ブラックロック社のiシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF【HDV】が、2021年12月10日に分配金を発表しました。1.0515ドル(厳密には1.051454ドル)です。1年前の同期は0.9232ドルでしたので、1年前の同期と比べて13.9%増です。
利回りを過去1年間の分配金額から算出すると、2021年12月10日の終値は99.13ドル、過去1年の分配金額は3.508ドルなので、利回りは3.54%になります。
※このページでの利回りは過去1年間の分配金をもとに計算します。
基本情報を確認しよう
【HDV】は財務が健全かつ持続的に平均以上の配当を支払うことのできる75銘柄を選び、支払った配当額の総額をベースに銘柄の加重を行います。そのため、配当利回りの高い米国の大企業が中心のETFになります。リートは対象外です。四半期に1度(3、6、9、12月)、銘柄の入れ替えがあります。
【HDV】とライバルの米国の高配当ETF【VYM】【SPYD】【DVY】を比較しましょう。経費率は【HDV】【VYM】【SPYD】は0.1%を切っていますが、【DVY】が0.39%と少し高いです。
利回りは【SPYD】がもっとも高く5%前後で、【HDV】【DVY】【VYM】と続きます。
運用総額と組込銘柄数は【VYM】が多いですね。【DVY】も運用総額は約2兆円となかなかです。
【HDV】のセクター比率は?
【HDV】に組み込まれている銘柄のセクター別の組込比率です。GICS(Global Industry Classification Standard)で分類されています。
前回は9月16日頃に銘柄の入れ替えを行いました。その結果、ヘルスケアが首位になりました。上位銘柄にアッヴィ【ABBV】、ギリアド・サイエンシズ【GILD】が新加入したためです。
また、AT&T【T】が2位に組み込まれた通信サービスも比率を増やしました。生活必需品、公益事業などのセクターは比率を下げています。
その後の3カ月はセクター比率の変化はほとんどありません。エネルギーが少し増えて、通信サービスが少し減ったくらいです。
【HDV】とライバルETFのセクター比率は?
【HDV】とライバルETF【VYM】【SPYD】【DVY】に組み込まれている銘柄のセクター比率を比べましょう。
【HDV】はヘルスケアが多いですね。高配当ETFでヘルスケア・セクターが多いのは珍しいです。エネルギ、生活必需品を含めて上位3セクターで約56%と半分以上を占めており、偏っていると言えます。
【HDV】以外は金融が多いです。【DVY】と【SPYD】は上位セクターが似ています。どちらも金融、公益事業、エネルギー、生活必需品が上位です。また、不動産がそれなりに組み込まれているのは【SPYD】だけです。
生活必需品、ヘルスケア、情報技術の3セクターは、近年は不景気に強い傾向があります。【HDV】【VYM】はこの3セクターが多く組み込まれており、【SPYD】【DVY】は少ないですね。
【HDV】の上位組込銘柄はどんな会社か?
【HDV】の組込比率1%以上の12月9日のデータです。全部で27銘柄あります。ベンチマークは、モーニングスター配当フォーカス指数です。上位27銘柄で、全体の約87%を占めており、比較的集中投資といえます。
2020年5月以降の上位銘柄は?
上位組込銘柄の推移です。【HDV】は毎年3、6、9、12月の中盤から後半にかけて銘柄の入れ替えがあります。下の表では銘柄の入れ替えがあったところは、太い線を引いてあります。
最新の2021年12月と9月を比較してみましょう。この期間は銘柄組み換えが行われていないので、あまり変動はありません。上位組込銘柄では、エクソン・モービル【XOM】やシェブロン【CVX】など、エネルギー・セクターの比率が増えています。逆にAT&T【T】やベライゾン【VZ】など通信サービス・セクターが組込比率を減らしています。
【HDV】上位20銘柄は主要ETFには組み込まれているのか?
