グローバルX ラッセル2000・カバード・コール ETF【RYLD】が、日本の証券会社で取り扱いが始まったようなので、まとめました。
【RYLD】は毎月分配金を支払います。直近は2022年6月17日に分配金を発表しました。0.2022ドルです。
1年前の同期は0.2475ドルでしたので、1年前の同期との比較では18.3%減です。前回2022年5月の分配金は0.2113ドルなので、先月との比較では4.3%減です。
2022年7月1日の終値は20.58ドル、過去1年の分配金は2.9002ドルなので、利回りは14.09%になります。
ちなみに2021年12月の分配金を、キャピタルゲイン分配金を考えず、NAVの上限1%で計算すると、過去1年分配金は2.8342ドルなので、利回りは13.77%です。
※このページでの利回りは、過去1年間の分配金をもとに計算します。
【RYLD】の過去の分配金と増配率は?
【RYLD】が設定されたのは2019年4月です。下の表は過去の配当金の一覧です。2020年11月以降は、期別分配金が0.22ドルを超えていましたが、2022年5月以降は下回っています。
背景が黄色の2021年は12月は0.3066ドルとかなり多いですね。その理由は、ショートターム・キャピタルゲインが含まれていたからです。詳しくはこちら
※背景が赤になっているのが対象月と比べてマイナスです
【RYLD】の毎月の分配金は?
【RYLD】は毎月分配金が支払われます。月ごとの分配金を棒グラフにして重ねました。2020年と比べると、2021年はかなり増えています。そして2020年11月以降は0.22ドル以上が続いており、長期にわたって好調を維持していました。2022年5月以降は株価が下がったので、それに合わせて分配金の上限も下がりました。
【RYLD】の分配金と株価の関係は?
【RYLD】の年間分配金と株価の関係です。期間が短いので何とも言えませんが、株価はやや漸減傾向、分配金は横ばいですかね。
最近の分配金と株価の関係は?
下のグラフは、期ごとの分配金と基準価格(NAV)の関係です。【RYLD】の分配金の上限はNAVの1%です。オプションの満期日、もしくは権利付最終日である毎月第3金曜日の基準価格(NAV)と、分配金を比較します。ちなみに基準価格(NAV)は、その日の終値とほぼ同じです。
グラフの分配金と基準価格は単位が2桁異なりますので、基準価格(赤線)が分配金の上限1%の目安となります。ショート・ターム・キャピタルゲインを出した2021年12月を除いて、分配金は株価の1%にほぼ収まっています。2020年3月以降はほとんどの月で上限の1%出しています。赤い折れ線グラフに、青の棒グラフがちょうど重なっています。
分配金額の決め方
【RYLD】の毎月の分配金は、(1)純資産価値(NAV)の1%、(2)受け取ったオプション・プレミアムの半分、のいずれか低い方を上限とします。受け取ったオプション・プレミアムに超過分がある場合は、ファンドに再投資されます。
オプション・プレミアムが好調で2%を超えていたケースは、オプション・プレミアムの半分が1%を超えるので(1)となり、分配金はNAVの1%になります。下の表の背景色のついていない箇所です。
(2)はオプション・プレミアムが2%を下回った場合です。オプション・プレミアムの半分になるので、分配金はNAVの1%未満になります。下の表の背景が緑色の箇所が、オプションプレミアムが2%を下回っていたケースです。NAVに対して1%未満になるので、(1)より少ないですね。下の表の背景色が黄色の割合になります。
ただし(2)オプション・プレミアムが2%を下回った場合はオプション・プレミアムのちょうど半分の50%ではないようです。下の表の背景がオレンジ色の箇所が比率です。
また、2022年1月や2021年10、11月のように、オプション・プレミアムが2%を上回っていても、分配金が1%ではないケースもあるようです。ただし、ほとんどが0.99%なので、これは気にする必要はなさそうです。
ちなみに、NAVと株価はほぼ同じです。オプション・プレミアムを2%以上獲得できていれば、株価の1%ぐらいが分配金の目安と言えそうです。つまり、毎月株価のほぼ1%が上限なので、年間の利回りの最高値は12%になります。
ただし、2021年12月だけは、分配金が上限の1%を大きく上回って1.27%です。1年間の運用がうまくいったため、キャピタル・ゲイン分配金を合わせたものと考えられます。
