バンガード社のバンガード・S&P500連動ETF【VOO】が2021年12月17日に分配金を発表しました。1.5329ドルです。1年前の同期は1.3829ドルでしたので、1年前の同期との比較では10.8%増です。
利回りを過去1年間の分配金額から算出すると、2022年1月20日の終値は410.76ドル、過去1年の分配金額は5.4367ドルなので、利回りは1.32%になります。
※このページでの利回りは過去1年間の分配金をもとに計算します
【VOO】の過去の分配金と増配率は?
【VOO】が設定されたのは2010年9月です。下の表は過去の分配金の一覧です。
2021年9月の【VOO】の分配金が増配or減配なのかは、どのデータを比較するかによって異なります。もっともオーソドックスなのは、前年の同期との分配金額の比較です。今回が1.5329ドル、前年の同期が1.3829ドルなので10.8%の増配になります。また、前年同期との過去1年分配金額の比較では、今回が5.4367ドル、前年の同期が5.3027ドルなので、2.5%の増配となります。
※背景が赤になっているのが減配です
【VOO】の期別分配金は?
2021年12月の分配金1.5329ドルは、過去最高額です。2021年の年間分配金額は、前年の2020年は上回りましたが、前々年の2019年よりは少ないです。
【VOO】の年間分配金と株価の関係は?
【VOO】の分配金を1年ごとにまとめてグラフ化しました。どちらも順調に伸びていましたが、2020年以降は株価が続伸したのに対して、年間分配金は横ばいです。
【VOO】の分配金額を棒グラフで確認しよう
期ごとの分配金額を株価と比較したものです。デコボコしていますが、順調に伸びています。ただ、2019年以降は足踏み状態といえそうです。
【VOO】の過去1年分配金額を棒グラフで確認しよう
過去1年分配金額と株価を比較しました。過去1年分配金額の伸びと株価の動きは、結構連動しています。こちらもコロナ・ショック後の2020年6月以降は株価は急上昇しましたが、過去1年分配金額は横ばいです。
【VOO】の年間増配率は?
年間増配率を確認しましょう。最初に分配金が支払われたのが2010年の9月からなので、データは2012年からです。唯一2020年がマイナスですが、これは2019年が17.6%と大幅プラスだった影響が考えられます。ただし、翌2021年の伸び具合は例年と比べると今ひとつの2.5%でした。
長期の増配率をチェック!
1年ごとの増配率は年によって結果が異なるので、若干イメージしづらいかもしれません。そういう時は、複数年単位で増配率をチェックしましょう。下のグラフは過去3年と過去5年の増配率の推移です。
過去3年、5年ともに右肩下がりですね。ただ、それでもほとんどが5%以上なので、悪いというわけではないです。コロナ・ショック後は無配の大型テック企業がより強く、これらの比率が上がったため、【VOO】全体の配当額が減ったことが原因と言えそうです。
2020年以降の利回りは?
2020年以降の【VOO】の株価と利回りを見てみましょう。過去1年の年間分配金額から算出しました。青線が株価(左軸)で、赤線が利回り(右軸)です。2020年の年初は利回りが1.8%台でしたが、2月半ば以降は株価が下がったため、3月23日には利回りが約2.6%まで上昇しました。現在は株価がコロナ・ショック前を大幅に上回り、利回りは1.32%です。
現在の【VOO】の株価と利回りの関係は?
年間分配金額が現在と同じく5.4367ドルで変わらなかったら、利回りはどのように変化するでしょうか。下のグラフは年間分配金額が現在と同じ5.4367ドルが続いた場合の、利回りと株価の相関図です。利回りを0.1%ごとに株価を出しました。今後【VOO】を購入しようと考えている人は、目安にしてください。
【VOO】を過去に買っていた場合のYOCは?
