2023年3月のETFの分配金が出揃いました。最新の分配金情報をもとに、米国が対象の高配当ETFのデータを徹底比較します。
前半部分では日本で購入可能な米国の配当系ETFを3つに分類します。その中から「増配系」に属する6つを徹底分析。VIG、DVY、SDY、DGRW、RDVY、QDIVです。
中盤では増配系ETF6種類を個別に分析、後半は増配系ETFをトータルリターン、増配率、将来YOC予想などで比較します。
序盤は6つの増配系ETFの基本データを比較
前半は、6つのETFのコンセプトや組込上位銘柄、セクター比率など基本データを1つずつ紹介
後半は、セクター、利回り推移、増配率、トータルリターン、将来YOC予想などをグラフで比較
最後に、今回のデータをランク付け、気になるトップは?
- 今回紹介する6つの米国増配系ETF
- ETFのコンセプトは?
- ETFを会社ごとに分けて、概要を説明
- VIG(バンガード・米国増配株式ETF)
- DVY(iシェアーズ好配当株式ETF)
- SDY(SPDR S&P米国高配当株式ETF)
- DGRW(ウィズダムツリー 米国株クオリティ配当成長ファンド)
- RDVY(ファースト・トラスト・ライジング・ディビデンド・アチーバーズ ETF)
- QDIV(グローバルX 高配当・優良・米国株 ETF)
- 組込上位10銘柄の比較
- 高配当ETFのセクター比率
- 利回り推移を確認しよう
- トータルリターンを比較する
- 過去に買った場合の、現在のYOC(Yield On Cost)は?
- 2023年3月の分配金を確認しよう
- 過去の増配率は?
- 過去3、5、7、10年増配率を使った将来YOC予想一覧
- それぞれの項目をまとめると?
- まとめ
今回紹介する6つの米国増配系ETF
まず最初に、日本の証券会社で購入可能な配当系ETFを、種類と運用会社で分類します。種類は3つです。高配当、増配、バリュー。ただしこの分類の線引きはとても難しいです。はっきりとしたものではなく、やや強引に便宜上分けました。「高配当」と「増配」は、各社1つずつにしました。
運用会社は6つで、バンガード、ブラックロック、ステートストリート、ウィズダムツリー、ファーストトラスト、そしてグローバルXです。左の3つ、バンガード、ブラックロック、ステートストリートがビッグスリーで、規模がとても大きいです。
今回は「増配系」に属するVIG、DVY、SDY、DGRW、RDVY、QDIVを徹底分析して、比較します。
ETFのコンセプトは?
それぞれのETFのコンセプトを見てみましょう。
増配系の中では、【VIG】は10年以上の連続増配銘柄、左から3番目の【SDY】は20年以上の連続増配銘柄を集めたETFです。残りの4つは、そこまでシビアではありません。ただ、結果的に増配銘柄の集合体になっています。
左から2番目の【DVY】は増配と高配当、どちらの要素もありますが、ブラックロック社は高配当ETFに【HDV】があるので、増配系にしました。
【QDIV】は高配当&バリューという括りですが、グローバルX社は増配ETFがないので、ここに入れました。東証上場なら【2236】「グローバルX S&P500配当貴族ETF」があります。
ETFを会社ごとに分けて、概要を説明
今回紹介する増配系ETF6選の基本データです。数値が赤色は、他のETFよりも秀でているという意味です。オレンジ色は赤色に次ぐ2番手グループという意味です。
左からVIG、DVY、SDY、DGRW、RDVY、QDIVの順に並んでいます。今回のコンテンツのデータは基本的にこの順番で並びます。
経費率は【VIG】が0.06%と安く、【QDIV】が0.2%、【DGRW】が0.28%で続いています。
分配金の支払いは基本的に年4回ですが、【DGRW】と【QDIV】は年12回、つまり毎月分配型です。
現在の利回りは【DVY】が約3.6%と高く、【QDIV】3.1%です。なお、利回りは過去1年分配金を現在の株価で割った数値です。
VIG(バンガード・米国増配株式ETF)
まずは【VIG】。正式名称はバンガード・米国増配株式ETF。ベンチマークは、S&P U.S. ディビデンド・グロワーズ・インデックス。
10年以上連続して増配の実績がある銘柄を、時価総額加重平均方式で組み入れています。利回りの上位25%とREITは除外されます。個別銘柄の加重の上限は4%です。
運用総額は約8.7兆円と増配系ETFの中では最大規模です。経費率は0.06%とかなり低水準でうれしいですね。
セクター比率は情報技術が21%で最多。金融、ヘルスケア、資本財、生活必需品と続きます。
年に1回3月に銘柄入れ替えが行われます。今回、アップル【APPL】が2位、エクソン・モービル【XOM】が3位、メルク【MRK】が11位に新加入となりました。上位10銘柄は世界的企業ばかりです。安心できる感じがします。
【VIG】の分配金の推移は?