2020年3月以降はオプションプレミアムが2%を上回っており、これが2年以上も続いています。【RYLD】は【QYLD】や【XYLD】よりもプレミアムを獲得できていると言えます。
ちなみに、NAVから算出した過去1年分配金(2021年7月から2022年6月)は11.97%で、ほぼ上限の12%です。2021年12月の分配金は上限の1%で計算しました。これが現在の利回りという考え方もできますね。
上の表のオプションプレミアムと分配金をグラフにしました。いずれもNAVに対しての「%」です。例外だった2020年2月以降の分配金は、キャピタルゲインがあった2021年12月を除いて、ほぼ1%です。
獲得したオプション・プレミアムの比較
獲得したオプションプレミアムの比較です。グローバルX社の「GLOBAL X COVERD CALL ETF SUITE」のデータをグラフ化しました。50%カバードコール戦略ETFが設定された2020年9月以降の平均は、カバードコールETFは【RYLD】2.76%、【QYLD】2.57%、【XYLD】1.93%。【DJIA】は2022年3~6月の4回のみで1.83%。50%カバードコール戦略ETFは【QYLG】1.38%、【XYLG】0.92%です。
ラッセル2000を対象とした【RYLD】が、プレミアムを一番獲得しています。ナスダック100対象の【QYLD】【QYLG】は分配金の支払いが上限となる2%や1%を超えています。S&P500の【XYLD】【XYLG】は上限の2%や1%をわずかに下回っています。
オプション・プレミアムとボラティリティの関係
カバードコール戦略はボラティリティが大きいと、プレミアムをたくさん稼ぐことができると言われていますが、本当でしょうか? 下のグラフは、ラッセル2000の近い将来のボラティリティを予測する指数【RVX】と、【RYLD】が獲得したオプション・プレミアムの関係です。
オプション・プレミアムのデータは、分配金の支払われた月に合わせています。
ほぼ連動していますね。オプション・プレミアムが2%を超えるには、【RVX】の値が22ぐらいが目安のようです。2020年3月のコロナショック以降は、ほぼすべての期間で超えています。
2020年以降の利回りは?
2020年4月以降の【RYLD】の株価と利回りを見てみましょう。利回りは、過去1年の年間分配金額から算出しました。青線が株価(左軸)で、赤線が利回り(右軸)です。
2020年3月のコロナ・ショック以降は株価が上がったので、相対的に利回りは下がりました。2021年4月以降は株価が高止まりし、分配金がNAVの上限1%が続いたこともあり、利回りは上がりました。2021年12月は特別な分配金もあったので、過去1年の分配金から出した利回りはさらに上がり、2022年7月1日で14.09%です。
【RYLD】を過去に買っていた場合のYOCは?
過去に【RYLD】を買った場合、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 現在から設定以来までの株価、利回り、YOCを見ていきましょう。
下のグラフの黄色の線が、過去に買った場合の、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)です。この線が左肩上がりの場合は、株価好調&増配傾向にあるといえます。
2022年7月1日の終値は20.58ドル、過去1年の分配金額は2.9002ドルなので、現在の利回りは14.09%です。過去の平均利回りは約11.7%なので、現在は割安の状況です。
設定以来、分配金額は似ているので、株価が下がったときに買うとYOCが上がります。コロナショック時の2020年3月18日に購入していれば、YOCは約19.5%になっていました。
ちなみに利回りは過去1年の分配金から算出しているので、設定から11カ月は出ません。そのため、上のグラフの左端の利回りはありません。
ライバルETFとの比較
【RYLD】はラッセル2000をカバード・コールするETFです。日本で購入可能な主なカバードコール系のETFと比較します。
カバードコールする対象は、【QYLD】がナスダック100、【XYLD】はS&P500、【DJIA】はNYダウです。
