ブラックロック社のiシェアーズ MSCI ACWI ETF【ACWI】が2021年6月10日に分配金を発表しました。
0.7242ドル(厳密には0.724202ドル)です。1年前の同期は0.6140ドルでしたので、1年前の同期との比較では17.9%の増配です。
分配金利回りを過去1年間の分配金額から算出すると、2021年6月11日の終値は101.18ドル、過去1年の分配金額は1.410ドルなので、利回りは1.39%になります。
※このページでの利回りは過去1年間の分配金をもとに計算します。
ちなみに【ACWI】の分配金は年2回です!
基本情報を確認しよう
【ACWI】は全世界の先進国、新興国、フロンティア国の約70カ国に投資しているETFで、銘柄は時価総額加重平均で組み入れられています。これ1本で世界の各国市場の時価総額上位約85%をフォローしたことになります。
全世界が対象の【ACWI】と【VT】を比較してみましょう。経費率は【VT】が0.08%と安く、【ACWI】は0.32%と少し高いですね。
ちなみに【ACWI】と投資信託の「eMAXIS Slimシリーズ・全世界株式(オールカントリー)」はベンチマークが同じです。
【ACWI】の市場別の構成比率は?
地域別と市場別の構成比率を見てみましょう。地域別では北アメリカ、市場別では米国が圧倒的で、6割弱のシェアを占めています。地域別ではヨーロッパとアジアが2割弱ずつです。
【ACWI】のセクター別の構成比率は?
【ACWI】に組み込まれている銘柄のセクター別の組込比率です。fidelityのデータです。GICS(Global Industry Classification Standard)で分類されています。情報技術の割合が最も多く、金融、一般消費財、ヘルスケアと続いています。
【ACWI】の上位組込銘柄はどんな会社か?
【ACWI】の組込銘柄数は2311銘柄です。ベンチマークは、MSCI ACWIインデックス。上位20銘柄の組込比率の合計は約20%と少なく、かなり分散されています。
上位20銘柄のうち16銘柄を米国企業が占めています。米国以外では台湾のTSMC、中国のテンセント、スイスのネスレ、韓国のサムスン電子がランクインしています。
2020年10月以降の組込上位20銘柄の推移
組込比率上位20銘柄の推移です。これまで7位にインドのETF【INDA】がいましたが、なくなりました。アリババ【BABA】もランク外に落ちました。
【ACWI】の過去の分配金と増配率は?
【ACWI】が設定されたのは2008年3月です。下の表は過去の分配金の一覧です。
背景が黄色の部分は、通常の分配金のほかに特別分配金が出ました。両方の合計金額です。
※背景が赤になっているのが減配です
【ACWI】の年間分配金額と年間増配率は?
【ACWI】の分配金を1年ごとにまとめてグラフ化しました。2019年までは一応右肩上がりでしたが、2020年はあまりよくなかったです。2021年の前半はまずまずでした。
【ACWI】の期別分配金は?
【ACWI】の分配金支払いは年2回です。2019年が圧倒的に多く、2020年はコロナ・ショックの影響か、今ひとつでした。今回の0.7242ドルは昨年よりは多いです。
【ACWI】の年間分配金額と株価の関係は?
【ACWI】の分配金と株価はある程度、連動しています。ただし、2020年はコロナ・ショック後に株価が上昇しましたが、分配金は低迷しました。
2020年以降の株価と利回りは?
2020年以降の【ACWI】の株価と利回りを見てみましょう。利回りは、過去1年の年間分配金額から算出しました。青線が株価(左軸)で、赤線が利回り(右軸)です。2020年の年初は利回りが2.3%前後で推移していましたが、2月半ば以降は株価が下がったため、3月23日には利回りが約3.4%まで上昇しました。現在は株価がコロナ・ショック前を上回り、利回りは1.39%です。
現在の【ACWI】の株価と利回りの関係は?
年間分配金額が現在と同じく1.410ドルで変わらなかったら、利回りはどのように変化するでしょうか。下のグラフは年間分配金額が現在と同じ1.410ドルが続いた場合の、利回りと株価の相関図です。利回りを0.1%ごとに株価を出しました。今後【ACWI】を購入しようと考えている人は、目安にしてください。
【ACWI】を過去に買っていた場合のYOCは?