それでは分配金の推移を見ていきましょう。
毎年着実に増えており、とくに最近の伸びはすさまじいです。3年増配率は13%です。2021年9月にベンチマークが変更されましたが、それ以降はさらに増配が加速したように見えます。
直近2023年3月は0.749ドルで、3月としては最高額でした。
【VIG】を過去に買った場合は?
株価、利回り、YOCを見てみましょう。YOCというのは「Yield On Cost」のことで、過去にこの銘柄を買った場合、取得価額に対する利回りを意味します。
グラフの黄色の線がYOCです。左肩上がりの場合は、株価好調&増配傾向になるため、早い時期に買うとYOCが上がります。なので、【VIG】はなかなか好調と言えます。
10年前の2013年4月に買っていたら、現在YOCは約4.5%になっていました。利回りはあまり変動がなく、1.7~2.3%の間が多いです。2.2%を超えたら買いと言えそうです。
【VIG】最も規模の大きい増配系ETFで、経費率が低く、株価も好調、増配率もなかなか。上位銘柄も安心できるものばかり。欠点の少ないETFと言えそうです。
DVY(iシェアーズ好配当株式ETF)
つぎはブラックロック社の【DVY】。正式名称はiシェアーズ好配当株式ETF。高配当ではなく「好配当」というのがポイントです。
ベンチマークはダウ・ジョーンズ U.S.セレクト・ディビデンド・インデックス。
直近の配当金が過去5年の平均以上、配当支払い余力がある、過去12カ月赤字がない、時価総額が30億ドル以上などでスクリーニングして、配当利回りの上位100銘柄を利回りの高い順に組み込みます。
つまり、ある程度増配傾向にあり、財務が健全で、それなりの規模の銘柄から、利回り上位100銘柄が対象です。
個別銘柄やセクターに偏らないように、四半期ごとに細かくリバランスを行います。そのため、経費率は0.38%とやや高いです。
運用総額は約2.9兆円となかなか大きいです。銘柄数は100です。
セクターは公益事業28%、金融22%で、この2つで約半数を占めています。1セクターの上限は30%です。
上位10銘柄にはタバコのアルトリア【MO】、フィリップモリス【PM】、通信サービスのベライゾン【VZ】、AT&T【T】など、高配当でおなじみの銘柄が入っています。
【DVY】の分配金の推移は?
分配金の推移です。
直近2023年3月は1.005ドルで、3月としては最高額でした。3期続けて1ドルの大台に乗っています。2020年は今ひとつでしたが、それ以外の年は順調に増えています。
【DVY】を過去に買った場合は?