【HDV】の組込比率上位20銘柄は、他のETFにどのくらいの割合で組み込まれているのでしょうか? 高配当【SPYD】【HDV】【DVY】【VYM】、連続増配【SDY】【VIG】、市場全体【DIA】【VOO】【VTI】、ハイテク・グロース系【QQQ】【VUG】【VGT】の主要12ETFへの組込比率(%)をまとめました。
背景色のオレンジ色が濃いほど、組込比率が高いことを意味しています。【HDV】の上位銘柄は濃いオレンジ色なので、他のETFよりも集中投資なのがわかりますね。
【HDV】の組込上位銘柄は、すべて【VYM】の上位に組み込まれています。
【HDV】と【VYM】の重複率は38%と一番高いです。また【VYM】の中には【HDV】組込銘柄が95%も含まれています。
【HDV】との重複率では高配当【SPYD】【DVY】、連続増配【SDY】【VIG】、ニューヨーク・ダウ【DIA】が20%前後です。
※組込比率は、バンガード社のETFは2021年10月末、その他のETFは12月9日のデータをもとにしています。【DIA】は株価の高い銘柄が比率が高くなり、【SPYD】は均等平均加重組入なので、これらのETFの組込比率はあまり重要ではありません。
主要ETFの並び順は基本的に左端が最も利回りが高く、右に行くにつれて下がっていきます。ただし、【VGT】は少し毛色が異なるセクターETFなので、右端にしました。主要ETFのティッカー・コードの下の数字は12月9日の利回り(%)です。
一番下のETF同士の比率は「etfrc.com」のデータです。
【HDV】の過去の分配金と増配率は?
【HDV】が設定されたのは2011年3月です。下の表は過去の分配金の一覧です。
今回の【HDV】の分配金が増配or減配なのかは、どのデータを比較するかによって異なります。もっともオーソドックスなのは、前年の同期との分配金額の比較です。今回が1.0515ドル、前年の同期が0.9232ドルなので13.9%の増配になります。また、前年同期との過去1年分配金額の比較では、今回が3.5080ドル、前年の同期が3.5679ドルなので、1.7%減配となります。
※背景が赤になっているのが減配です
【HDV】の期別分配金は?
コロナ・ショックがあったにもかかわらず、2020年の分配金は大きく伸びました。2021年に入ってからの分配金は3、6、9月は前年同期を下回りましたが、今回の12月は13.9%増えました。
【HDV】の年間分配金額と株価の比較は?
【HDV】の年間分配金と株価を比較しました。どちらも右肩上がりです。2021年の年間分配金を、9年前の2012年と比較すると1.67倍です。
【HDV】の分配金額を棒グラフで確認しよう
期ごとの分配金額を株価と比較しました。最近は期によって少し差が出てきています。2020年の12月を頂点に、2021年3、6、9月と3連続で減っていましたが、今回の12月は大幅アップを達成。初めて1ドルの大台(1.0515ドル)に乗りました。
【HDV】の過去1年分配金額を棒グラフで確認しよう
過去1年分配金額を棒グラフにして、【HDV】の株価と比較しました。過去1年分配金額は、株価とある程度連動しています。コロナ・ショックの2020年3月に株価は大幅に下がりましが、過去1年分配金はほとんど減少がなかったです。
【HDV】の年間増配率は?
年間増配率はどうでしょうか? 最初に分配金が支払われたのが2011年の6月からなので、2013年から見てみましょう。これまでに2度、前年よりマイナスだった年があります。ただし、その前年はどちらも二桁増配です。つまり、前の年に分配金を出しすぎたため、そのしわ寄せが来たとも考えられます。
長期の増配率をチェック!
1年ごとの増配率は年によって差が激いので、イメージしづらいかもしれません。そういう時は、複数年単位で増配率をチェックしましょう。下のグラフは過去3年と過去5年の増配率の推移です。
2017年以降は4~7%で推移しています。今後も5~6%ぐらいで推移しそうですね。
2020年以降の利回りは?