過去に【ACWI】を買った場合、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 現在から5年前までの株価、利回り、YOCを見ていきましょう。株価は月末のもので月1回なので、ややアバウトです。下のグラフの黄色の線が、過去に買った場合の、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)です。
2021年6月11日の終値は101.18ドル、過去1年の分配金額は1.410ドルなので、現在の利回りは1.39%です。過去5年の平均利回りは約2.0%です。分配金それほど増えていませんが、最近は株価は急上昇しているので、早い時期に買っていればYOCは上がりました。2016年10月頃に買っていたら、現在YOCは約2.4%になっていました。
ライバルETFとトータルリターンを比較する
【ACWI】ライバルの【VT】と米国以外の世界【VXUS】、全米【VTI】で過去10年トータル・リターンを比較します。PORTFOLIO VISUALIZERを使って、過去10年を比べます。
2011年6月に1万ドル投資して配当を再投資した場合、2021年5月には【VTI】が3万7700ドル、【VT】が2万5500ドル、【ACWI】が2万5100ドル、【VXUS】が1万7100ドルになっていました。
【VT】と【ACWI】はチャートもそっくりで重なっています。
年次リターン
1年ごとのリターンを比較しました。2018年以降は【VTI】の強さが目立ちます。【ACWI】と【VT】はどの年でも同じですね。
過去のトータルリターン
過去3カ月、1、3、5、10年の年平均トータルリターンは以下の通りです。ほとんどの期間で【VTI】が優勢です。【VT】と【ACWI】はあまり差がないですね。【VXUS】は過去3年以上のパフォーマンスが今ひとつです。過去10年のリターン(年平均)は、【VTI】が14.2%、【VT】は9.9%、【ACWI】が9.7%、【VXUS】は5.6%でした。
過去10年の分配金はどのくらいか?
2011年6月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合の年間にもらえる分配金の推移です。分配金は再投資します。税金は考慮しません。PORTFOLIO VISUALIZERのデータです。
分配金額にあまり違いはないですね。2010年代の前半は【VXUS】が優勢でしたが、2010年代後半は【VTI】が巻き返しました。
10年間の分配金の合計は【VTI】が3400ドル、【VT】と【VXUS】が3200ドル、【ACWI】が2900ドルでした。
【ACWI】の今後の分配金予想は?
現在の過去1年分配金額(1.410ドル)と1、3、5、10年前の同時期の過去1年分配金額(1.5571ドル、1.4709ドル、1.456ドル、1.010ドル)を比較して年間増配率を計算し、それを使って将来の分配金とYOCを予想しました。YOC(Yield on Cost)とは、購入単価あたりの利回りのことです。【ACWI】株を2021年6月11日の終値101.18ドルで買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。
購入金額は1万ドルにします。そうすると、年間分配金額から利回り(YOC)が一瞬で計算できます。たとえば、年間分配金額が300ドルなら利回り(YOC)は3.0%、年間分配金額777ドルなら利回り(YOC)は7.77%になります。
増配率は過去1年がマイナス9.4%、過去3年がマイナス1.4%、過去5年がマイナス0.6%、過去7年が3.4%でした。現在の利回りは1.61%です。
分配金を再投資しない場合
まずは分配金を再投資しないケースを見てみましょう。税金は考慮しません。現在の利回りが1.39%なので、1年目の年間分配金額は139ドルです。
もっとも増配率の低い過去1年のペースだと5年目の分配金額は94ドル、10年目の分配金額は57ドルになります。もっとも成績の良い過去10年の増配率を当てはめると5年目の分配金額は159ドル、10年目の分配金額は188ドルになりそうです。分配金額188ドルはYOC(購入額に対する利回り)1.88%です。
分配金を再投資する場合
つぎに分配金を年1回再投資するケースを見てみましょう。税金は考慮しません。再投資する場合の分配金額は、現在と10年前の株価を比較して年平均騰落率を計算し、それを使って調整します。
もっとも増配率の低い過去1年のペースだと5年目の分配金額は98ドル、10年目の分配金額は62ドルになります。もっとも成績の良い過去10年の増配率を当てはめると5年目の分配金額は168ドル、10年目の分配金額は215ドルになりそうです。分配金額215ドルはYOC(購入額に対する利回り)2.15%です。
分配金を再投資する場合(税引き後)
最後に分配金を再投資するケースで、税金を引いた額で計算してみましょう。分配金は28%の税金を引いた72%で計算します。1年目は139ドルではなく、税引き後の100ドルになります。
もっとも増配率の低い過去1年のペースだと5年目の分配金額は70ドル、10年目の分配金額は44ドルになります。もっとも成績の良い過去10年の増配率を当てはめると5年目の分配金額は119ドル、10年目の分配金額は149ドルになりそうです。分配金額149ドルはYOC(購入額に対する利回り)1.49%です。
まとめ
【ACWI】の今回の分配金は、昨年の前・後半よりも多かったです。株価は上がり続けていますが、どうなるのでしょうか? 新型コロナ・ウイルスのワクチンの普及によってパンデミックは収束に向かいつつありますが、新興国や後進国にはワクチン普及の遅れが危惧されています。長く続いた金融緩和による後遺症の可能性も見逃せませんね。
なお、次回の分配金は12月13日が権利落ちの予定です。