間で区切っても高い状態です。このままの増配率が続くとは考えづらいので、参考程度にしてください。
ちなみに将来YOC予想は、毎年の増配率があまり変化がないETFだと、ある程度参考になるかもしれません。時価総額加重平均で組み込んでいるETFですね。【1478】(iSMSCI高配当)と【1651】(大和高配当40)です。
4年増配率から10、20年後YOCを予想する
4年増配率の場合はどうでしょうか。
ここでも【1489】(NF日経高配当50)、【1698】(上場高配当)、さらに【1494】(One高配当)が素晴らしいです。ただし、20年後YOCが30%というのは現実的ではなさそうですが。
5年増配率から10、20年後YOCを予想する
5年増配率のYOCを予測しましょう。
全部で4つしかありませんが、いずれも10年後YOCは10%、20年後YOCは27%以上です。【1577】(NF日本高配当70)や【1478】(iSMSCI高配当)は5年増配率だと、なかなかの成績を残しています。
いずれにせよ、これまでのデータ同様に【1489】(NF日経高配当50)が圧倒的ですね。
それぞれの項目をまとめると?
これまで取り扱ったのデータをランクづけしました。「A」が最高で「B」「C」「D」の順です。相対比較で、やや強引に差をつけました。参考程度にしてください。
ざっと見たところ、やはり【1489】(NF日経高配当50)が「A」が多く、データ面からは優秀です。純資産総額、利回り、トータルリターン、増配率という注目したいデータに「A」が並んでいます。
次に優秀なのは【1698】(上場高配当)ですかね。「B」が多く、「C」がわずかに1つと安定しています。もっとも歴史の古いETFだけのことはあります。
もっとも純資産総額の大きい【1577】(NF日本高配当70)も悪くないですね。規模の大きなETFだけのことはあります。
ランキングの数をまとめると?
ABCDの数値をまとめたデータです。
「A」の数は【1489】(NF日経高配当50)が6個で最多で、圧倒的です。次点が2個で、【2564】(GXスーパーディビ)、【1651】(大和高配当40)、【1698】(上場高配当)です。
「B」の数は【1698】が最多で8個、【1577】(NF日本高配当70)が7個で続き、【2529】(NF株主還元70)が5個です。
「C」の数は【1494】(One高配当)が9個あります。
まとめ
データからは【1489】(NF日経高配当50)が最強でした。予想通りですね。ただし、分配金の伸びが米国株ETFの【RDVY】や【SPYD】と少し似ており、2022年はイレギュラー的に良かったという可能性もあります。今後の分配金に注目したいです。
【1489】(NF日経高配当50)は日経平均225社の中から、利回り上位50銘柄が対象で、利回り加重に加え、流動性を加味したウエートで組み入れます。そのため、主要な大型配当株がほとんど入っています。下が全銘柄です。
三大メガバンクの三井住友、みずほ、三菱UFJ、4大商社の三井物産、三菱商事、伊藤忠、住友商事の商社。さらにJT、ソフトバンク、武田薬品などです。インカム投資家なら、個別株で保有している銘柄も多いかと思います。
8つのETFは銀行業が上位に入っていたものが多かったですね。銀行以外で選ぶなら【1478】(iSMSCI高配当)、【2564】(GXスーパーディビ)、【2529】(NF株主還元70)などでしょうか。
【2564】(GXスーパーディビ)は利回りがかなり高いが、海運業、鉄鋼業など景気敏感株が多めです。
また、【1651】(大和高配当40)は分配金や利回りはイマイチですが、トータルリターンが良かったです。時価総額加重平均で組み込んでおり、純粋な高配当ETFというよりも、株価の値上がりを狙う感じですね。少し特殊です。
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