ステートストリート社のSPDR S&P米国高配当株式 ETF【SDY】が、2021年12月16日に分配金を発表しました。0.9698ドル(厳密には0.969786)です。1年前の同期は0.9868ドルでしたので、1年前の同期から1.7%の減配です。
分配金利回りを過去1年間の分配金額から算出すると、2022年1月13日の終値は130.63ドル、過去1年の分配金額は3.3914ドルなので、利回りは2.60%になります。
※このページでの利回りは過去1年間の分配金をもとに計算します。
【SDY】の過去の分配金と増配率は?
【SDY】が設定されたのは2005年11月です。下の表は過去の分配金の一覧です。
今回の【SDY】の分配金が増配or減配なのかは、どのデータを比較するかによって異なります。もっともオーソドックスなのは、前年の同期との分配金額の比較です。今回が0.9698ドル、前年の同期が0.9868ドルなので1.7%の減配になります。また、前年同期との過去1年分配金額の比較では、今回が3.3914ドル、前年の同期が3.0216ドルなので、12.2%増配となります。
2013~17年の背景が黄色の部分はキャピタルゲイン分配金(ファンドが保有する株式を売却して得た利益)です。過去1年分配金や増減率の計算はキャピタルゲイン分配金を除いて計算しました。
※背景が赤になっているのが減配です
【SDY】の期別分配金は?
期別の分配金です。特別分配金を通常の分配金と分けました。キャピタルゲイン分配金(濃い灰色の部分)を除いて考えると、前年より少なくなった年はありますが、緩やかな右肩上がりです。2021年は前年より12.2%増えました。
【SDY】の年間分配金額と年間増配率は?
【SDY】の分配金を1年ごとにまとめてグラフ化しました。キャピタルゲイン分配金は入れていないです。2009~15年の年間分配金は横ばいですね。
【SDY】の過去1年分配金額を棒グラフで確認しよう
過去1年分配金額を棒グラフにして、株価と比較しました。通常の分配金のみです。リーマン・ショック(2008年9月)やコロナ・ショック(2020年3月)で株価は下がりましたが、過去1年分配金はほとんど減っていないですね。
【SDY】の分配金額を棒グラフで確認しよう
こちらは期ごとの分配金を株価と比較したものです。通常の分配金のみです。12月が多いので、デコボコしています。長期で見ると右肩上がりですね。
【SDY】の年間増配率は?
年間増配率を確認しましょう。通常の分配金のみです。最初に分配金が支払われたのが2005年の12月からなので、データは2007年からです。リーマン・ショックの影響で2009年はマイナスでした。2012年以降は好調ですが、2013、17年はマイナスでした。ただ、2013~17年にかけてキャピタルゲイン分配金があったので、それを入れると堅調とも言えます。
長期の増配率をチェック!
1年ごとの増配率は年によって結果が異なるので、若干イメージしづらいかもしれません。そういう時は、複数年単位で増配率をチェックしましょう。下のグラフは過去3年と過去5年の増配率の推移です。
2018年以降の過去5年増配率は8~9%で推移しています。今後もそれぐらいが目安になりそうです。
2020年以降の株価と利回りは?
2020年以降の【SDY】の株価と利回りを見てみましょう。過去1年の年間分配金額から算出しました。青線が株価(左軸)で、赤線が利回り(右軸)です。2020年の年初は利回りが2.4%台でしたが、2月半ば以降は株価が下がったため、3月23日には利回りは約4.1%まで上昇しました。現在の株価はコロナ・ショック以前を上回りましたが、かなり増配したので利回りは2.60%です。
現在の【SDY】の株価と利回りの関係は?
年間分配金額が現在と同じく3.3913ドルで変わらなかったら、利回りはどのように変化するでしょうか。下のグラフは年間分配金額が現在と同じ3.3913ドルが続いた場合の、利回りと株価の相関図です。利回りを0.2%ごとに株価を出しました。今後【SDY】を購入しようと考えている人は、目安にしてください。
【SDY】を過去に買っていた場合のYOCは?
