グローバルX S&P500・カバード・コール ETF【XYLD】の分配金が2023年10月20日に発表されました。0.3835ドルです。
前回(9月)の分配金は0.3333ドルでしたので、先月との比較では15.1%増です。
権利付最終日である10月20日(第3金曜日)の終値は38.49ドル、基準価額(NAV)は38.44ドル、今回の分配金は0.3835ドルなので、基準価額(NAV)から算出した分配金は1%の満額の可能性が高いです。
2023年10月20日の終値は38.49ドル、過去1年の分配金は4.3762ドルなので、分配金利回りは11.37%になります。
※このページでの利回りは、過去1年間の分配金をもとに計算します。
序盤は【XYLD】の分配金についてのデータを紹介
前半は【XYLD】とライバルETFとの基本データを比較
中盤は【XYLD】の基本情報、組込銘柄やセクターなど、【XYLD】の中身に迫ります
後半はライバルのカバードコールETF【JEPI】【QYLD】【RYLD】などと、トータルリターン、株価、分配金などのデータを比較します
最後に、いま【XYLD】買ったら将来どのくらいの分配金利回りになるか予測します
【XYLD】の過去の分配金と増配率は?
【XYLD】が設定されたのは2013年6月です。下の表は過去の配当金の一覧です。
※背景が赤色は対象月と比べてマイナスです
【XYLD】の毎月の分配金は?
2017年まではかなり不安定ですね。年末の12月だけ多かったのは、キャピタル・ゲイン分配金をまとめて支払ったからです。
2018年以降は安定しており、毎月0.2ドル台でほぼ推移していました。2020年8月に0.3920ドルと増えたのは、ベンチマークを変更したためです。
2022年は前年の2021年から15.4%も増えました。2023年は2021年と同じくらいのペースです。
なぜ分配金は安定していないのか?
公式サイトには以下の補足がありました。
2018年1月と2020年8月を境に分配金額に大きな変化が出たことは、ベンチマークを変更したことが影響していると考えられます。
そんなわけで、2020年7月以前のデータはあまり参考にならないかもしれません。
【XYLD】の分配金と株価の関係は?
年間分配金と株価を1年ごとにまとめました。株価は横ばいです。株価は最新年を除いて年末のものです。
2022年は後半に株価が下がりましたが、分配金は前年2021年を上回りました。
2023年はあと2回分配金があります。
【XYLD】の年間増配率は?
年間増配率はバラつきがありますが、増加傾向です。2020年8月より前はベンチマークが異なりますので、あまり参考にならないですね。ただ、2021、2022年と分配金は増えています。
最近の分配金と基準価額(NAV)の関係は?
グローバルX社のカバードコールETFの分配金でもっとも重要なのは、基準価額の上限の1%(もしくは0.5%)を獲得できているかどうかです。
下のグラフは2020年8月以降の、「XYLD」の毎月の分配金と第3金曜日(権利付最終日)の基準価額の比較です。赤い折れ線の基準価額と、青い棒線が分配金が、ちょうど重なっていれば1%の上限を獲得したということです。
2022年の1月から2023年3月までは、15カ月連続でほぼ1%上限を獲得していました。赤い折れ線グラフと、青い棒グラフが重なっています。オプション取引がうまくいっていました。
ただし、2023年4月以降は満額ではないです。今回10月は久々に満額のようです。
オプション・プレミアムと分配金の関係
グローバルX社のカバードコールETFは、分配金の上限が決まっています。【QYLD】や【XYLD】などは、獲得したオプション・プレミアムの金額の半分、もしくは基準価額(=純資産額/NAV)の1%です。つまり、オプション・プレミアムを2%以上獲得できていれば、分配金の上限は基準価額の1%になります。
グローバルX社の公式サイト(英語版)には、獲得したオプション・プレミアムと分配金の比率が掲載されているPDFファイルが公開されています。下の画像です。
2023年4月以降は、6回連続で1%の満額に到達していません。赤く囲った箇所です。直近の2023年10月のオプションプレミアムはまだ発表されていませんが、1.00%ぐらいの見通しです。久々に満額の可能性が高いです。
オプション・プレミアムと分配金の関係
先ほどの画像を、グラフ化します。獲得したオプション・プレミアムと分配金の月ごとのデータです。NAVに対して分配金がどのくらいの割合だったかです。単位は%です。
100%カバードコール戦略の場合、赤い棒グラフのオプション・プレミアムが2%以上なら、青い棒グラフの分配金は満額の1%となります。
ベンチマークを変更した2020年8月以降の分配金は0.7~1%ぐらいで安定しており、2022年以降は1%の満額がほとんどです。2023年4月以降は1%に到達していません。10月は久々に1%満額のようです。
※一番右の2023年10月の分配金は予想です。オプション・プレミアムは発表されていません
オプション・プレミアムとボラティリティの関係
カバードコール戦略はボラティリティが大きいと、プレミアムをたくさん稼ぐことができると言われていますが、本当でしょうか? 下のグラフは、S&P500指数のオプション価格から算出されるボラティリティを示す【VIX】と、【XYLD】が獲得したオプション・プレミアムの関係です。
オプション・プレミアムのデータは、分配金の支払われた月に合わせています。
2020年8月以降は、連動していますね。ベンチマークを現在のものに変更してからは安定しています。2020年2月以前はオプションが1%を下回っており不調です。それゆえ、ベンチマークを変更した可能性が考えられます。
ベンチマーク変更後のオプション・プレミアムは1.5%は獲得しています。【VIX】の値が22~23ぐらいで、オプション・プレミアムがMAXの2%になりそうです。
2023年4月以降の【VIX】は20を下回り、オプション・プレミアムは満額ではなかったです。直近は20前後まで回復しています。
2020年以降の分配金利回りは?