そして、【JEPI】はS&P500に近い大型株を約8割を保有。残りの2割弱でELNという仕組債を保有して、カバードコールと似たようなオプション取引を行います。【XYLD】のライバルという位置づけですね。
運用総額は【JEPI】が1.3兆円ほどで、【QYLD】が約9000億円、【RYLD】は1600億円ほどです。経費率は【JEPI】が0.35%と低く、グローバルX社の4ETFは0.6%。ただし、【RYLD】は2023年3月には経費率が0.7%になる予定です。
過去1年分配金から算出した利回りは、通常は【QYLD】【RYLD】が最も高く、【XYLD】【JEPI】の順で続きます。【DJIA】は設定されたばかりなので、何とも言えません。2021年12月の分配金で【QYLD】【RYLD】はキャピタルゲイン分配金を出したため、12カ月利回りが通常より高くなっています。下の表の背景を薄い黄色にしたところです。実際はもう低いと考えられます。
分配金利回り(12カ月)は過去1年の配当から算出したものです。
分配金利回り(直近)は直近の分配金が今度1年続いたものとして算出しました。
カバードコール系ETFの利回り推移
カバードコール系ETF【RYLD】【QYLD】【XYLD】【DJIA】【JEPI】の利回りの変化を見てみましょう。利回りは直近の分配金を1年換算したものから算出しました。株価は月末のものです。
※2021年12月に【RYLD】【QYLD】はキャピタルゲイン分配金を出しました。これを含めて計算するとイメージしづらくなるので、2021年12月分配金は【RYLD】【QYLD】がNAVの上限1%で計算しました
最近数カ月は【RYLD】【QYLD】【XYLD】は12%とほぼ上限ですね。
カバードコール系ETFの利回りを過去1年分配金から算出
先ほどのグラフだと、月によって分配金の変動があるため少しイメージしづらいかもしれません。過去1年の分配金から利回りを算出しました。
【RYLD】と【QYLD】11~12%、【XYLD】9~10%、【JEPI】7~8%ぐらいですね。【DJIA】は設定間もないので何とも言えませんが、10%前後でしょうか。
※このグラフも前項同様に、2021年12月分配金は【RYLD】【QYLD】がNAVの上限1%で計算しました
【RYLD】はどんなETFか?
グローバルX ラッセル2000・カバード・コール ETF【RYLD】は、カバードコール戦略で利益を狙います。米国企業の小型株の集合体である「ラッセル2000インデックス」を保有しながら、「ラッセル2000インデックス」を将来買う権利を売るオプション取引を行います。
将来買う権利を売ることを、「コールオプションの売り」と言います。表の上から2番目の黄色の部分です。
オプションを売ったことで、プレミアムを受け取ることができます。そして獲得したプレミアムは、【RYLD】を保有している投資家に分配金として支払います。この分配金額が多額で、毎月、株価のほぼ1%が最大値です。年利に換算すると12%を目標としています。
ちなみに分配金に支払われた残りは【RYLD】に再投資され、株価の上昇に寄与します。
【RYLD】は2番目のコール・オプション(買う権利)を売るに該当します
対象となるラッセル2000とは何か?
「ラッセル2000インデックス」というのは、米国の株式市場に上場している銘柄の時価総額1001~3000位までの小型株の集合体です。
時価総額1~1000位が「ラッセル1000インデックス」に該当し、これらは規模の大きな中・大型株です。ラッセル1000とラッセル2000を合わせたものが「ラッセル3000インデックス」で、この3000銘柄で米国の時価総額約98%に該当すると言われています。
ちなみに、「ラッセル2000インデックス」を対象としたETFは、バンガード社の【VTWO】、ブラックロック社の【IWM】などがあります。
【QYLD】はナスダック100指数が対象のカバードコールETF、【XYLD】はS&P500が対象のカバードコールETFです。どちらも米国の大型株が対象です。上の三角形の図形の「ラッセル1000」に該当する銘柄に【QYLD】は9割以上、【XYLD】はほぼ100%入ります。
それに対して、小型株中心の【RYLD】はラッセル2000が対象なので、三角の図形の下の部分に100%該当します。つまり、【RYLD】は【QYLD】や【XYLD】とは対象が全く異なると言えます。
プロセスは?
