ブラックロック社のiシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF【HDV】は、モーニングスターの配当フォーカス指数に連動したETFです。財務の健全性が高く、持続的に平均以上の配当を支払うことのできる、質の高い米国籍企業75銘柄前後で構成されています。
毎年3、6、9、12月の計4回組み換えがあります。直近では、2020年12月20日頃に銘柄の入れ替えを行いました。10銘柄が削除され、10銘柄が追加されました。前回の2021年9月の入れ替えでは13銘柄が新加入だったので、今回は控えめです。
除外された銘柄は?
除外されたのは10銘柄です。セクター別の数では金融が4銘柄です。【HDV】は金融セクター銘柄が組込下位に大量に入っているのが特徴で、入れ替わりが激しいです。
AT&T【T】は、通信インフラの最大手です。最近では、広告プラットフォームXandrをマイクロソフト【MSFT】に売却するなどして、利益を確保しています。ワーナーメディアを切り離してコスト削減と負債の圧縮を図りましたが、その影響で減配となりそうです。
アムジェン【AMGN】はバイオ医薬品メーカーです。12月3日に約10%の増配を発表しましたが、除外されました。
新たに組み込まれた銘柄は?
新たに追加されたのは10銘柄です。セクター別では素材が3銘柄と最多で、エネルギーが2銘柄です。
ファイザー【PFE】は世界最大級の製薬会社です。最近株価の上昇が著しいため、利回りは3%を切っています。それほど高配当ではないですね。
キンダー・モルガン【KMI】は北米最大のエネルギー・インフラ企業です。今回、高配当で組込比率の高いAT&T【T】が抜けたため、それを補うために、この銘柄が入った可能性があります。
ニューモント【NEM】は世界最大規模の産金会社です。
【HDV】全組込銘柄がどのように変化したのか?
下の表は【HDV】全組込銘柄を、組み換え前後の2021年12月16日と2021年12月21日で比較したものです。保有比率の大きい順に並べました。左側(12月16日)の表の一番左側に背景が灰色で「除」と書かれているのが今回除外された銘柄です。右側(12月21日)の表の一番左側が背景ピンク色で「新」と書かれているのが、今回新たに組み込まれた銘柄です。
目立った新加入は、ファイザー【PFE】、キンダー・モルガン【KMI】などです。
除外された銘柄ではAT&T【D】、アムジェン【AMGN】などがあります。
セクター別では、組込上位はヘルスケアや生活必需品が多いです。2番手集団に情報技術がチラホラ見えます。中位になると公益事業が増え、そして下位は金融が目立ちます。
組込銘柄数では、公益事業が最多で17銘柄、金融セクターが13銘柄です。ちなみにセクター比率だと公益は上から5番目で8.1%、金融は7番目で5.6%と全体から占める割合は小さいです。
公益事業と金融の規模の小さめな高配当銘柄がたくさん組み込まれているのが、【HDV】の特徴ともいえます。
2020年以降の主な銘柄の入れ替えは?
【HDV】は75銘柄前後で構成されていて、四半期に1回銘柄の入れ替えが行われます。その中でも組込比率1%以上の銘柄についてまとめました。今回は控えめな入れ替えでした。
AT&T【T】は2021年3月に除外されましたが、9月に復帰したばかりで、すぐに除外となりました。
ファイザー【PFE】も2021年3月に除外され、今回の12月に復帰となりました。
出たり入ったりを繰り返している銘柄が結構あります。ギリアド・サイエンシズ【GILD】、ドミニオン・エナジー【D】、アリトリア・グループ【MO】などです。
利回りが2%台後半ぐらいの大型銘柄は、株価や増配によって頻繁に入れ替えが行われている感じです。
※なお比率は、入れ替えの直前と直後のドンピシャのタイミングではなく、数日ずれている場合もあります
これまでの銘柄入れ替え数は?
過去8回の銘柄入れ替え数です。上の棒が新加入、下の棒が除外です。今回の10銘柄の変更というのは、近年では最も少ないですね。
セクター比率はどう変化したか?