2020年以降の【XYLD】の株価と分配金利回りを見てみましょう。分配金利回りは、過去1年の年間分配金額から算出しました。青線が株価(左軸)で、赤線が分配金利回り(右軸)です。
ベンチマークが変更されて分配金が現在の水準になったが2020年8月です。過去1年分配金から分配金利回りを算出していますので、その1年後の2021年7月以降のデータが重要です。
2022年4月以降は株価が低迷しており、現在の分配金利回りは11.37%です。
【XYLD】を過去に買っていた場合のYOCは?
過去に【XYLD】を買った場合、取得価額に対する利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 設定以来の株価、分配金利回り、YOCを見ていきましょう。株価は月末のもので月1回なので、ややアバウトです。
下のグラフの黄色の線が、過去に買った場合の、取得価額に対する利回り(YOC)です。この線が左肩上がりの場合は、株価好調&増配傾向にあるといえます。
2023年10月20日の終値は38.49ドル、過去1年の分配金額は4.3762ドルなので、現在の分配金利回りは11.37%です。過去の平均分配金利回りは約7.0%です。
現在の株価は設定時より少し低いので、早く買っていても、それほどYOCは上がりません。2016年1月に買っていればYOCは10.9%になっていました。また、コロナショック時の2020年3月に購入していれば、YOCは11.5%になっていました。
【XYLD】は株価が変わらず、分配金が増えるという珍しいパターンです。そのため、分配金利回りは上昇しています。ベンチマークを2回変更したため、このようなイレギュラーな傾向になったと考えられます。つまり、現在のベンチマークになった2020年8月より前のデータは気にする必要はなさそうです。
ライバルETFとの比較
【XYLD】と主なカバードコール系のETFの比較です。
【XYLD】の対象はS&P500。【QYLD】はナスダック100、【RYLD】はラッセル2000が対象です。
【JEPI】はS&P500に近い大型株を約8割を保有。残りの2割弱でELNという仕組債を保有して、カバードコールと似たようなオプション取引を行います。【XYLD】のライバルという位置づけですね。【JEPQ】は【JEPI】のナスダック100版です。
運用総額は【JEPI】が約4.3兆円と頭一つ抜け出しています。【XYLD】は約4400億円。
過去1年分配金から算出した利回りは【RYLD】が高く、【QYLD】【JEPQ】が2番手、【XYLD】が続き、【JEPI】は少し劣っています。ラッセル2000、ナスダック100、S&P500の順ですね。
分配金利回り(12カ月)は過去1年の配当から算出したものです。
分配金利回り(直近)は直近の分配金が今度1年続いたものとして算出しました
表の中の数値が他のETFと比較して優れている場合は赤字にしました。次点はオレンジ色です。
ライバルETFとの関係
【XYLD】とライバルETFの比較です。4つのETFの関係や大まかな違いはこんな感じです。
左から2列目は対象がSP500です。【XYLD】のライバルになりそうなのが【JEPI】です。
一番左の列は対象がナスダック100です。【QYLD】、【JEPQ】です。
上段の【JEPQ】と【JEPI】はJPモルガン・アセットマネジメント社の商品で、80%が低ボラティリティ銘柄で、残りの20%がELNという仕組債で、コールオプションを売ります。
下段の【QYLD】と【XYLD】はグローバルX社のカバードコールETFです。原資産を保有しながら、コールオプションを売ります。
JPモルガンとグローバルX社のETFは似ていますよね。コール・オプションの売りにおける権利行使価格が原資産よりも高い「アウト・オブ・ザ・マネー」か、権利行使価格が原資産と同額の「アット・ザ・マネー」の違いはあります。
経費率はJPモルガン・アセット・マネジメント社の【JEPQ】【JEPI】が0.35%、グローバルX社の【QYLD】【XYLD】は0.60%なので少し差があります。
カバードコール系ETFの利回り推移
カバードコール系ETF【RYLD】【QYLD】【XYLD】【DJIA】【JEPI】【JEPQ】の利回りの変化を見てみましょう。利回りは直近の分配金を1年換算したものから算出しました。株価は月末のものです。