毎月、以下のような手順で取引が行われます。
(1)ラッセル2000インデックスのすべての株式を購入します。
(2)毎月第3金曜日に、1カ月後に満期を迎えるラッセル2000インデックス・オプションを販売します。翌月の第3金曜日が満期です。
(3)オプションの販売と引き換えに、プレミアムを受け取ります。
(4)満期日が過ぎたら、プレミアムの一部を【RYLD】ホルダーに分配します。
(5)翌月以上もこのプロセスが繰り返されます。
プレミアムの価値は?
プレミアムの価格は、次の5つの要因によって決定されます。とくに原資産のボラティリティが上昇すると、オプションの価格も上がる傾向にあります。
(1)原資産価格
(2)オプションの権利行使価格
(3)オプション満期までの残り時間
(4)原資産のボラティリティ
(5)リスクフリーレート(金利)
オプションの権利行使価格は?
オプションの権利行使価格はATM(アット・ザ・マネー)です。原資産価格と権利行使価格が同じです。米国の株価は近年好調だったので、1カ月後に同じ価格で買うことができるのは買い手に有利です。そのためプレミアムの代金はそれなりに高くなります。
権利行使日に価格が上がった場合は、実際の株をやり取りせずに、その差額を支払うことになります。これを差金決済と言います。
※権利を行使すれば利益が出る状態が「イン・ザ・マネー(ITM)」、損失が出る状態が「アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)」、同じ場合は「アット・ザ・マネー(ATM)」です
実際の取引を図で解説
原資産であるラッセル2000インデックスの株価が(1)5%上がる場合、(2)横ばいの場合、(3)5%下がる場合の3パターンで考えてみましょう。
まず前提として、現在の【RYLD】の株価を20ドルとします。原資産であるラッセル2000の株価も同じく20ドルと仮定します。プレミアム(オプション料)はNAVの2%で0.4ドル、【RYLD】のホルダーがもらえるプレミアムはNAVの1%である0.2ドルにします。最近の【RYLD】の株価は20ドル前後、分配金が0.2ドル強なので、妥当なところですね。ちなみにNAVと株価は厳密には異なりますが、ここでは同じとして考えます。
1カ月後の株価が5%上昇した場合
利益はコール・オプションの売却によるプレミアムのみとなります。原資産(ラッセル2000)の上昇による収益は、保有している原資産の上昇と、売却したコール・オプションの値上がりで相殺されます。カバードコール戦略をせずに、ラッセル2000を保有しているだけの方が利益は大きかったですね。
1か月後の株価に変化がなかった場合
1か月後の株価に変化がない場合は、コール・オプションの買い手は権利を行使しません。行使してもしなくても同じですね。獲得したプレミアムの分だけ、【RYLD】は利益が出ます。【RYLD】は原資産(ラッセル2000)のパフォーマンスを上回る可能性があります。
1か月後の株価が5%下落した場合
1か月後の株価が下がった場合は、コール・オプションの買い手は権利を行使しません。RYLDの株価も下がりますが、プレミアムを獲得する分だけ、原資産(ラッセル2000)と比較して損失が軽減されます。
軟調な相場が中長期にわたって続くと、オプションの買い手がいなくなり、プレミアムの価格が下がり、【RYLD】の株価も下がってしまいます。これが【RYLD】にとって考えられる最悪のケースです。
権利行使日の株価とRYLD・原資産(ラッセル2000)の収益の関係
これまでの3パターンをまとめると、このような図になります。横軸が株価で右が高く、縦軸が収益で上が利益が大きいです。つまり、青い線の原資産(ラッセル2000)は、価格が上がれば上がるほど、利益が出るという意味です。
権利行使日の株価が、行使価格とプレミアムの代金の合計よりも低い場合は【RYLD】の方が儲かります。この図だと20.4ドル以下だと、【RYLD】を保有していた方が得という意味です。ただし利益はプレミアムに限定されます。
そして、権利行使日の株価が、行使価格とプレミアムの代金の合計を超えると、超えた分だけ、原資産である「ラッセル2000」利益が増えることになります。
参考サイト
【RYLD】と【QYLD】【XYLD】のセクター比率の比較
【RYLD】に組み込まれている銘柄のセクター別の組込比率です。ラッセル2000の銘柄を保有しますので、【VTWO】【IWM】とほぼ同じです。金融、資本財、ヘルスケアが多く、情報技術、一般消費財と続いています。
【RYLD】は【QYLD】や【XYLD】と比べて、情報技術セクターの割合が少ないです。米国の長期金利が上昇してハイテクが苦戦する場合、【QYLD】と比べるとダメージは少くなりそうです。
【RYLD】の上位組込銘柄は?