過去に【VOO】を買った場合、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 現在から10年前までの株価、利回り、YOCを見ていきましょう。株価は月末のもので月1回なので、ややアバウトです。
下のグラフの黄色の線が、過去に買った場合の、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)です。この線が左肩上がりの場合は、株価好調&増配傾向にあるといえます。【VOO】はかなり好調ですね。
2022年1月20日の終値は410.76ドル、過去1年の分配金額は5.4367ドルなので、現在の利回りは1.32%です。過去10年の平均利回りは約1.9%なので、現在の株価は少し割高ですね。
過去10年で株価は右肩上がりで、増配もしていますので、早い時期に買った方がYOCは上がります。2012年5月に買っていたら、現在YOCは約4.5%になっていました。
基本情報を確認しよう
【VOO】は米国の主要業種を代表する約500銘柄で構成されるS&P500指数への連動を目指すETFです。S&P500指数に連動するETFは【SPY】【IVV】などもあります。
S&P500に採用されるためには、米国企業であり、時価総額が53億ドル以上あり、流動性が高く、浮動株が発行済株式総数の50%以上、4四半期連続で黒字などが条件となります。
下の表は米国を代表する市場全体系の4つのETFの基本情報です。運用総額はどれもかなり多いですが、【VTI】は約34兆円、【VOO】は約32兆円と飛び抜けています。
【DIA】はNYダウ連動のため、銘柄数が30と少ないです。【VIG】は増配ETFですが、長期のリターンが【VOO】や【VTI】と似ているために加えました。
【VOO】とライバルETFのセクターを比較
【VOO】とライバルのETF【VTI】【DIA】【VIG】に組み込まれている銘柄のセクター比率を比べましょう。バンガードの公式サイトでは【VOO】以外はICB(Industry Classification Benchmark)で分類されていますので、これをGICS(Global Industry Classification Standard)に変換しました。【VTI】【VIG】はFidelityのデータです。
【VOO】と【VTI】の内訳はほぼ同じです。全米【VTI】の上位3/4ぐらいの場所にS&P500【VOO】がすっぽり入るため、比率は似ます。どちらも情報技術が全体の3割弱を占めて1位で、ヘルスケア、一般消費財、金融、通信サービスと続きます。
【VIG】と【DIA】も【VOO】【VTI】と似ていますが、資本財が多く、不動産がないという点が異なります。
また【VIG】は生活必需品が結構多く、エネルギーはありません。【DIA】は公益事業がないですね。
【VOO】の上位組込銘柄はどんな会社か?
【VOO】の組込比率0.5%以上の上位42銘柄です。ベンチマークはS&P500指数です。上位42銘柄で全体の約51%を占めています。構成銘柄数は全部で507銘柄です。組込順位や構成比は2021年12月末日、それ以外は2022年1月20日頃のデータです。
2020年4月以降の上位銘柄は?
2020年4月以降の組込比率0.5%以上の銘柄の推移です。上位銘柄の顔ぶれはほとんど同じです。先月との比較では上位陣ではアマゾン【AMZN】とテスラ【TSLA】の比率が下がりました。また、ペイパル【PYPL】がここ数カ月で急降下しています。
【VOO】組込上位銘柄は主要ETFには組み込まれているのか?
【VOO】の組込比率上位20銘柄は、他のETFにどのくらいの割合で組み込まれているのでしょうか? 高配当【SPYD】【HDV】【DVY】【VYM】、連続増配【SDY】【VIG】、市場全体【DIA】【VOO】【VTI】、ハイテク・グロース系【QQQ】【VUG】【VGT】の主要12ETFへの組込比率(%)をまとめました。
やはり【VOO】と【VTI】はそっくりですね。全組込銘柄数が少ない分だけ、【VOO】の方が各銘柄の組込比率が大きくなります。【VOO】【VTI】の上位10銘柄のうち【QQQ】【VUG】には8銘柄「GAFAMテスラ・エヌビディア」が組み込まれています。
高配当ETFは【VTI】組込上位10位には入っていません。
上位組込比率を見ると、【QQQ】よりも【VUG】の方が【VOO】に似ています。また、【VOO】上位組込銘柄で【VIG】と【DIA】に組み込まれているものは、ほとんど同じですね。
【VOO】との重複率は【VTI】が79%、【VUG】49%、【QQQ】37%です。
※組込比率は、バンガード社のETFは2021年12月末、その他のETFは2022年1月14日頃のデータをもとにしています。【DIA】は株価の高い銘柄が比率が高くなり、【SPYD】は均等平均加重組入なので、これらのETFの組込比率はあまり重要ではありません。
主要ETFの並び順は基本的に左端が最も利回りが高く、右に行くにつれて下がっていきます。ただし、【VGT】は少し毛色が異なるセクターETFなので、右端にしました。主要ETFのティッカー・コードの下の数字は1月20日頃の利回り(%)です。
一番下のETF同士の比率は「etfrc.com」のデータです。
ライバルETFとトータルリターンを比較する
全米ETF【VTI】、ニューヨークダウ連動ETF【DIA】、連続増配ETF【VIG】とトータルリターンを比較します。PORTFOLIO VISUALIZERを使って、2012年1月から2021年12月までの10年間を比べます。
2012年1月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合、2021年12月には【VOO】が4万6100ドル、【VTI】が4万5200ドル、【VIG】は3万8500ドル、【DIA】は3万7200ドルになっていました。
【VOO】と【VTI】はほぼ互角ですね。
危険度はどのくらいか?
ETFの安定度を比べてみましょう。最大ドローダウンは、計測期間における最大下落率です。マイナスの数値が小さいほど最大下落率が低いです。
シャープレシオとは、同じリスクを取った場合のリターンの比較です。「(ファンドのリターン?無リスク資産のリターン)÷標準偏差」の値です。
ソルティノレシオはシャープレシオの改良版で、相場が軟調の際の成績を示しています。「(ファンドのリターン-無リスク資産のリターン)÷下方偏差」で計算します。
【VOO】はシャープレシオとソルティノレシオの値が最も素晴らしいです。最大ドローダウンは【VIG】に軍配が上がりました。【DIA】は他の3つのETFと比べると、いずれの値もやや劣っています。
過去の分配金はどのくらいか?