2020年に入ってからの【HDV】の株価と利回りを見てみましょう。利回りは、過去1年の年間分配金額から算出しました。青線が株価(左軸)で、赤線が利回り(右軸)です。
利回りは2020年の年初は3.4%前後で推移していましたが、2月半ば以降は株価が急落し、3月23日には利回りが5.18%まで上昇しました。現在は株価がコロナ・ショック前まで戻り、利回りは3.54%です。
現在の【HDV】の株価と利回りの関係は?
年間分配金額が現在と同じく3.5080ドルで変わらなかったら、利回りはどのように変化するでしょうか。下のグラフは年間分配金額が現在と同じ3.3798ドルが続いた場合の、利回りと株価の相関図です。利回りを0.1%ごとに株価を出しました。今後【HDV】を購入しようと考えている人は、目安にしてください。
過去10年間の利回り、YOC、株価は?
過去に【HDV】を買った場合、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 現在から10年前までの株価、利回り、YOCを見ていきましょう。株価は月末のもので月1回なので、ややアバウトです。
下のグラフの黄色の線が、過去に買った場合の、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)です。この線が左肩上がりの場合は、株価好調&増配傾向にあるといえます。なので【HDV】は長期で見ると、なかなか好調です。
2021年12月10日の終値は99.13ドル、過去1年の分配金金額は3.5080ドルなので、現在の利回りは3.54%です。過去10年の平均利回りは約3.4%です。
10年前と比較して株価は上がっており、増配もしていますので、早い時期に買った方がYOCは上がります。2012年1月に買っていたら、現在YOCは約6.4%になっていました。
ちなみに利回りは過去1年の分配金から算出しているので、最初の分配金の支払いから約1年は出ません。【HDV】が設定されたのが2011年6月なので、上のグラフの左端の利回りはありません。
利回りは3~4%がレンジなので、3.5%以上なら買いと言えそうです。
ライバルETFとトータルリターンを比較する
【HDV】とライバルの高配当ETF【VYM】【SPYD】【DVY】とトータルリターンを比較します。PORTFOLIO VISUALIZERを使って、2016年12月から2021年11月までの5年間を比べます。
2016年12月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合、2021年11月には【VYM】が1万6700ドル、【DVY】が1万5700ドル、【HDV】が1万4100ドル、【SPYD】が1万4000ドルになっていました。過去5年では【HDV】は【SPYD】と同じくらいですね。
危険度はどのくらいか?
ETFの安定度を比べてみましょう。最大ドローダウンは、計測期間における最大下落率です。マイナスの数値が小さいほど最大下落率が低いです。
シャープレシオとは、同じリスクを取った場合のリターンの比較です。「(ファンドのリターン?無リスク資産のリターン)÷標準偏差」の値です。一概には言えませんが、1を超えていれば優秀です。
ソルティノレシオはシャープレシオの改良版で、相場が軟調の際の成績を示しています。「(ファンドのリターン-無リスク資産のリターン)÷下方偏差」で計算します。1.5を超えていると、素晴らしいです。
【HDV】は財務が健全な高配当を組み込んでいますが、ソルティノレシオの値はあまり良くないですね。最大ドローダウンはまずまずです。
過去の分配金はどのくらいか?
2016年12月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合の年間でもらえる分配金の推移です。分配金は再投資します。税金は考慮しません。PORTFOLIO VISUALIZERのデータです。
5年間の配当金の合計は【SPYD】が2200ドル、【HDV】が1800ドル、【DVY】が1700ドル、【VYM】が1600ドルでした。現在の利回りの高さと分配金額は、だいたい比例しています。
主要ETFとのトータルリターン比較
高配当【SPYD】【HDV】【DVY】【VYM】、連続増配【SDY】【VIG】【DGRW】【RDVY】、インデックス【DIA】【VOO】【VTI】の過去1、3、5、7、10年のトータルリターンを比較しました。現在の利回りは紫の★です。
過去10年のリターン(年平均)は【VOO】が16.5%、【VTI】が16.3%、【VIG】が14.4%、【SDY】は13.3%、【VYM】は13.0%、【HDV】は10.1%でした。
利回りの低いほど、リターンがいいですね。【HDV】の過去5年リターンは【SPYD】と同じぐらいで、【VYM】【DVY】【SDY】には劣っています。
主要ETFと増配率を比較する
高配当【SPYD】【HDV】【DVY】【VYM】、連続増配【SDY】【VIG】、インデックス【DIA】【VOO】【VTI】の過去の増配率を比較しました。
どの期間も素晴らしいのが【VIG】です。【SDY】は過去1年と3年が好調です。【VYM】【VOO】【VTI】は過去10年が8%以上といいですね。【DVY】はどの期間も安定しています。【SPYD】は直近の分配金が悪かった影響でよくないです。【HDV】は過去1年が冴えなかったので、このデータは今ひとつです。
【HDV】の今後のYOC予想は?