【RYLD】の組込上位10銘柄です。ベンチマークは、CBOE ラッセル2000・バイライト・インデックスです。2022年4月上旬は、バンガード社のラッセル2000ETF【VTWO】の保有比率がほぼ100%でしたが、5月以降は【VTWO】が約5割、残りの5割にラッセル2000の個別銘柄を組み込んでいます。
表の右端は、ブラックロック社のiシェアーズ ラッセル2000ETF【IWM】です。1位のETFを除くと順位はほぼ同じで、比率もちょうど半分くらいです。このままETFと個別を半分ずつ保有するのか、それとも現在は移行段階で、最終的には個別銘柄のみになるのかは、わかりません。
※ちなみにバンガード社のETFのデータ更新は月に1回で、月末のものが翌月の半ばごろに更新されます。そのため、バンガード社の【VTWO】の最新データはやや古いものになってしまうので、比較対象としてブラックロック社の【IWM】を使用しました。
運用総額の変化は?
運用総額の変化です。表の上に伸びている緑棒が資金が流入(売れた)、下に伸びている赤棒が資金流出(売られた)です。
過去3年間で14.6億ドル(約1970億円)ほど増えています。ちなみに【QYLD】は76.9億ドル(約1兆3800億円)増えています。※ちなみに現在は急激な円高のため、1ドル135円で換算すると、金額は大きくなります。実際はもっと少ないです
【RYLD】は2021年の後半に入ってからかなり売れていますね。【QYLD】よりも売れ始めたタイミングが遅いですね。
ライバルETFとトータルリターンを比較する
ここからはPORTFOLIO VISUALIZERを使用してバックテストをします。
【RYLD】とカバードコール系ETFでトータルリターンを比較します。 ナスダック100をカバードコールする【QYLD】、S&P500をカバードコールする【XYLD】、そして【RYLD】の原資産であるラッセル2000ETF【VTWO】で比べました。もっとも後発の【RYLD】が設定されたのが2019年4月なので、2019年7月から2022年6月までの3年間を比較します。
2019年7月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合、2022年6月には【RYLD】【XYLD】【VTWO】は1万1400ドルで同じ、【QYLD】は1万800ドルになっていました。ほとんど同じですね。途中まで【VTWO】が優勢でしたが、最近一気に落ちてきています。
ライバルETFと株価推移を比較する
今度は2022年の株価推移を比較します。【VTWO】に代わって、【JEPI】で比較します。
2022年1月に1万ドル投資して分配金を再投資しない場合、2022年6月には【JEPI】が8700ドル、【XYLD】が8500ドル、【RYLD】が8400ドル、【QYLD】が7900ドルになっていました。
ここでも【RYLD】は【XYLD】とほぼ同じです。
トータルリターンを比較
ラッセル2000、ナスダック100、S&P500という3つのカバードコールETF、その原資産、さらに【JEPI】、高配当ETF【VYM】の過去1、2、3年の年平均トータルリターンは以下の通りです。
過去3年では【QQQ】や【VOO】など原資産のリターンがよく、カバードコールETFはやや見劣っています。過去2年は【RYLD】と【VYM】の成績がいいです。過去1年はマイナスが多いですが、【VYM】と【JEPI】が健闘しています。
危険度はどのくらいか?
ETFの安定度を比べてみましょう。最大ドローダウンは、計測期間における最大下落率です。マイナスの数値が小さいほど最大下落率が低いです。
シャープレシオとは、同じリスクを取った場合のリターンです。「(ファンドのリターンー無リスク資産のリターン)÷標準偏差」の値です。
ソルティノレシオはシャープレシオの改良版で、相場が軟調の際の成績を示しています。「(ファンドのリターンー無リスク資産のリターン)÷下方偏差」で計算します。
最大ドローダウンはラッセル2000が対象のカバードコール【RYLD】、その原資産【VTWO】が悪いですね。小型株が対象のため、ボラティリティが激しいと言えます。【QQQ】も最近の暴落が厳しい状況です。
安定度という意味では【JEPI】がいいです。ただし、【JEPI】は設定が浅いので、過去2年のデータです。
主要ETFとの分配金比較は?
