バイオ製薬会社のアッヴィ【ABBV】が2021年10月29日に増配を発表しました。
これまで四半期ごとの配当が1.3ドルだったのが、1.41ドルに上がります。年間配当は5.2ドルから5.64ドルになる予定で、増配率は8.5%です。2021年11月29日の終値は114.67ドル、配当利回りは4.92%です。
アッヴィ【ABBV】の連続増配は9年です。ちなみに、アボット・ラボラトリーズ時代も含めると、連続増配年数は49年になります。
アッヴィ【ABBV】はどんな会社か?
アッヴィ【ABBV】は2013年にアボット・ラボラトリーズ【ABT】から独立しました。グローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業です。
世界70カ国以上で事業を展開しており、社員数は約4万8000人。日本の法人では1300人を超える社員が活動しています。
自己免疫疾患、ウイルス感染症、精神・神経疾患、がん、という4つの分野の疾患領域において、医薬品を提供しています。
主力製品はリウマチ系疾患に効果を発揮するヒュミラです。2020年には医療用医薬品のグローバル売上第1位になりました。ただし、2023年に特許が切れるため、売り上げの減少が懸念されています。
そのため、2020年には、美容医薬品などを扱うアラガンを買収するなど、M&A事業を手掛け、収益基盤の多角化を目指しています。
RSウイルス感染症の重症化を防ぐシナジズも主力製品です。
アッヴィ【ABBV】の過去の配当、年間増配率
アッヴィ【ABBV】は高い増配率が続いています。次回の配当落ちは1月13日です。
アッヴィ【ABBV】の期別の配当は?
期別の配当です。基本的に、配当落ちの月を基準にしています。2018年に2度増配したため、大きく増え、その後も着実に積み重ねています。
アッヴィ【ABBV】の年間配当額は?
年間配当額の推移です。2022年は、今回の増配が続いた場合の予想です。2022年の年間配当は、2013年と比較すると約3.5倍です。
アッヴィ【ABBV】の年間増配率は?
年間増配率の推移です。2015年以降は二桁増配率が続いていましたが、今回は8.5%なので10%を下回りました。ただ、それでも高い増配率と言えます。
アッヴィ【ABBV】の年間配当額と株価の関係は?
株価と年間配当の比較です。株価は2021年を除いて年末のものです。どちらもかなり成長していますね。ある程度連動しているように見えます。
最近のアッヴィ【ABBV】の株価と配当利回りは?
2020年に入ってからのアッヴィ【ABBV】の株価と配当利回りを見てみましょう。青線が株価(左軸)で、赤線が配当利回り(右軸)です。
2020年の年初は配当利回り5.5%前後でしたが、2月半ば以降はコロナ・ショックで株価が下がったため、3月23日には配当利回りが7.3%まで上昇しました。その後、株価はコロナ・ショック前まで戻ったあとに再び下落しましたが、再度急上昇しました。現在の配当利回りは4.92%です。
現在のアッヴィ【ABBV】の株価と配当利回りの関係は?
年間配当額が現在と同じだったら、株価によって配当利回りはどのように変化するでしょうか。下のグラフは年間配当額が現在と同じ5.64ドルが続いた場合の、配当利回りと株価の相関図です。配当利回りを0.2%ごとに株価を出しました。今後、アッヴィ【ABBV】を購入しようと考えている人は、目安にしてください。
過去の利回り、株価、YOCは?
過去に【ABBV】を買った場合、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 現在から8年10カ月前までの株価、利回り、YOCを見ていきましょう。株価は月末のもので月1回なので、ややアバウトです。
下のグラフの黄色の線が、過去に買った場合の、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)です。この線が左肩上がりの場合は、株価好調&増配傾向にあるといえます。
2021年10月29日の終値は114.67ドル、年間の予想配当金額は5.64ドルなので、現在の利回りは4.92%です。過去8年10カ月の平均利回りは約4.3%です。
過去8年10カ月で株価は上昇しており、増配率がかなり高いため、早い時期に買っていればYOCは上がります。2013年1月頃に買っていたら、現在YOCは15.4%前後になっていました。
競合銘柄とトータルリターンを比較する
アッヴィ【ABBV】と配当金を多く支払っているヘルスケア・セクターの巨大企業で企業とトータル・リターンを比較します。ジョンソン・エンド・ジョンソン【JNJ】、ファイザー【PFE】、さらにS&P500連動ETF【VOO】と比べました。
アッヴィ【ABBV】が設立されたのが2013年1月なので、区切りのいいところで2013年10月から2021年9月までの8年間を比較します。PORTFOLIO VISUALIZERを使います。
2013年10月に1万ドル投資して配当を再投資した場合、2021年9月には【ABBV】が3万3500ドル、【VOO】が2万9800ドル、【JNJ】が2万3100ドル、【PFE】が2万1100ドルになっていました。
過去のトータルリターン
過去3カ月、1、3、5、8年の年平均トータルリターンは以下の通りです。どの銘柄も堅実ですね。アッヴィ【ABBV】は過去8年のリターンでは【VOO】をアウトパフォームしています。
過去8年のリターン(年平均)は【ABBV】が16.3%、【VOO】は14.7%、【JNJ】は11.1%、【PFE】は9.8%でした。
危険度はどのくらいか?