【HDV】に組み込まれている銘柄のセクターの占める割合を、今回と前回の組み換え前後で比較してみました。
今回はAT&T【T】が除外された影響で通信サービスが比率を減らしました。
首位のヘルスケアは比率を増やしました。除外されたアムジェン【AMGN】よりも、新加入のファイザー【PFE】の比率が高かったためです。
エネルギーは少し比率を下げました。組込上位のエクソン・モービル【XOM】とシェブロン【CVX】の比率が下がったためです。
【HDV】の上位組込銘柄はどんな会社か?
【HDV】の組込比率1%以上の12月21日のデータです。全部で26銘柄あります。ベンチマークは、モーニングスター配当フォーカス指数です。上位26銘柄で、全体の約86%を占めており、かなりの集中投資といえます。
【HDV】は配当金の総支払額によって加重平均しています。つまり、並び順は時価総額と配当利回りを掛けた数値の大きい順になります。
2020年5月以降の上位銘柄は?
上位組込銘柄の推移です。【HDV】は毎年3、6、9、12月の中盤から後半にかけて銘柄の入れ替えがあります。下の表では銘柄の入れ替えがあったところは、太い線を引いてあります。
最新の2021年12月の入れ替え前後を比較してみましょう。新加入や除外銘柄以外では、ジョンソン・エンド・ジョンソン【JNJ】やベライゾン【VZ】、フィリップモリス【PM】などが比率を上げています。
【HDV】上位20銘柄は主要ETFには組み込まれているのか?
【HDV】の組込比率上位20銘柄は、他のETFにどのくらいの割合で組み込まれているのでしょうか? 高配当【SPYD】【HDV】【DVY】【VYM】、連続増配【SDY】【VIG】、市場全体【DIA】【VOO】【VTI】、ハイテク・グロース系【QQQ】【VUG】【VGT】の主要12ETFへの組込比率(%)をまとめました。
背景色のオレンジ色が濃いほど、組込比率が高いことを意味しています。【HDV】の上位銘柄は濃いオレンジ色なので、他のETFよりも集中投資なのがわかりますね。
【HDV】の組込上位銘柄は、すべて【VYM】にも組み込まれています。
【HDV】と【VYM】の重複率は39%と一番高いです。また【VYM】の中には【HDV】組込銘柄が93%も含まれています。
【HDV】との重複率では高配当【SPYD】【DVY】が25%前後、連続増配【VIG】も20%を超えています。
組込比率7位の【PG】、同9位の【KO】は、【SPYD】とハイテクG系以外の8つのETFに組み込まれています。組込比率15位のマクドナルドはこれらのETFに【VUG】を加えた9つのETFに入っています。
※組込比率は、【HDV】は2021年12月21日、バンガード社のETFは11月末、その他のETFは12月9日のデータをもとにしています。【DIA】は株価の高い銘柄が比率が高くなり、【SPYD】は均等平均加重組入なので、これらのETFの組込比率はあまり重要ではありません。
主要ETFの並び順は基本的に左端が最も利回りが高く、右に行くにつれて下がっていきます。ただし、【VGT】は少し毛色が異なるセクターETFなので、右端にしました。主要ETFのティッカー・コードの下の数字は12月9日の利回り(%)です。
一番下のETF同士の比率は「etfrc.com」のデータです。
【HDV】の期別分配金は?
コロナ・ショックがあったにもかかわらず、2020年の分配金は大きく伸びました。2021年に入ってからの分配金は3、6、9月は前年同期を下回りましたが、12月は前年の同期と比べて13.9%増えました。年間分配金は前年より1.7%減です。
今回2021年12月の分配金が多かったのはAT&T【T】が9月の銘柄入れ替えで復帰したからとも言えます。次回、AT&T【T】がいなくなるので、分配金が減少する可能性があります。
【HDV】の過去1、3、5年増配率の推移をチェック
年間増配率はどうでしょうか? 過去1年増配率は、これまでに2度、前年よりマイナスだった年があります。ただし、その前年はどちらも二桁増配です。つまり、前の年に分配金を出しすぎたため、そのしわ寄せが来たとも考えられます。
過去3年と過去5年の増配率の推移は安定しています。2017年以降は4~7%で推移しています。今後も5~6%ぐらいが目安となりそうです。
まとめ
いかがでしたか? AT&T【T】が除外されて、ファイザー【PFE】が加わった以外は、目立った入れ替えはなかったですね。入れ替えは10銘柄で、近年だと最低数です。
高配当のAT&T【T】が抜けたので、次回の分配金は少し減るかもしれません。