※2021年12月に【RYLD】【QYLD】はキャピタルゲイン分配金を出しました。これを含めて計算するとイメージしづらくなるので、2021年12月分配金は【RYLD】【QYLD】はNAVの上限1%で計算しました
カバードコール系ETFの利回りを過去1年分配金から算出
先ほどのグラフだと、月によって分配金の変動があるため少しイメージしづらいかもしれません。過去1年の分配金から利回りを算出しました。
【RYLD】が12%、【JEPQ】【QYLD】が11.5%、【XYLD】が11%、【JEPI】が10%、【DJIA】が8%ぐらいが目安でしょうか。
※このグラフも前項同様に、2021年12月分配金は【RYLD】【QYLD】はNAVの上限1%で計算しました
獲得したオプション・プレミアムの比較
グローバルX社の6つのカバードコールETFの、獲得したオプション・プレミアムと分配金の比率をグラフ化します。
100%カバードコールETFの【RYLD】【QYLD】【XYLD】【DJIA】は獲得したオプションプレミアムが2%を超えると、分配金は基準価格の上限である1%が支払われます。50%カバードコールETFの【QYLG】【XYLG】は獲得したオプションプレミアムが1%を超えると、分配金は基準価格の上限である0.5%が支払われます。
50%カバードコール戦略ETFが設定された2020年9月以降の平均は、100%カバードコールETFは【RYLD】2.75%、【QYLD】2.70%、【XYLD】2.04%。【DJIA】は2022年3月以降と期間が短く1.61%。50%カバードコール戦略ETFは【QYLG】1.39%、【XYLG】1.00%です。
ラッセル2000を対象とした【RYLD】が2.75%で、プレミアムを一番獲得しています。ナスダック100対象の【QYLD】【QYLG】は分配金の支払い上限の2%や1%を大きく超えています。S&P500の【XYLD】【XYLG】は上限の2%や1%とほぼ同じです。
【XYLD】はどんなETFか?
【XYLD】はオプション取引を行って利益を狙います。オプション取引というのは保険料みたいなものです。
オプションの中でも、カバード・コール戦略という方法を取ります。S&P500インデックスを保有しながら、S&P500インデックスを将来買う権利を売ります。
将来買う権利を売ることを、「コール・オプションの売り」と言います。表の上から2番目の黄色の部分です。
オプションを売ったことで、プレミアムを受け取ることができます。そして獲得したプレミアムは、【XYLD】ホルダーに分配金として支払います。この分配金額が多額で、毎月、株価のほぼ1%が最大値です。年利に換算すると12%を目標としています。
S&P500という米国を代表する500社の値上がり益をオプション代に変換して、それを分配金にするというのが【XYLD】のイメージです。
ちなみに分配金に支払われた残りは【XYLD】に再投資され、株価の上昇に寄与します。
【XYLD】は2番目のコール・オプション(買う権利)を売るに該当します
プロセスは?
以下のような手順で行われます。
(1)まずS&P500インデックスを購入します。ETFの【VOO】や【SPY】を買うようなイメージです。
(2)そして、毎月第3金曜日に、1カ月後に満期を迎えるS&P500インデックス・オプション(SPX)を販売します。
(3)コール・オプションの売りをアット・ザ・マネーで行います。今と同じ価格で1カ月後に買うことができる権利を売ります。満期は翌月の第3木曜日です。
(4)このオプションの販売と引き換えに、プレミアムを受け取ります。
(5)満期日が過ぎたら、オプションの一部を分配金として【XYLD】の投資家に分配します。
(6)そして、翌月以降も、このプロセスが繰り返されます。
アット・ザ・マネーによるオプション販売を行うため、株価上昇における利益を捨てます。そのかわりに、オプション代はそれなりに高くなるという仕組みです。
ボラティリティが大きいとオプション代がより高くなる傾向です。分配金は最大で純資産価格の1%なので、年12%の利回りを目指すというのが基本的な考え方です。
プレミアムの価値は?