ETFの安定度を比べてみましょう。最大ドローダウンは、計測期間における最大下落率です。マイナスの数値が小さいほど最大下落率が低いです。
シャープレシオとは、同じリスクを取った場合のリターンの比較です。「(ファンドのリターン−無リスク資産のリターン)÷標準偏差」の値です。1を超えていれば、優秀です。
ソルティノレシオはシャープレシオの改良版で、相場が軟調の際の成績を示しています。「(ファンドのリターン-無リスク資産のリターン)÷下方偏差」で計算します。1.5を超えていると、素晴らしいです。
アッヴィ【ABBV】はリターンは良かったですが、最大ドローダウンは悪いですね。主力薬品の特許切れや訴訟リスクなどを抱えているため、株価は不安定です。それゆえ利回りも比較的高くなる傾向にあります。
それに対して、ジョンソン・エンド・ジョンソン【JNJ】は最大ドローダウンが【VOO】よりも優れていますね。こちらも訴訟リスクはありますが。取り扱っている製品のジャンルが幅広く、長年にわたる連続増配が安定感をもたらしています。
過去の分配金はどのくらいか?
2013年10月に1万ドル投資して配当を再投資した場合の、年間にもらえる配当の推移を比較します。税金は考慮しません。PORTFOLIO VISUALIZERのデータです。
8年間の配当金の合計は【ABBV】が6800ドル、【PFE】が4200ドル、【JNJ】が3500ドル、【VOO】が2500ドルでした。
増配率の高いアッヴィ【ABBV】の配当の伸びが目立ちます。
アッヴィ【ABBV】の今後のYOC予想は?
現在の配当金額(1.41ドル)と1、3、5年前の同時期の配当金額(1.3ドル、1.07ドル、0.64ドル)を比較して年間増配率を計算し、それを使って将来の分配金とYOCを予想しました。YOC(Yield on Cost)とは、購入単価あたりの利回りのことです。【ABBV】株を2021年10月29日の終値114.67ドルで買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。
増配率は過去1年が8.5%、過去3年が9.6%、過去5年が17.1%でした。現在の利回りは4.92%です。
ただ、これまで通り高い増配率が続かない可能性もあるので、配当に変化がなかった場合も比較します。
「配当を再投資しない」「配当を再投資しない(税引き後)」「配当を再投資する」「配当を再投資する(税引き後)」の4パターンで検証します
配当金を再投資しない場合
まずは配当金を再投資しないケースを見てみましょう。税金は考慮しません。スタート年は、現在の利回りの4.92%です。
増配率に変化がないペースだと5年後のYOCは4.92%、10年後のYOCは4.92%になります。もっとも成績の良い過去5年の増配率(17.1%)は増配率が高すぎるので、今後も長期にわたってこのペースが続く可能性は低そうです。2番目に増配率の高い過去3年増配率(9.6%)で推移すると5年後のYOCは7.79%、10年後のYOCは12.34%になります。
配当金を再投資しない場合(税引き後)
次に配当金を再投資しないケースで、税金を引いた額で計算してみましょう。配当は28%の税金を引いた72%が支払われます。スタート年のYOCは4.92%ではなく、税引き後の3.54%になります。
増配率に変化がないペースだと5年後のYOCは3.54%、10年後のYOCは3.54%になります。2番目に増配率の高い過去3年増配率(9.6%)で推移すると5年後のYOCは5.61%、10年後のYOCは8.88%になります。
配当金を再投資する場合
それでは配当金を年1回再投資する場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。再投資する場合の配当は、現在と10年前の株価を比較して年平均騰落率を計算し、それを使って調整します。
増配率に変化がないペースだと5年後のYOCは6.03%、10年後のYOCは6.03%になります。2番目に増配率の高い過去3年増配率(9.6%)で推移すると5年後のYOCは9.96%、10年後のYOCは23.15%になります。
配当金を再投資する場合(税引き後)
最後に配当金を再投資するケースで、税金を引いた額で計算してみましょう。配当は28%の税金を引いた72%が支払われます。スタート年のYOCは4.92%ではなく、税引き後の3.54%になります。
増配率に変化がないペースだと5年後のYOCは4.10%、10年後のYOCは4.76%になります。2番目に増配率の高い過去3年増配率(9.6%)で推移すると5年後のYOCは6.70%、10年後のYOCは14.03%になります。
【ABBV】はこれまでかなり高い増配率を維持してきましたが、そろそろ少し落ち着きそうですね。今後は過去3年増配率(9.6%)か過去1年増配率(8.5%)ぐらいが目安かもしれません。
アッヴィ【ABBV】は主要ETFに組み込まれているか?
高配当ETFを中心に組み込まれていますが、【DVY】には入っていません。組込順位は【HDV】が6位、【VYM】が8位となかなか高いですね。
【VOO】や【VTI】には40番目に組み込まれています。米国企業の中で時価総額が40番目ぐらいに大きいと言えます。
ETF | 組込可否 | 組込順位 | 割合(%) |
---|---|---|---|
SPYD(80) | ○ | 74 | 1.1 |
HDV(75) | ○ | 6 | 4.9 |
DVY(100) | × | ― | ― |
VYM(412) | ○ | 20 | 1.5 |
SDY(112) | ○ | 8 | 1.7 |
VIG(247) | × | ― | ― |
DIA(30) | × | ― | ― |
VOO(507) | ○ | 40 | 0.5 |
VTI(3949) | ○ | 40 | 0.4 |
VUG(285) | × | ― | ― |
QQQ(102) | × | ― | ― |
VGT(342) | × | ― | ― |
※表内の「ETF」の右側の()内の数字は全組込銘柄数です。組込比率はバンガード社のETFは2021年9月末、その他のETFは2021年10月半ばのデータをもとにしています。
アッヴィ【ABBV】の財務データは?
アッヴィ【ABBV】の財務データです。ここ2年で売り上げをかなり伸ばしています。配当性向は高いですね。モーニングスターのデータです。
まとめ
アッヴィ【ABBV】は売り上げはかなり好調で、利益率も前年よりアップしています。ただし、配当の増配率は落ち着いてきました。