株価、利回り、YOCを見てみましょう。
過去10年で株価は上昇して増配率もなかなかだったので、早い時期に買った方がYOCは上がります。10年前の2013年4月に買っていたら、現在YOCは約6.5%になっていました。
利回りはあまり変動がなく、3.0~3.6%ぐらいです。現在は3.6%ほどなので、狙い目かもしれないですね。
【DVY】はセクターがやや偏っていますが、株価や分配金は順調に伸びており、それでいて分配金利回りも高く、いいとこどりのETFと言えそうです。
SDY(SPDR S&P米国高配当株式ETF)
つぎはステートストリート社の【SDY】。SPDR S&P 米国高配当株式 ETF。
ベンチマークはS&Pハイイールド・ディビデンド・アリストクラッツ指数。
【SDY】はS&Pコンポジット1500指数から、20年以上連続増配実績のある銘柄、時価総額20億ドル以上などでスクリーニング。配当利回りの高い順に構成比率が高くなります。
設定は2005年で、規模は約3.0兆円。どちらも1つ前に紹介した【DVY】と似ています。
利回り加重で、約1500銘柄が対象のため、現在の上位銘柄はややマイナーなものが目立ちます。9位のアッヴィ【ABBV】は11年とありますが、2013年にアボット・ラボラトリーズからスピンアウトしたため、それ以前を含めると50年ほどの連続増配です。
セクターは資本財、生活必需品、公益事業がトップ3。いずれもやや地味だけど堅実に増配している銘柄の多いセクターです。
【SDY】の分配金の推移は?
分配金の推移を見ていきましょう。
2017年まではキャピタルゲイン分配金を出していました。通常の分配金は2021年までは順調に増えていますが、その後は足踏み状態です。現在6回連続で、前年同期をわずかに下回っています。
【SDY】を過去に買った場合は?
株価、利回り、YOCを見てみましょう。長期で見ると、株価は上昇し、分配金も増えているので、早くに買うとYOCは上がります。現在の利回りは2.5%ほどですが、10年前に購入していればYOCは約4.7%になっています。
【SDY】は連続増配銘柄の集合体なのに、近年は増配していません。2022年1月末の銘柄入れ替えで組込1位だったAT&T【T】が除外された影響がありそうです。巻き返しに期待したいですね。
DGRW(ウィズダムツリー 米国株クオリティ配当成長ファンド)
つぎは【DGRW】。正式名称はウィズダムツリー 米国株クオリティ配当成長ファンド。ベンチマークはウィズダムツリー・米国株クオリティ配当成長インデックス。
企業が成長しており、将来も利益を上げる可能性の高い銘柄が対象です。具体的には、ROE(株主資本利益率)、ROA(総資産利益率)、利益成長という3つのファクターを満たす上位300銘柄が対象です。そのため、中期以上にわたって増配している銘柄が数多く組み込まれることになります。
運用総額は約1.1兆円とまずまずです。
配当加重方式を採用しているので、時価総額が大きく、利回りの高い銘柄が上位に入ります。ただし、収益性に注目しているため、利回りの低い銘柄、例えばマイクロソフト【MSFT】やアップル【APPL】なども組み込まれ、結果としてETFの利回りはそれほど高くないです。
それ以外の上位銘柄はジョンソン・エンド・ジョンソン【JNJ】、プロクター・アンド・ギャンブル【PG】、コカ・コーラ【KO】など、長期で連続増配している世界的な企業が顔を揃えています。
セクターは情報技術、生活必需品、資本財、ヘルスケアの順に多いです。情報技術が多いのが、収益性を重視していることと言えそうです。
【DGRW】の分配金の推移は?
分配金の推移を見ていきましょう。
直近2023年3月は0.19ドルで、かなり多かったです。増配率は5年や7年で二桁を記録しており、分配金はかなり増えています。
【DGRW】を過去に買った場合は?
株価、利回り、YOCです。
平均利回りは2%ほどなので、高配当ではないです。株価はかなり上昇しており、増配率も高いです。2013年6月頃に購入していればYOCは5.5%まで上がっています。
【DGRW】は毎月分配型です。どちらかというと目先の分配金よりも、将来の株価成長&分配金の伸びに期待できるETFと言えます。
RDVY(ファースト・トラスト・ライジング・ディビデンド・アチーバーズ ETF)
続いてファーストトラスト社の【RDVY】。正式名称はファースト・トラスト・ライジング・ディビデンド・アチーバーズ ETF。
「直近12カ月の配当金が3年前や5年前を上回っている」、「1株あたりの利益が3年前を上回っている」、「配当性向65%以下」などを満たす銘柄が投資対象。さらに、5年間の配当金の増加額、現在の配当利回り、配当性向などでランク付けして、抽出した50銘柄を均等に組み入れます。リートは対象外。
つまり、増配傾向、企業が成長、財務が健全という要素を満たす銘柄が対象です。
運用総額は約1兆円。経費率は0.5%とやや高めです。ファーストトラスト社のETFはアクティブ的な要素が大きいので、全体的に経費率は高いです。
セクターは金融が約40%とかなり高く、情報技術、エネルギーと続いています。
均等加重かつ、組込銘柄に企業の規模をあまり重視しないため、中規模以下の銘柄が目立ちます。これまで紹介したETFとは少し毛色が異なると言えます。
【RDVY】の分配金の推移は?