プレミアムの価格は、次の5つの要因によって決定されます。
(1)現在の資産価格
(2)オプションの権利行使価格
(3)オプション満期までの残り時間
(4)原資産のボラティリティ
(5)リスクフリーレート(金利)
オプションの権利行使価格は?
オプションの権利行使価格はATM(アット・ザ・マネー)です。原資産価格と権利行使価格が同じです。S&P500は近年好調だったので、1カ月後に同じ価格で買うことができるのは買い手に有利です。そのためプレミアムの代金はそれなりに高くなります。
権利行使日に価格が上がった場合は、実際の株をやり取りせずに、その差額を支払うことになります。これを差金決済と言います。
ただし、保有している原資産も値上がりしているので、その分をカバーできるという意味でカバード・コールと言います。
※権利を行使すれば利益が出る状態が「イン・ザ・マネー(ITM)」、損失が出る状態が「アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)」、同じ場合は「アット・ザ・マネー(ATM)」です
参考サイト
【XYLD】のセクター比率は?
真ん中の円グラフが【XYLD】に組み込まれている銘柄のセクター別の組込比率です。S&P500の銘柄を保有しますので、【VOO】とほぼ同じです。情報技術の割合が多く3割弱、ヘルスケア、一般消費財、金融、資本財が続いています。
【XYLD】の情報技術の割合は【QYLD】よりは少ないですが、【RYLD】の約2倍あります。
【XYLD】の上位組込銘柄は?
【XYLD】の組込比率1%以上の銘柄です。ベンチマークは、Cboe S&P 500 バイライト・インデックスです。組込上位10銘柄で約30%を占めています。
【XYLD】はS&P500をカバードコールするので、中身はETFの【SPY】【VOO】などとほぼ同じです。【SPY】との上位銘柄の順位はそっくり同じで、組込比率もほぼ同じです。
ベンチマーク変更の効果は?
過去5年の運用総額の変化を見てみましょう。表の上に伸びている緑棒が資金が流入(売れた)、下に伸びている赤棒が資金流出(売られた)です。ETF DATABASEのデータです。
以前のベンチマークだった2020年8月より前は、売れ行きはあまりよくありません。ベンチマークを変更した後、分配金が0.4ドル前後で安定したのが確認されると、売れ行きが好調に転じたと考えられます。
過去5年間で32.2億ドル、1ドル149円で換算すると約4800億円ほど増えています。
ライバルETFとデータを比較する
【XYLD】とライバルのカバードコール系ETFを比較します。ナスダック100カバードコールETF【QYLD】、JPモルガン・米国株式・プレミアム・インカムETF【JEPI】、ラッセル2000カバードコールETF【RYLD】と比べました。さらに高配当ETFの代表格【VYM】、S&P500ETF【VOO】とも比較します。
PORTFOLIO VISUALIZERを使用します。
株価推移を比較
まずは過去9年の株価を比較します。【JEPI】【RYLD】は設定されたのが2020、2019年なので、このデータはありません。
2014年10月に1万ドルを投資した場合、2023年9月末の株価は【VOO】が2万1700ドル、【VYM】が1万5500ドル、【XYLD】が8400ドル、【QYLD】は6700ドルでした。
株価リターンは【VOO】が圧倒的ですね。
トータルリターンを比較
分配金を再投資した場合のトータルリターンの推移です。税金や手数料は考慮しません。こちらも【JEPI】と【RYLD】はありません。
2014年10月に1万ドルを投資して分配金を再投資した場合、2023年9月末の株価は【VOO】が2万5600ドル、【VYM】が2万600ドル、【QYLD】は1万7400ドル、【XYLD】が1万6000ドルでした。
トータルリターンだと【QYLD】、【XYLD】はプラスになります。
過去のトータルリターン
過去1、3、5、9年のトータルリターンの比較です。1年あたりのリターンのことで、幾何平均(CAGR/Compound Annual Growth Rate・年平均成長率)で求めます。
過去3年のトータルリターンは、【VYM】が11.9%、【QQQ】と【JEPI】が10%前後で続き、【XYLD】は6.4%です。
過去5年以上になると、【VOO】が圧倒的です。ただし、【XYLD】の9年リターンは5.4%なので、悪くはないです。
トータルリターン、シャープレシオ、ソルティノレシオを比較
ここからは、【XYLD】とライバルのカバードコールETF【QYLD】、【JEPI】、【RYLD】で比べます。過去3年のデータです。まずは、トータルリターン、シャープレシオ、ソルティノレシオを比較します。
トータルリターン(CAGR)は分配金を再投資した場合のリターンの年率(CAGR)です。
シャープレシオは、同じリスクを取った場合のリターンの大きさです。数値が大きいほど、リスクのわりにリターンが大きいことを意味し、投資効率の良さを示します。
ソルティノレシオは、シャープレシオのリスクの部分が、下落リスク(Downside Deviation)になります。下落リスクに対するリターンを評価します。一般的にこの数値が大きいほど、下落局面に強いことを示します。
いずれの値も【JEPI】が抜きんでています。【XYLD】はどれも2番手です。
【XYLD】と【JEPI】はシャープレシオに比べてソルティノレシオが好調です。S&P500が対象のため、下落リスクに耐性があると言えそうです。
リスク、最大下落率はどうか?
