ブラックロック社のiシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF【HDV】は、モーニングスター配当フォーカス指数に連動したETFです。財務の健全性が高く、持続的に平均以上の配当を支払うことのできる、質の高い米国籍企業75銘柄前後で構成されています。
毎年3、6、9、12月の計4回、銘柄入れ替えがあります。直近では、2023年6月16日に銘柄の入れ替えを行いました。13銘柄が除外、13銘柄が新加入となりました。前回の2023年3月の入れ替えでは14銘柄が新加入だったので、ほぼ同じです。
ベンチマークの「モーニングスター配当フォーカス指数」とは?
まずは【HDV】のコンセプトや銘柄入れ替えのルールについて見ていきましょう。このETFは「モーニングスター配当フォーカス指数」との連動を目指します。
この指数をざっくりとまとめると、米国の上場企業の中から、財務状況が健全かつ比較的配当を多く支払う75銘柄が対象です。
銘柄選定のルールにはどうでしょうか? まずは、米国株式市場の97%を占める「モーニングスターUSマーケットインデックス」を対象に、スクリーニングを行います。以下のすべてに当てはまることが条件です。
2)REITは対象外
3)ワイドモート・レイティング
4)デフォルトまでの距離
3)「ワイドモート」というのは、株式投資において使用される概念の一つです。ワイドモートは、ある企業が持つ競争上の優位性や経済的な堀り立てを指します。具体的には、その企業が他の競合他社と比較して、より長期間にわたって持続可能な利益を生み出し、市場シェアを維持できると考えられる特徴や要素を指します。【HDV】採用銘柄は、このワイドモートで選別した場合の上位に入っている必要があります。
・優れたブランド価値や顧客ロイヤルティ
・特許や独占的な技術、ノウハウの保有
・規模の経済効果や生産力の高さ
・優れた流通チャネルやネットワークの構築
・高い資本要件や進入障壁
・政府の規制やライセンスの獲得
4)「デフォルトまでの距離」は倒産する可能性が低いかどうかです。
3)と4)で、他社に対して優位性のあるビジネスモデル、財務の健全性でスクリーニングをかけているわけです。
このスクリーニングで残った銘柄から、配当利回りの高い順に75銘柄を選びます。ただし、現在の構成銘柄については少し条件が緩く、配当利回り上位100位以内、かつ、前回の銘柄入れ替え時に配当利回り上位75位以内ならば残留します。
銘柄入れ替えのルールは?
ウェイト付け、いわゆる組入方式は配当加重型です。企業が投資家に支払った配当金の総額に応じて構成銘柄が加重される方式。ざっくりとしたイメージでは、時価総額と配当利回りを掛けた数の大きい順に組み入れます。
「モーニングスター配当フォーカス指数」は、年4回、3、6、9、12月の第3金曜日の営業終了後に銘柄入れ替えを行います。基準日はその前の月である2、5、7、11月の月末です。この日のデータをもとに、銘柄の入れ替えを決めます。
まとめると【HDV】は、財務状況が健全かつ他社に対して優位性のあるビジネスモデルを持つ企業から配当利回りの高い75社が対象で、規模が大きく、配当利回りの高い銘柄が上位に入るETFです。
新たに組み込まれた銘柄は?
今回、新たに追加されたのは13銘柄です。セクター別では金融が7銘柄で最多、一般消費財が2銘柄です。
上位3銘柄は金融セクターです。ウェルズ・ファーゴ【WFC】は金融サービス会社。銀行、保険、 投資、住宅ローン、リース、クレジットカード、消費者金融などを手掛けています。
モルガン・スタンレー【MS】は銀行持株会社。世界各地で多角的な金融サービスを提供しています。
ブラックロック【BLK】は投資運用会社。iシェアーズのブランド名で上場投資信託を扱っています。このETF【HDV】もブラックロック社の金融商品です。
新加入銘柄の組込比率を加味した加重平均平均利回りは3.47%。あまり高くないですね。新加入銘柄の全体に占める割合は10.75%でした。
除外された銘柄は?
除外されたのも13銘柄です。セクター別の数では金融が6銘柄、素材と公益事業が2銘柄ずつです。
ブロードコム【AVGO】半導体メーカー。おもにアナログ半導体デバイスの開発者やサプライヤーに製品を提供しています。
アムジェン【AMGN】はバイオ医薬品メーカー。細胞生物学と分子生物学に基づく治療薬の開発、製造、販売を展開しています。
除外された銘柄の組込比率を加味した加重平均平均利回りは3.40%。全体に占める割合は12.97%。
先ほどの新加入銘柄の組込比率を加味した平均利回りは3.47%でした。新加入と除外の配当利回りは、ほとんど変わらないですね。
【HDV】全組込銘柄がどのように変化したのか?