分配金の推移を見ていきましょう。
2022年12月は0.3756ドルとかなり多かったです。その後の2023年3月も0.2114ドルと好調。そのため、現在の3年や5年増配率は20%を超えており、とてつもない数値になっています。
【RDVY】を過去に買った場合は?
株価、利回り、YOCを見てみましょう。【RDVY】はなかなか好調と言えます。
過去10年で株価は上昇して増配率も良かったので、早い時期に買った方がYOCは上がります。9年前の2014年4月に買っていたら、現在YOCは約5.1%になっていました。
利回りは結構変動しており、1.0~2.3%ぐらいと幅広いです。
【RDVY】は銘柄選定が少し特殊で、上級者向けのETFかもしれません。最近の分配金はかなり増加傾向ですが、これがいつまで続くかは分かりません。
QDIV(グローバルX 高配当・優良・米国株 ETF)
最後はグローバルX社の【QDIV】。正式名称はグローバルX 高配当・優良・米国株 ETF。ベンチマークはS&P500・クオリ ティ・ハイ・ディビィ デンド・インデックス。
S&P500採用銘柄から、「クオリティスコア」と「配当利回り」のどちらも上位200位に入る銘柄が対象です。ちなみにクオリティスコアとは、ROE(株主資本利益率)、アクルーアル比率、財務レバレッジをランク付けしたものです。ざっくり言うと、財務の健全性ですね。
経費率は0.20%と低水準で、しかも毎月分配型です。設定が2018年7月と日が浅いですが、運用総額は90億円と物足りないです。
セクターは生活必需品、資本財、情報技術の順に多いです。【QDIV】は均等加重方式なので、上位銘柄を意識する必要はありません。ややマイナー銘柄が目立ちます。
【QDIV】の分配金の推移は?
分配金の推移を見ていきましょう。
分配金の推移を見ていきましょう。2023年4月まで発表されています。2020年3月のコロナ・ショックのダメージはほとんどないです。2022年後半から、0.08ドル台に増えており、増配傾向です。3年増配率は7.5%とまずまずです。
【QDIV】を過去に買った場合は?
株価、利回り、YOCを見てみましょう。
株価はなかなか好調で、増配傾向なので、早い時期に買うとYOCは上がります。2018年の終盤に購入すると、YOCは4%を超えています。平均利回りは3%ぐらい。
【QDIV】は高配当&バリューETFという感じですね。今回のテーマである増配という要素はありませんが、高配当と高クオリティを追及すると、結果的に増配要素が出てきます。
組込上位10銘柄の比較
ここからは後半戦。6つの増配系ETFのデータを比較していきます。まずは6つのETFの組込上位10銘柄比較。太字は、複数のETFでトップ10に入った銘柄です。
※クリックすると拡大します
【VIG】と【DGRW】は似ています。マイクロソフト【MSFT】とアップル【AAPL】が1位と2位。ジョンソン・エンド・ジョンソン【JNJ】、プロクター・アンド・ギャンブル【PG】、ホーム・デポ【HD】がどちらもトップ10に入っています。上位10銘柄のうち、5銘柄も同じです。この2ETFで重複した銘柄は背景色をつけておきます。
残りの4ETFは上位組込銘柄はバラバラです。いずれも1位銘柄の比率が2%前後と低く、組込順位はそれほど重要ではないです。
上位10銘柄の合計比率は【VIG】と【DGRW】が30%を超えており、結構集中投資です。それ以外は10%台で分散されています。
ETFの重複率は?
