バンガード社のETFは公式サイトで月1回更新されます。月末のデータが、翌月の15日頃に反映されます。今回2020年10月末のデータが更新されましたので、バンガード・トータル・ワールド・ストックETF【VT】の組込銘柄の変化や傾向について検証します。ちなみに経費率は年0.08%です。
【VT】のセクター別のファンド構成比は?
【VT】に組み込まれている銘柄のセクター別の組込比率です。バンガードの公式サイトではICB(Industry Classification Benchmark)で分類されていますので、これをGICS(Global Industry Classification Standard)に変換しました。情報技術の割合が最も多く、一般消費財、金融、ヘルスケアと続いています。
【VT】の市場別のファンド構成比は?
市場別の構成比率を見てみましょう。トップは米国。以下、日本、中国、英国、スイス、カナダ、フランス、ドイツが続きます。地域別では北米が約60%で最多、ヨーロッパが約16%です。
【VT】の上位組込銘柄はどんな会社か?
【VT】の保有銘柄数は8816銘柄です。ベンチマークは、米国を含む先進国および新興国約47ヵ国の大型・中型・小型株で構成される、FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス。上位20銘柄の組込比率の合計は18.8%と少なく、世界中に分散されています。
上位20銘柄のうち17銘柄を米国企業が占めています。米国以外では、中国のアリババとテンセント、スイスのネスレがランクインしています。
過去6カ月の組込比率1%以上の銘柄比較
組込比率上位20銘柄の比較です。上位銘柄の構成は【VOO】や【VTI】に、米国以外が少し加わっただけですね。ここ数カ月、目立った変動はないですね。テスラ【TSLA】の比率が下がっています。なお、7月31日のデータは抜けています。
【VT】の上位組込銘柄は、他のETFにも組み込まれているのか?
【VT】の組込比率上位20銘柄は、他のETFには組み込まれているのでしょうか? その一覧が下の表です。左から世界全体【VT】、S&P500【VOO】、全米【VTI】、米国高配当【VYM】、米国増配【VIG】、ダウ平均【DIA】、ナスダック100【QQQ】、米国を除く世界【VXUS】です。表内の数字は組込順位。一番上の行をクリックすると、その項目の順番に並び直します。同じ箇所を続けてクリックすると数値の大小が逆になります。試してください。
※「Tik」はティッカー・コード。2020年10月末のデータです
Tik | VT | VOO | VTI | VYM | VIG | DIA | QQQ | VXUS |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
AAPL | 1 | 1 | 1 | – | – | 19 | 1 | – |
MSFT | 2 | 2 | 2 | – | 2 | 5 | 2 | – |
AMZN | 3 | 3 | 3 | – | – | – | 3 | – |
FB | 4 | 4 | 4 | – | – | – | 4 | – |
BABA | 5 | – | – | – | – | – | – | 1 |
GOOGL | 6 | 5 | 5 | – | – | – | 5 | – |
GOOG | 7 | 6 | 6 | – | – | – | 6 | – |
TCEHY | 8 | – | – | – | – | – | – | 2 |
JNJ | 9 | 8 | 8 | 1 | 4 | 13 | – | – |
PG | 10 | 9 | 9 | 2 | 3 | 15 | – | – |
NSRGY | 11 | – | – | – | – | – | – | 4 |
V | 12 | 11 | 10 | – | 7 | 8 | – | – |
JPM | 13 | 12 | 12 | 3 | – | 21 | – | – |
NVDA | 14 | 10 | 11 | – | – | – | 8 | – |
BRK.B | 15 | 7 | 7 | – | – | – | – | – |
UNH | 16 | 13 | 13 | – | 6 | 1 | – | – |
TSLA | 17 | – | 14 | – | – | – | 7 | – |
HD | 18 | 14 | 15 | – | 5 | 2 | – | – |
MA | 19 | 15 | 16 | – | – | – | – | – |
VZ | 20 | 16 | 17 | 4 | – | 25 | – | – |
【VTI】と【VXUS】を足すと、ちょうど【VT】になりますね。
ファンドオーバーラップで他のETFとの比較する
ファンドオーバーラップを使って、他のETFとの重複割合を調べてみましょう。【VT】は世界全てに分散されているので、対象ETFの組込銘柄は【VT】に100%組み込まれているかと思いましたが、そうではないようです。【VTI】組込銘柄は、50%ほどしか【VT】には入っていないようです。
【VT】の配当はどう変化したか?
【VT】は年4回配当が支払われます。3、6、9、12月に配当落ちがあり、その数日後に振り込まれます。2020年に入ってからの配当は前年と比較して減少傾向にあります。
今年に入ってからの配当利回りは?
2020年に入ってからの【VT】の株価と配当利回りを見てみましょう。過去1年の年間配当額から算出しました。青線が株価(左軸)で、赤線が配当利回り(右軸)です。配当利回りは2.3%前後で推移していましたが、2月半ば以降は株価が下がったため、3月23日には配当利回りが約3.3%まで上昇しました。現在は株価がコロナ・ショック前を上回り、減配があったため配当利回りは1.82%です。
【VT】を過去に買っていた場合のYOCは?
過去に【VT】を買った場合、現在の購入単価当たりの配当利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 現在から5年前までの株価、配当利回り、YOCを見ていきましょう。株価は月末のもので月1回なので、やや大雑把です。
2020年11月20日の終値は87.70ドル、過去1年の配当金額は1.5939ドルなので、現在の配当利回りは約1.82%です。過去5年の平均配当利回りは約2.26%です。過去5年で株価は一応右肩上がりで、配当も昨年までは増配傾向だったので、早い時期に買っていればYOCは上がりました。2016年2月頃に買っていたら、現在YOCは約3.0%になっていました。
【VT】の今後の配当予想は?
現在の過去1年配当金額(1.5939ドル)と1、3、5、7年前の同時期の過去1年配当金額(1.7556ドル、1.53ドル、1.424ドル、1.125ドル)を比較して年間増配率を計算し、それを使って将来の配当金とYOCを予想しました。
YOC(Yield on Cost)とは、購入単価あたりの配当利回りのことです。【VT】株を2020年11月20日の終値87.7ドルで買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。棒グラフが配当金予想、折れ線グラフがYOC予想です。
年間増配率は過去1年がマイナス9.2%、過去3年が1.4%、過去5年が2.9%、過去7年が5.1%でした。現在の配当利回りは1.82%です。もっとも増配率の低い過去1年のペースだと10年後のYOCは0.7%、20年後のYOCは0.3%になります。もっとも成績の良い過去7年の増配率を当てはめると10年後のYOCは3.0%、20年後のYOCは4.9%になります。今年に入ってからの配当が今ひとつだったので、過去1年増配率は厳しい結果ですが、それ以外の期間を当てはめれば、まずまずのYOCになりそうです。
まとめ
いかがでしたか? 【VT】はアメリカが57%ほどと、結構な割合を占めています。今年の配当は減少傾向ですが、米国以外が足を引っ張っています。