過去に【SDY】を買った場合、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 現在から5年前までの株価、利回り、YOCを見ていきましょう。株価は月末のもので月1回なので、ややアバウトです。
下のグラフの黄色の線が、過去に買った場合の、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)です。この線が左肩上がりの場合は、株価好調&増配傾向にあるといえます。【SDY】はなかなか好調です。
2022年1月13日の終値は130.63ドル、過去1年の分配金額は3.3913ドルなので、現在の利回りは2.60%です。過去10年の平均利回りは約2.6%です。
利回りはあまり変動がなく、2.8%を超えたら買いと言えそうです。
過去10年の株価は右肩上がりで、早い時期に買った方がYOCは上がります。2012年2月に買っていたら、現在YOCは約6.1%になっていました。コロナ・ショック時の2020年3月に買った場合は、YOCは約4.3%になっています。
※2013~2017年のキャピタルゲイン分配金は入れておらず、通常の分配金のみです
基本情報を確認しよう
【SDY】は20年以上連続増配実績のある銘柄を選び、配当利回りを基準に構成比率を決めます。年に1度1月に銘柄の入れ替えを行い、年4回リバランスします。
下の表は米国のおもな増配ETFの基本情報です。【SDY】は他の増配系ETFと比べると、利回りが約1%は高いです。構成銘柄を利回り加重で組み込んでいるために、高利回りになっています。また、【SDY】以外の銘柄は財務の健全性を重視しているため、利回りが1%台と低めです。
【SDY】は連続増配ETFですが、高配当と連続増配の中間あたりに位置しているといえます。利回りで考えると、ライバルは【VIG】よりも【VYM】ですね。
【SDY】の運用総額は2.4兆円です。経費率は【VIG】が0.06%と圧倒的に低いです。
【SDY】のセクター比率は?
【SDY】に組み込まれている銘柄のセクター別の組込比率です。GICSによる分類です。生活必需品が最も多く、金融、資本財が続いており、公益事業もなかなかです。この4セクターで全体の約6割を占めています。マイナーなセクターの素材が8.5%もあるのは珍しいです。
【SDY】の上位組込銘柄はどんな会社か?
【SDY】の組込比率上位20銘柄です。ベンチマークは、S&P ハイ・イールド・ディビデンド・アリストクラッツTM指数。上位20銘柄で全体の約34%を占めています。
20年以上の連続増配実績のある銘柄を、配当利回りの高い順に組み込んでいます。規模の小さなマイナー銘柄が比較的上位に含まれているのが特徴です。
アッヴィ【ABBV】はアボット・ラボラトリーズ時代も含めると、連続増配年数は49年になります。AT&T【T】は連続増配がストップしました。
上位組込銘柄の推移は?
2021年3月以降の組込比率1%以上銘柄の推移です。2021年10月末のリバランスではアッヴィ【ABBV】、ナショナル・リテール・プロパティーズ【NNN】などの比率が上がりました。
※毎年1月に銘柄の入れ替えが行われ、1、4、7、10月の最終営業日の終了後、四半期ごとにリバランスをします。リバランスしたところに太い線を入れておきました
【SDY】組込上位銘柄は主要ETFには組み込まれているのか?