それではETF同士の重複率を見ていきましょう。左側が増配系6ETF、右側に主要なETFとの重複率も調べました。背景色が濃いほど、重複率が高いです。
【VIG】と【DGRW】の重複率は54%と高いですね。増配系の二大メジャーETFだけあって、似ています。
【VIG】は【VYM】と48%、【VTI】や【VOO】とは30%台の重複です。【DGRW】は【VYM】【VTI】【VOO】と40%台の重複。
つまりこの5つのETFは半分弱ぐらいが同じで、結構似ています。その理由は、利回りがそれほど高くない連続増配の世界的巨大企業が上位に入っているからです。
【VTI】や【VOO】は、無配のテック企業が上位にたくさん組み込まれているのが、大きな違いです。
それ以外のETFは【RDVY】が他のETFとの重複率が低いですね。【RDVY】は均等加重で、時価総額をあまり重視しない方針のため、他のETFと比べて大型株の比率が低く、重複率も低いです。
【QDIV】も均等加重ですが、こちらはS&P500が対象のため、巨大企業がそれなりに入るので、他のETFとも重複します。
高配当ETFのセクター比率
それぞれのETFの組込銘柄のセクター比率を見ていきましょう。
左端の【VIG】と【DGRW】は似ています。マイクロソフト【MSFT】やアップル【APPL】など、利回りの低い規模の大きな銘柄が共通していました。そのため情報技術が首位です。
2~5位も金融、ヘルスケア、資本財、生活必需品、一般消費財で、順番は若干異なりますが同じです。
右端の【SDY】と【QDIV】は上位2つが資本財と生活必需品で共通しています。少し似ていますね。
【DVY】は公益事業が1位というのが珍しいです。1位の公益事業と2位の金融で約5割。少し偏っています。
【RDVY】は金融が約4割とかなり多め。高配当ETFは金融が多く、増配系ETFも金融はそれなりに多いです。
増配系ETFの特徴としては、全体的にの生活必需品が多いことですね。の情報技術は高配当ETFでは少なかったですが、増配系ETFでは増えています。収益性などを重視するケースが多いからですね。
利回り推移を確認しよう
それでは過去10年の利回り推移をチェックしましょう。利回りは過去1年分配金から算出しました。株価は月に1度、月末のものです。
過去5年の平均は【DVY】が高く3.5%、【QDIV】は2.9%、【SDY】が2.7%、【DGRW】が2.1%、【VIG】が1.8%、【RDVY】が1.5%です。
【DVY】と【QDIV】は高配当的な要素が強いので利回りは高いですね。【RDVY】は最近の分配金がかなり好調のため、現在の利回りは2.3%ほどあり、上から4番目です。
トータルリターンを比較する
PortfolioVisualizerを使って、トータルリターンを比較します。トータルリターンとは分配金を再投資した株価リターンのことです。手数料や税金は考えません。2023年3月末基準のデータです。
まずはトータルリターンの推移。9年前に1万ドルを投資して、分配金を再投資した場合【DGRW】が2万6900ドル、【RDVY】が2万6100ドル。この2つの成績が良いですね。【VIG】は2万4500ドル、【SDY】は2万3300ドル、【DVY】は2万1700ドルです。【QDIV】は設定が2018年7月なので、このデータはありません。
3年と5年のトータルリターンはどうか?
続いて、3年と5年のトータルリターンを比較します。年率(CAGR)で計算します。参考までに一番右端にS&P500ETF【VOO】のデータを表示します。
3年リターンは【QDIV】が23.2%と素晴らしく、【RDVY】【DVY】の順です。
5年リターンは【DGRW】が11.5%で首位、【VIG】【RDVY】と続きます。3年と5年は順位が結構異なります。
7年以上のリターンはどうか?