現在の過去1年分配金額(3.508ドル)と1、3、5、7年前の同時期の過去1年分配金額(3.5679ドル、3.0949ドル、2.6995ドル、2.4512ドル)を比較して年間増配率を計算し、それを使って将来YOCを予想します。YOC(Yield on Cost)とは、購入単価あたりの利回りのことです。【HDV】株を2021年12月10日の終値99.13ドルで買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。
年間増配率は過去1年がマイナス1.7%、過去3年が4.3%、過去5年が5.4%、過去7年が5.3%でした。現在の利回りは3.54%です。
「分配金を再投資しない」「分配金を再投資しない(税引き後)」「分配金を再投資する」「分配金を再投資する(税引き後)」の4パターンで検証します
分配金を再投資しない場合のYOC
まずは分配金を再投資しない場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。スタート年は、現在の利回りの3.52%です。
もっとも増配率の低い過去1年の増配率(-1.7%)で推移すると、5年後のYOCは3.25%、10年後のYOCは2.99%になります。もっとも成績の良い過去5年の増配率(5.4%)で推移すると5年後のYOCは4.60%、10年後のYOCは5.98%です。
分配金を再投資しない場合(税引き後)のYOC
次に分配金を再投資しないケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%が支払われます。スタート年のYOCは3.54%ではなく、税引き後の2.55%になります。
もっとも増配率の低い過去1年の増配率(-1.7%)で推移すると、5年後のYOCは2.34%、10年後のYOCは2.15%になります。もっとも成績の良い過去5年の増配率(5.4%)で推移すると5年後のYOCは3.31%、10年後のYOCは4.30%です。
分配金を再投資する場合のYOC
それでは分配金を年1回再投資する場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。再投資する分配金額は、現在と7年前の株価を比較して年平均騰落率を計算し、それを使って調整します。
もっとも増配率の低い過去1年の増配率(-1.7%)で推移すると、5年後のYOCは3.82%、10年後のYOCは4.08%になります。もっとも成績の良い過去5年の増配率(5.4%)で推移すると5年後のYOCは5.54%、10年後のYOCは9.16%です。
分配金を再投資する場合(税引き後)のYOC
最後に分配金を再投資するケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%が支払われます。スタート年のYOCは3.54%ではなく、税引き後の2.55%になります。
もっとも増配率の低い過去1年の増配率(-1.7%)で推移すると、5年後のYOCは2.62%、10年後のYOCは2.69%になります。もっとも成績の良い過去5年の増配率(5.4%)で推移すると5年後のYOCは3.79%、10年後のYOCは5.86%です。
まとめ
【HDV】は2020年の分配金は素晴らしかったのですが、2021年に入ってから3回続けて前年を下回っていました。今回は13.9%増なので、ひと安心ですね。
年間トータルでは2021年の分配金は3.508ドルで前年より1.7%減ですが、長期で見ると分配金は増配を続けているので、年間マイナスでもそれほど気にしなくてよさそうです。
年間増配率は5~6%ぐらいで、今後のYOCも安定して伸びる可能性が高いです。
トータルリターンは【VYM】には劣り、【SPYD】と同水準です。