【VYM】の組込比率上位20銘柄は、他のETFにどのくらいの割合で組み込まれているのでしょうか? 高配当【SPYD】【HDV】【DVY】【VYM】、連続増配【SDY】【VIG】、市場全体【DIA】【VOO】【VTI】、ハイテク・グロース系【QQQ】【VUG】【VGT】の主要12ETFへの組込比率(%)をまとめました。
背景色のオレンジ色が濃いほど、組込比率が高いことを意味しています。
高配当の【SPYD】【HDV】【DVY】【VYM】とは上位組込銘柄が重複することが多いです。
【SDY】組込銘柄は、同じ連続増配の【VIG】に81%も入っています。ただし【SDY】上位銘柄は【VIG】にはほとんど入っていません。【SDY】は利回りの高い順に組み込まれており、【VIG】は連続増配銘柄の中から利回りの高い25%を除外しているからです。【SDY】の上位以外の銘柄は【VIG】に高い確率で入っています。
※組込比率は、バンガード社のETFは2021年11月末、【HDV】は12月21日、【SDY】は2022年1月13日、その他のETFは12月15日のデータをもとにしています。【DIA】は株価の高い銘柄が比率が高くなり、【SPYD】は均等平均加重組入なので、これらのETFの組込比率はあまり重要ではありません。
主要ETFの並び順は基本的に左端が最も利回りが高く、右に行くにつれて下がっていきます。ただし、【VGT】は少し毛色が異なるセクターETFなので、右端にしました。主要ETFのティッカー・コードの下の数字は1月13日の利回り(%)です。
一番下のETF同士の比率は「etfrc.com」のデータです。
ライバルETFとトータルリターンを比較する
ライバルETFとトータルリターンを比較します。連続増配系ETF【VIG】【DGRW】【RDVY】と比べます。【RDVY】が設定されたのが2014年1月なので、2015年1月からから2021年12月までの7年間を比べます。PORTFOLIO VISUALIZERを使います。
2015年1月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合、2021年12月には【RDVY】は2万6700ドル、【DGRW】は2万4600ドル、【VIG】が2万4300ドル、【SDY】が2万1000ドルになっていました。
危険度はどのくらいか?
ETFの安定度を比べてみましょう。最大ドローダウンは、計測期間における最大下落率です。マイナスの数値が小さいほど最大下落率が低いです。
シャープレシオとは、同じリスクを取った場合のリターンの比較です。「(ファンドのリターン?無リスク資産のリターン)÷標準偏差」の値です。
ソルティノレシオはシャープレシオの改良版で、相場が軟調の際の成績を示しています。「(ファンドのリターン-無リスク資産のリターン)÷下方偏差」で計算します。
この3つの数値では【VIG】が優秀ですね。最もリターンが良かった【RDVY】は今ひとつです。【SDY】は少し分が悪いです。
過去の分配金はどのくらいか?
2015年1月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合の年間でもらえる分配金の推移です。分配金は再投資します。税金は考慮しません。PORTFOLIO VISUALIZERのデータです。
7年間の分配金の合計は【SDY】が3200ドル、【DGRW】が2100ドル、【VIG】が1900ドル、【RDVY】が1700ドルでした。
【SDY】は2013~2017年までキャピタルゲイン分配金を出していたので、この時期のインカムは多いですね。2018年以降は【DGRW】といい勝負です。
メジャーなETFとトータルリターンを比較する
メジャーなETFとトータルリターンを比較します。高配当【VYM】【DVY】、SP500【VOO】と比べます。2012年1月からから2021年12月までの10年間を比べます。PORTFOLIO VISUALIZERを使います。
2012年1月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合、2021年12月には【VOO】は4万6100ドル、【SDY】は3万4700ドル、【VYM】が3万3800ドル、【DVY】が3万2100ドルになっていました。【SDY】は【VYM】とほぼ互角ですね。
主要ETFとのトータルリターン比較
高配当【SPYD】【HDV】【DVY】【VYM】、連続増配【SDY】【VIG】【DGRW】【RDVY】、インデックス【DIA】【VOO】【VTI】の過去1、3、5、7、10年のトータルリターンを比較しました。現在の利回りは紫の★です。
過去10年のリターン(年平均)は【VOO】が16.5%、【VTI】が16.3%、【VIG】が14.4%、【SDY】は13.3%、【VYM】は13.0%でした。【SDY】は3年以上だと【VYM】とリターンが似ていますね。
主要ETFと増配率を比較する
高配当【SPYD】【HDV】【DVY】【VYM】、連続増配【SDY】【VIG】、インデックス【DIA】【VOO】【VTI】の過去の増配率を比較しました。
どの期間も素晴らしいのが【VIG】です。【SDY】は過去1年と3年が好調です。【VYM】【VOO】【VTI】は過去10年が8%以上といいですね。【DVY】はどの期間も安定しています。【SPYD】は直近の分配金が悪かった影響でよくないです。【HDV】は過去1年が冴えなかったので、このデータは今ひとつです。
【SDY】の今後の分配金予想は?