続いて7年と10年のトータルリターンを見てきましょう。
7年は【RDVY】が13.5%でトップ、【DGRW】【VIG】の順に成績が良いです。
10年は【DGRW】が12.1%で首位、【RDVY】【VIG】と続きます。
増配系6ETFでは、全体的に【RDVY】が良く、【DGRW】が続き、【VIG】が3番手で、【SDY】と【DVY】はやや劣っています。【QDIV】は長期成績がないので、何とも言えないですが、短期ではなかなか良かったです。
過去に買った場合の、現在のYOC(Yield On Cost)は?
過去にETFを購入していた場合、現在、取得価額に対する利回り(YOC)がどのくらいになっているでしょうか? YOCとはYield on Costのことです。3、5、7、9年前にETFを買っていたら、現在YOCがどうなっているかというデータです。
一番右端の紫色の棒グラフが現在の利回りです。下に数値も書いてあります。3年前はオレンジ色で、5年前は緑色、7年前は青色、9年前は赤色です。
いずれのETFも左肩上がりなので、過去に購入した方が株価が低く、現在YOCが高くなっています。
9年前に購入した場合は、【DVY】が5.7%と高い数値です。7年前や5年前に購入した場合も【DVY】が優勢です。
9年前に購入した場合のYOCと現在の利回りの差は【RDVY】が2.7%、【DGRW】が2.6%、【DVY】が2.1%、【VIG】は2.0%、【SDY】は1.7%です。
【DVY】は現在の利回りが高いというアドバンテージがあるため、昔買っているとYOCが高くなっています、【RDVY】や【DGRW】は現在の利回りは低いですが、YOCの成長という意味では素晴らしいです。
2023年3月の分配金を確認しよう
ここからは分配金や増配率などについて見ていきます。
直近の2023年3月の分配金データと前年同期比較です。【QDIV】は毎月分配型で、すでに4月の分配金が発表されているので、4月のデータです。
【RDVY】が37%増、【DGRW】が31%増と好調です。【DVY】と【QDIV】は13%増、【VIG】は約8%増です。【SDY】だけがマイナスで7.8%減です。
過去の増配率は?
増配率について見ていきましょう。2023年3月の分配金決定後です。【QDIV】は4月決定後です。表の上段は1年ごとの過去1年分配金と、前年からの増配率です。
表の下段は現在を起点とした1、3、5、7、10年増配率。年平均をCAGRで計算します。背景の青色が濃いほど、増配率が高いという意味です。この部分をグラフで見てみましょう。
3年、5年増配率は?
1年増配率はあまり意味がないので、3年と5年増配率を見ましょう。
1年増配率はあまり意味がないので、3年と5年増配率を見ましょう。3年増配率は【RDVY】が22.7%と高く、【VIG】が13%で続いています。
5年増配率も【RDVY】が20.4%と突き抜けており、【DGRW】が11.9%、【VIG】が9.9%で続いています。
【RDVY】が断トツですね。
7年、10年増配率は?