2012年1月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合の年間でもらえる分配金の推移です。分配金は再投資します。税金は考慮しません。
10年間の分配金の合計は【DIA】が4300ドル、【VOO】が4100ドル、【VTI】【VIG】が3900ドル、ここは【DIA】がやや優勢でした。
主要ETFとのトータルリターン比較
高配当【SPYD】【HDV】【DVY】【VYM】、連続増配【SDY】【VIG】、インデックス【DIA】【VOO】【VTI】、ハイテクグロース【VUG】【QQQ】【VGT】の過去1、3、5、10年のトータルリターンを比較しました。現在の利回りは紫の★です。
過去5年、10年ともに【QQQ】と【VGT】の強さが目立ちます。【VOO】の5年以上リターンは【VTI】とほぼ同じです。【VUG】には劣ります。
主要ETFと増配率を比較する
高配当【SPYD】【HDV】【DVY】【VYM】、連続増配【SDY】【VIG】、インデックス【DIA】【VOO】【VTI】、ハイテクグロース【VUG】【QQQ】【VGT】の過去の増配率を比較しました。
過去10年増配率は右端の2つ【VGT】【QQQ】を除くと、ほぼ6~9%に収まっています。過去5年増配率も右端の【VGT】、左端【SPYD】、右から3番目【VUG】を除くと、5~9%です。5年以上で見ると、【HDV】から【VTI】までの8ETFはあまり差がないです。【HDV】【DIA】がやや劣勢ですね。
【VOO】は過去5年、10年増配率は安定しています。【VTI】と似ており、わずかに劣っています。
【VOO】の今後のYOC予想は?
現在の過去1年分配金額(5.4367ドル)と1、3、5、10年前の同時期の過去1年分配金額(5.3027ドル、4.7367ドル、4.138ドル、2.372ドル)を比較して年間増配率を計算し、それを使って将来YOCを予想します。YOC(Yield on Cost)とは、購入単価あたりの利回りのことです。【VOO】株を2022年1月20日の終値410.76ドルで買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。
年間増配率は過去1年が2.5%、過去3年が4.7%、過去5年が5.6%、過去10年が8.6%でした。現在の利回りは1.32%です。
「分配金を再投資しない」「分配金を再投資しない(税引き後)」「分配金を再投資する」「分配金を再投資する(税引き後)」の4パターンで検証します
分配金を再投資しない場合のYOC
まずは分配金を再投資しない場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。スタート年は、現在の利回りの1.32%です。
もっとも増配率の低い過去1年の増配率(2.5%)で推移すると、5年後のYOCは1.50%、10年後のYOCは1.70%になります。もっとも成績の良い過去10年の増配率(8.6%)で推移すると5年後のYOCは2.00%ドル、10年後のYOCは3.03%です。
分配金を再投資しない場合(税引き後)のYOC
次に分配金を再投資しないケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%が支払われます。スタート年のYOCは1.32%ではなく、税引き後の0.95%になります。
もっとも増配率の低い過去1年の増配率(2.5%)で推移すると、5年後のYOCは1.08%、10年後のYOCは1.22%になります。もっとも成績の良い過去10年の増配率(8.6%)で推移すると5年後のYOCは1.44%ドル、10年後のYOCは2.18%です。
分配金を再投資する場合のYOC
それでは分配金を年1回再投資する場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。再投資する分配金額は、現在と10年前の株価を比較して年平均騰落率を計算し、それを使って調整します。
もっとも増配率の低い過去1年の増配率(2.5%)で推移すると、5年後のYOCは1.59%、10年後のYOCは1.93%になります。もっとも成績の良い過去10年の増配率(8.6%)で推移すると5年後のYOCは2.14%ドル、10年後のYOCは3.69%です。
分配金を再投資する場合(税引き後)のYOC
最後に分配金を再投資するケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%が支払われます。スタート年のYOCは1.32%ではなく、税引き後の0.95%になります。
もっとも増配率の低い過去1年の増配率(2.5%)で推移すると、5年後のYOCは1.13%、10年後のYOCは1.34%になります。もっとも成績の良い過去10年の増配率(8.6%)で推移すると5年後のYOCは1.52%ドル、10年後のYOCは2.47%です。
まとめ
【VOO】の2021年12月の分配金は前年同期より11%増えました。【VOO】は米国の主要約500社が組み込まれているETFなので、鉄板ですね。
2022年に入って米国株は大幅な調整局面を迎えていますが、【VOO】はもっとも積立てに適したETFと言えるので、株価はあまり気にせず機械的に積み立てるのがいいかもしれません。