現在の過去1年分配金額(3.3913ドル)と1、3、5、10年前の同時期の過去1年分配金額(3.0216ドル、2.4413ドル、2.2356ドル、1.7384ドル)を比較して年間増配率を計算し、それを使って将来YOCを予想します。YOC(Yield on Cost)とは、購入単価あたりの利回りのことです。【SDY】株を2022年1月13日の終値130.63ドルで買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。
年間増配率は過去1年が12.2%、過去3年が11.6%、過去5年が8.7%、過去10年が6.9%でした。現在の利回りは2.60%です。
※2013~2017年のキャピタルゲイン分配金は入れておらず、通常の分配金のみで計算します
・分配金を再投資しない ・分配金を再投資しない(税引き後) ・分配金を再投資する ・分配金を再投資する(税引き後)の4パターンで検証します
分配金を再投資しない場合のYOC
まずは分配金を再投資しない場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。スタート年は、現在の利回りの2.60%です。
もっとも増配率の低い過去10年の増配率(6.9%)で推移すると、5年後のYOCは3.63%、10年後のYOCは5.06%になります。もっとも成績の良い過去1年の増配率(12.2%)で推移すると5年後のYOCは4.62%ドル、10年後のYOCは8.23%です。
分配金を再投資しない場合(税引き後)のYOC
次に分配金を再投資しないケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%が支払われます。スタート年のYOCは2.60%ではなく、税引き後の1.87%になります。
もっとも増配率の低い過去10年の増配率(6.9%)で推移すると、5年後のYOCは2.61%、10年後のYOCは3.65%になります。もっとも成績の良い過去1年の増配率(12.2%)で推移すると5年後のYOCは3.33%ドル、10年後のYOCは5.93%です。
分配金を再投資する場合のYOC
それでは分配金を年1回再投資する場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。再投資する分配金額は、現在と10年前の株価を比較して年平均騰落率を計算し、それを使って調整します。
もっとも増配率の低い過去10年の増配率(6.9%)で推移すると、5年後のYOCは4.14%、10年後のYOCは6.97%になります。もっとも成績の良い過去1年の増配率(12.2%)で推移すると5年後のYOCは5.36%ドル、10年後のYOCは12.40%です。
分配金を再投資する場合(税引き後)のYOC
最後に分配金を再投資するケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%が支払われます。スタート年のYOCは2.60%ではなく、税引き後の1.87%になります。
もっとも増配率の低い過去10年の増配率(6.9%)で推移すると、5年後のYOCは2.88%、10年後のYOCは4.59%になります。もっとも成績の良い過去1年の増配率(12.2%)で推移すると5年後のYOCは3.71%ドル、10年後のYOCは7.98%です。
【SDY】はそれほど利回りは高くないですが、いずれの期間でもそれなりの増配率だったので、順調にYOCが上昇していきそうです。
まとめ
【SDY】の今回の分配金はまずまずで、好調が続いています。同じ連続増配の【VIG】と比較すると、トータルリターンは少し劣っています。利回りが高いので、分配金を多くもらいたい人向けですね。
高配当ETFの代表格【VYM】との比較では、似たような結果が多かったです。経費率【SDY】0.35%、【VYM】0.06%を考えると、なかなかの好成績といえます。
【SDY】は小型銘柄がある程度含まれており、セクター比率もマイナーなものが多いですね。時価総額加重平均で組み込まれているメジャーなETFを補完する意味ではよさそうです。20年以上の連続増配銘柄で構成され、それでいて利回りがまずまず高いというのは面白いです。
なお、次回は3月18日が権利落ちの予定なので、その前日までに購入すれば分配金がもらえます。