7年と10年増配率はどうでしょうか。7年増配率は【DGRW】と【RDVY】が10%半ばと成績が良く、【VIG】が8%で続いています。
10年増配率は3つしかありませんが【VIG】が7.8%、【DVY】が6.9%、【SDY】が5.3%です。
全体的には【RDVY】が抜群の増配率で、【DGRW】と【VIG】もかなり高い数値です。
過去3、5、7、10年増配率を使った将来YOC予想一覧
3、5、7、10年増配率を使用した将来YOC予想をまとめました。表の下の部分です。背景のオレンジ色が濃いほど、数値が高いです。上が20年目YOC予想、下が10年目YOC予想です。
現在の過去1年分配金額と3、5、7、10年前の同時期の過去1年分配金額を比較して、幾何平均で年間増配率を計算し、それを使って将来YOCを予測します。
YOCとはYield on Costのことで、取得価額に対する利回りのことです。2023年4月12日の終値でETFを買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。「分配金は再投資しない、税金や手数料は考慮しない」で検証します。
3年増配率から10、20年後YOCを予想する
まずは3年増配率を使ってYOCを予想します。
20年目のYOCは【RDVY】が110.3%と突き抜けています。表内には収まらないですね。3年増配率が22.7%と抜群のためです。
2番目に良かったのは【VIG】で20.0%、【QDIV】が12.3%です。
5年増配率から10、20年後YOCを予想する
5年増配率の場合はどうでしょうか。
20年目のYOCは、ここでも【RDVY】が77.8%まで上がります。5年増配率も20.4%と極めて高いためです。
2番手は【DGRW】で17.8%、【DVY】が13.0%と続きます。
7年増配率から10、20年後YOCを予想する
7年増配率のYOCを予測しましょう。
20年目のYOCは【RDVY】が14.9%、【DGRW】が14.2%、【DVY】が13.4%。上位3ETFは接戦です。
10年増配率から10、20年後YOCを予想する
最後に10年増配率のYOCをチェックしましょう。データがあるのは3つのETFです。
【DVY】が12.9%で一番。【VIG】が8.2%で続き、【SDY】が6.8%です。【DVY】の10年増配率は6.9%で、【VIG】の7.8%よりも低いですが、スタート地点の現在利回りが【DVY】のが高いため、将来YOCも【DVY】に軍配が上がりました。意外とこれは重要なことです。
どの期間を選ぶかによって、将来YOCは異なりますね。全体的には【RDVY】が圧倒的でした。2022年12月の分配金がかなり多かったため、最近の増配率がとてつもなく高い状況になっているためです。
【VIG】や【DGRW】はいずれの期間も安定して上昇していました。【DVY】はスタート地点の利回りの高さというアドバンテージがあります。【SDY】は直近1年の分配金が今ひとつなので、将来YOCもイマイチでした。【QDIV】はデータが3年増配率しかありませんが、良かったです。
それぞれの項目をまとめると?
これまで取り扱ったのデータをランクづけしました。「A」が最高で「B」「C」「D」の順です。YOC予想は増配率と利回りを組み合わせたものなので、表の真ん中より下は、内容が似ています。
相対比較で、やや強引に差をつけました。参考程度にしてください。
最近の分配金が今ひとつの【SDY】がやや劣っていますが、それ以外の5つは拮抗しています。
【RDVY】は直近1年の分配金がかなり多かったので、データ面では「A」が目立ちます。トータルリターンも素晴らしいです。
【DVY】は増配というよりは「高配当」色の強いETFです。そのため、利回りや過去YOCなど、現在の分配金利回りを使用するデータは強いですね。
【VIG】と【DGRW】のAの数が少ないのは意外です。ただしこれは【RDVY】のデータが素晴らしすぎたので、そのため「B」評価にしたものが多かったです。下の4項目はそうですね。実際は「A」評価にしてもいいぐらいです。
【QDIV】は設定から日が浅いので、ランキングをつけるのは難しいです。期間は短いですが、いずれの項目もなかなかの数値でした。
ランキングの数をまとめると?
ABCDの数値をまとめたデータです。
ABCDの数値をまとめたデータです。
「A」の数は【DVY】と【RDVY】が4個で最多でした。意外ですね。
「B」の数は【VIG】と【QDIV】が最多で5個、
「C」の数は【SDY】が7個で最多。
まとめ
【VIG】は時価総額加重平均なので、安定して株価上昇と増配が狙える。経費率が低く、運用総額が大きいのは安心できます。
【DVY】は増配というよりは高配当寄りのETF。データはなかなか安定しており、高水準でした。
【DGRW】はライバルの【VIG】よりも最近のデータでは少し上回っています。
【RDVY】の快進撃はいつまで続くのでしょうか。金融セクターの比率が約40%と高く、上位組込銘柄もマイナーなものが目立ちます。均等組み入れなので、分配金のブレがありそう。コアというよりはサテライトとして保有するのがよさそうです。
【SDY】はここ数回の分配金が今ひとつ。巻き返しに期待します。
【QDIV】は設定から日が浅いが、悪くないですね。売れ行きは今ひとつですが、グローバルX社のインカムETFの中では、もっとも安定していると言えそうです。