続いて、リスク、最大下落率を比較します。どちらも0に近いほど安定していると言えます。
リスク(Stdev 【Standard Deviation】)は リターンの変動性を示します。標準偏差のことです。ボラティリティとも同義です。値が低いほどリスクが少ないことを示します。安定したリターンを提供するETFを選ぶために重要な指標です。1つ前のシャープレシオにも登場しましたね。
最大下落率(Max. Drawdown)は、過去の最高値から最も大きく下落した割合を示します。投資期間中にどれだけ資金が減少したかを示すので、リスク管理の観点から重要です。
リスク(Stdev)は【XYLD】が低く、【JEPI】が続いています。最大下落率は【JEPI】が0に近いです。S&P500が対象なので安定していますね。【QYLD】はどちらも大きい値になっており、不安定と言えます。
3年前に購入した場合の年間分配金は?
2020年10月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合の年間でもらえる分配金の推移です。分配金は再投資します。税金は考慮しません。
3年間の分配金の合計は【RYLD】が4300ドル、【QYLD】が3900ドル、【XYLD】が3700ドル、【JEPI】が3300ドルでした。現在の分配金利回りの高さと分配金額は、だいたい比例しています。
今後20年間でYOCはどのくらいになるのか?
最後に、今【XYLD】を購入したら、将来の利回り(YOC)がどのくらいになるかをシミュレーションします。
【XYLD】は増配銘柄ではありません。分配金額は不安定で予想するのが難しいです。そこで、分配金利回り12%、11%、10%、9%、8%の5パターンで検証します。いずれも分配金に変化がなかった場合で検証します。
「分配金は再投資する、税引き後(28%引かれる)、株価は変化しない」という設定にします。
分配金利回り12%が続き、再投資し続けると、20年目のYOCは41.7%になります。
分配金利回り11%が続き、再投資し続けると、20年目のYOCは33.7%になります。
分配金利回り10%が続き、再投資し続けると、20年目のYOCは27.0%になります。
分配金利回り9%が続き、再投資し続けると、20年目のYOCは21.4%になります。
分配金利回り8%が続き、再投資し続けると、20年目のYOCは16.7%になります。
もっとも分配金利回りの低い8%でも、再投資し続ければ、20年目のYOCは税引き後で16.7%と、なかなか高いですね。
カバードコール系ETFの将来は未知数ですが、似たような額の分配金が続き、再投資し続ければ、かなりの複利効果を得ることができそうです。
まとめ
【XYLD】はベンチマークを2回変更していますので、2020年8月より前のデータはあまりアテになりません。ただ、ベンチマークを変更した2020年8月以降は分配金額が安定しています。
【XYLD】の2023年10月分配金は0.3835ドルでした。先月との比較で15.1%増です。
NAV(基準価額)から見た分配金比率は1.00%ぐらいで7カ月ぶりに満額になった可能性が高そうです。
ボラティリティが大きくなると分配金を多く獲得できるカバードコール戦略は、多くの人が保有している優良銘柄に対して、分散投資的な意味がありそうですね。ただし、価格が下がると分配金も減るので、注視したいところです。
日本の証券会社で購入可能なETFで、ライバルとなりそうなのは【JEPI】でしょうか。また、【QYLD】の保有比率が高い人にとって、分散という意味で【XYLD】はいいかもしれません。
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