下の表は【HDV】全組込銘柄を、組み換え前後の2023年6月15日と2023年6月16日で比較したものです。保有比率の大きい順に並べました。
左側(6月15日)の表の一番左側に背景が灰色で「除」と書かれているのが今回除外された銘柄です。右側(6月16日)の表の一番左側が背景ピンク色で「新」と書かれているのが、今回新たに組み込まれた銘柄です。
目立った新加入は、組入順位14位のウェルズ・ファーゴ【WFC】、同15位のモルガン・スタンレー【MS】などです。
除外された銘柄では、組入順位5位のブロード・コム【AVGO】、同16位のアムジェン【AMGN】、同20位のデューク・エナジー【DUK】などがあります。
セクター別では、組込上位はエネルギー、ヘルスケア、情報技術が多いです。2番手集団に公益事業が目立ち、中より下は金融が多いですね。
ちなみに、組込全銘柄の加重平均利回りは4.08%です。前回2023年3月の銘柄入れ替え時は4.28%だったので、0.2%ほど下がりました。
2020年以降の主な銘柄の入れ替えは?
【HDV】は75銘柄前後で構成されていて、4半期に1回銘柄の入れ替えが行われます。新加入や除外の組込比率1%以上の銘柄についてまとめました。他のETFに比べると、上位陣の入れ替わりが激しいのが特徴です。
トゥルイスト・ファイナンシャル【TFC】は2022年3月に除外され、9月に復帰し、12月に除外され、2023年3月に復帰し、今回6月に除外されました。毎回出たり入ったり忙しいですね。
ほかにも、ファイザー【PFE】、ドミニオン・エナジー【D】、アルトリア・グループ【MO】、ペプシコ【PEP】、ロッキード・マーチン【LMT】なども出入りの激しい銘柄です。
利回りが2%台後半ぐらいの大型銘柄が、株価や増配によって頻繁に入れ替えが行われている傾向にあります。
※なお比率は、入れ替えの直前と直後のドンピシャのタイミングではなく、数日ずれている場合もあります
これまでの銘柄入れ替え数は?
2020年以降の銘柄入れ替え数です。上の棒が新加入、下の棒が除外です。今回の13銘柄の変更というのは平均的です。
2020年6月は入れ替え数がかなり多いです。これは2020年3月のコロナ・ショックで株価や業績予想に大幅な変化があったためです。
セクター比率はどう変化したか?
【HDV】に組み込まれている銘柄のセクターの割合を、今回の入れ替え前後で比較してみました。
首位のヘルスケアと2位のエネルギーはほとんど変化はありません。
金融が4.8%から10.8%に増えて3位になりました。先ほどの銘柄入れ替えでも金融の新加入が目立っていましたね。
情報技術が15.5%から10.0%に減っています。5位で比率5.7%のブロードコム【AVGO】が除外された影響ですね。
金融が少し増えて、情報技術が少し減ったというわけですね。
【HDV】の上位組込銘柄はどんな会社か?
【HDV】の組入上位20銘柄の6月22日のデータです。ベンチマークは、モーニングスター配当フォーカス指数です。上位10銘柄で全体の約54%、20銘柄で約77%なので、上位銘柄の影響が大きく出るETFと言えます。
【HDV】の組込銘柄は配当金の総支払額によって加重平均しています。つまり、並び順は時価総額と配当利回りを掛けた数値のほぼ大きい順になります。下の表の右から2列目です。
【HDV】は財務の健全性が高く、持続的に平均以上の配当を支払うことのできる、質の高い米国籍企業が対象です。そのため、上位組込銘柄の多くが連続増配年数10年を超えています。表の一番右側の列です。
2020年5月以降の上位銘柄の推移
上位組込銘柄の推移です。【HDV】は毎年3、6、9、12月の中盤から後半にかけて銘柄の入れ替えがあります。下の表ではすべての期間で銘柄の入れ替えが行われています。
上位銘柄の顔ぶれはあまり変化はありません。生活必需品が以前は3~4銘柄が20位以内にいましたが、現在はコカ・コーラ【KO】のみと減っています。
【HDV】は年4回銘柄を入れ替えていますが、コアの部分は比較的同じメンバーで固められており、比率が高いのが特徴です。
【HDV】の期別分配金は?
直近の分配金は、2023年6月7日に発表されました。0.7965ドルです。1年前の同期は0.5697ドルでしたので、1年前の同期と比べて39.8%増です。
【HDV】の分配金は4期続けて、対前年同期を上回っており、なかなか好調です。
まとめ
2023年6月は13銘柄が入れ替えとなりました。
新加入の上位3銘柄は金融セクターで、ウェルズ・ファーゴ【WFC】、モルガン・スタンレー【MS】、ブラックロック【BLK】でした。
加重平均利回りは除外銘柄も新加入銘柄も約4%ほどで同じくらいです。
ちなみに、組込全銘柄の加重平均利回りは4.08%です。現在の分配金利回りは4.24%ほどなので、それと比べると少し低いですね。
セクター別では、ヘルスケアとエネルギーが上位で、この2つのセクターで約半分を占めています。金融セクターが約11%まで増えて、3番目に多くなりました。