2019年7月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合の年間でもらえる分配金の推移です。税金は考慮しません。カバードコールETFと高配当【VYM】を比較します。
3年間の分配金の合計は【QYLD】が3200ドル、【RYLD】が3100ドル、【XYLD】が2500ドル、【VYM】が1000ドルでした。【RYLD】の分配金は【QYLD】とほぼ互角で、なかなか多いですね。
【RYLD】の今後のYOC予想は?
【RYLD】株を2022年7月1日の終値20.58ドルで買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるか予測します。YOC(Yield on Cost)とは、取得価格あたりの利回りのことです。
通常将来YOCは、過去3年増配率や過去5年増配率などを当てはめて計算しますが、カバードコールETFの性質上、過去の増配率の通りに増配する可能性は低いです。そこで、分配金が変化しない、増配率マイナス2%、増配率マイナス4%という3つのケースで検証します。
過去1年の分配金から算出した利回りは14.09%です。ただこれは、2021年12月のキャピタルゲイン分配金も含んでおり、現実よりは少し高い可能性があります。そこで、2021年12月の分配金をNAVの上限1%と仮定して算出した利回り13.77%という条件でも検証します。
「分配金を再投資しない」「分配金を再投資する(税引き後)」の2パターンで検証します
分配金を再投資しない場合のYOC
まずは分配金を再投資しない場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。スタート年は、現在の利回りの14.09%と、利回り13.77%の2パターンあります。
【利回り14.09%スタートの場合】 分配金に変化がない場合は10年後YOC、20年後YOCともに14.09%と変わりません。増配率マイナス2%は10年後YOC11.5%、20年後YOC9.4%。増配率マイナス4%は10年後YOC9.4%、20年後YOC6.2%になります。
【利回り13.77%スタートの場合】 分配金に変化がない場合は10年後YOC、20年後YOCともに13.77%と変わりません。増配率マイナス2%は10年後YOC11.3%、20年後YOC9.2%。増配率マイナス4%は10年後YOC9.2%、20年後YOC6.1%になります。
再投資をしないパターンなので、増配率がマイナスだとYOCは年々減っていきます。
分配金を再投資する場合(税引き後)のYOC
最後に分配金を再投資するケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%で計算します。スタート年のYOCは14.09%の場合は10.15%。13.77%の場合は9.92%になります。
【利回り14.09%スタートの場合】 分配金に変化がない場合は10年後YOC26.7%、20年後YOC70.1%。増配率マイナス2%は10年後YOC20.1%、20年後YOC34.2%。増配率マイナス4%は10年後YOC15.3%、20年後YOC17.6%になります。
【利回り13.77%スタートの場合】 分配金に変化がない場合は10年後YOC25.5%、20年後YOCは65.7%。増配率マイナス2%は10年後YOC19.3%、20年後YOC32.2%。増配率マイナス4%は10年後YOC14.6%、20年後YOC16.7%になります。
増配率がマイナス2%ぐらいなら、再投資していけば将来的にYOCはかなり上がります。
まとめ
【RYLD】の2022年6月分配金は0.2022ドルでした。【RYLD】の原資産であるラッセル2000は小型株が中心でボラティリティが高く、2020年3月以降はプレミアムを2%以上獲得できています。そのため分配金はNAVのほぼ1%が続いています。【QYLD】と比べても、プレミアムを多く獲得できています。
【RYLD】の原資産であるラッセル2000は小型株が中心なので、大型株の【XYLD】、ハイテク大型株が主力の【QYLD】とは対象が異なり、分散効果が多少は見込めそうです。
【RYLD】など超高利回ETFは、ついつい買いすぎてしまうケースが目立ちます。自分のリスク許容度をしっかり把握して、ポートフォリオの数%ぐらいまでとルールを決めたほうがいいかもしれません。