BDC銘柄のメイン・ストリート・キャピタル【MAIN】が2021年11月1日配当を発表しました。これまで0.21ドルだった配当が0.215ドルになります。2.4%の増配です。さらに12月末には特別配当0.1ドルを支払うことが決まりました。
【MAIN】の2021年11月5日の終値は45.55ドル、年間配当は2.58ドルになる予定で、利回りは5.66%です。
※このページでの利回りは直近の配当が1年続いたものと仮定して計算します。なお、特別配当を含めません
BDCとは?
BDCとは「Business Development Company」の略で、銀行から融資を受けられない新興企業や中小企業の事業開発に金融面を中心にサポートする投資会社です。クローズド・エンド型のファンドであり、ニューヨーク証券取引所ナスダック証券取引所などに上場しています。
新興企業は不安定ですが、成長すると莫大な利益をもたらす可能性があります。創業時のグーグルやアップルなどもBDCから支援を受けていました。
BDCに対する規制は?
BDCは利益の90%以上を配当に充てることで、法人税の免除を受けています。そのため高配当を実現できるので、インカム投資家に人気です。REITと似ていますね。
また、資産の70%を法律で定められた適格投資対象にすること、1銘柄当たりの構成比率を全体の25%以下に抑えることなどが定められています。
BDCにはどんな銘柄があるのか?
下の表はBDC銘柄の中から規模の大きいものを選びました。メイン・ストリート・キャピタル【MAIN】は中小企業を中心に投資をしています。
DEレシオは自己資本に対する負債額を示すもので、財務の健全性を測る指標です。BDCの場合は、自己資本の2倍まで借り入れることが可能です。つまり2倍までならレバレッジをかけて商売できるという意味です。ここに挙げた大手BDCは、1倍前後なので、健全といえます。
NAV倍率は資本に対して株価が割高か割安かを示す値です。1より高いと割高になります。メイン・ストリート・キャピタル【MAIN】は1.88なので、結構割高といえます。
利回り(12カ月)は過去1年の配当から算出したものです。
配当利回り(直近)は直近の配当が今度1年続いたものとして算出しました。こちらは特別配当を含んでいません
貸し出しのアセットクラスは?
メインストリート・キャピタル【MAIN】は、テキサス州ヒューストンに本社を置く内部管理型のBDCです。運用資金は51億ドル以上です。
現在の投資先は177社で、その内訳はLMMが70社、プライベートローン69社、ミドルマーケット38社です。投資比率は以下の通りです。
LMMとはLower middle marketのことで、売上高が1000万ドル~1億5000万ドルの企業が対象です。投資先は70社で、フェアバリューは14億9410万ドル。債券投資の99%が第一抵当権付きです。
プライベート・ローンは他のファンドと戦略的提携を行い、非公開企業への第一抵当権付シニアローンが中心です。投資先は69社で、フェアバリューは8億4600万ドル。94%が有担保債務。債券投資の98%が第一抵当権付です。
ミドルマーケットはLMMよりも大規模な企業が対象で、 こちらも第一抵当権付シニアローンが中心です。投資先は38社で、フェアバリューは4億2090万ドル。93%が有担保債務。債券投資の97%が第一抵当権付です。
貸し出しのアセットクラスは?
シニアローンは最上位の第一抵当権付きがほとんどですが、全体では約7割です。エクイティが3割弱とやや多めです。
投資先のセクターは?
投資先のセクターはかなり分散されています。IT関連が少し多いです。
業績と予想
楽天証券のデータです。2021年と2022年はコンセンサスの予想です。売り上げは順調に伸びています。2022年も好調の見通しです。
EPSの予想もまずまずですね。
メイン・ストリート・キャピタル【MAIN】の過去の配当、年間増配率
メイン・ストリート・キャピタル【MAIN】は、毎月配当を支払っています。2022年3月頭に権利落ちを迎える月まで、すでに発表されています。次回の権利落ちは11月23日です。ちなみに、0.215ドルに増配されるのは、その次の1月3日権利落ちからです。
下の表は2016年以降の通常配当の一覧です。背景が水色の部分が増配を意味しています。
権利落ち日を基準にしています。ただし、権利落ち日が翌月頭になる場合、たとえば2021年や2022年の1月などは、前年の12月としてカウントします。
特別配当は?
BDC銘柄は利益のほとんどを配当として支払う義務があります。予想していたよりも業績が良い場合は、利益を特別配当(追加配当)として支払うことがあります。
以下が特別配当です。6月か12月が多いですね。ある程度の余剰金が溜まったら、決算の時期にまとめて支払うイメージですね。今回は0.1ドル。権利落ちは12月21日です。
メイン・ストリート・キャピタル【MAIN】の期別の配当は?
下のグラフは2015年以降の期別の配当です。配当の傾向がイメージしやすいように、6月と12月の特別配当は背景を黒と薄い灰色にして、グラフの一番上に置きました。
2021年は当初0.205ドルだったのが、9月に0.21ドルに増え、さらに12月(厳密には翌年1月の始め)に0.215ドルにアップしました。
メイン・ストリート・キャピタル【MAIN】の年間配当額は?
年間配当の推移です。配当を支払い始めたのは2008年11月からです。2009年8月までは四半期ごとに支払っており、同年9月から毎月の支払になりました。背景が青色の通常配当は、順調に増えているのがわかりますね。
メイン・ストリート・キャピタル【MAIN】の年間増配率額は?
年間増配率の推移です。通常配当のみが対象です。増配率は徐々に減少していますが、2011年以降は毎年増配を続けています。BDC銘柄で毎年増配しているのは珍しいです。
ちなみに2009年は前年と比較してマイナスになっていますが、権利落ち日を基準にしたためです。支払日を基準にすれば、どちらも同額の1.5ドルなので横ばいです。つまり、【MAIN】は減配したことはありません。
メイン・ストリート・キャピタル【MAIN】の株価と配当の関係は?
2009年以降の株価と配当の比較です。こちらも通常配当のみのデータです。どちらも緩やかな右肩上がりと言えます。
最近のメイン・ストリート・キャピタル【MAIN】の株価と利回りは?
2020年1月以降のメイン・ストリート・キャピタル【MAIN】の株価と配当利回りを見てみましょう。青線が株価(左軸)で、赤線が配当利回り(右軸)です。
2020年の年初の配当利回りは約5.7%でしたが、2月半ば以降は急降下したため、3月23日に約15.6%まで上がりました。その後、株価はコロナ・ショック前まで回復して、現在の配当利回りは5.66%です。
現在のメイン・ストリート・キャピタル【MAIN】の株価と利回りの関係は?
年間配当額が現在と同じだったら、株価によって配当利回りはどのように変化するでしょうか。下のグラフは年間配当額が現在と同じ2.58ドルが続いた場合の、配当利回りと株価の相関図です。配当利回りを0.2%ごとに株価を出しました。今後、メイン・ストリート・キャピタル【MAIN】を購入しようと考えている人は、目安にしてください。
過去の利回り、YOC、株価は?
過去にメイン・ストリート・キャピタル【MAIN】を買った場合、現在の購入単価当たりの配当利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 現在から10年前までの株価、配当利回り、YOCを見ていきましょう。株価は月末のもので月1回なので、少しアバウトです。
下のグラフの黄色の線が、過去に買った場合の、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)です。この線が左肩上がりの場合は、株価好調&増配傾向にあるといえます。
2021年11月5日の終値は45.55ドル、年間の配当金額は2.58ドルなので、現在の配当利回りは5.66%です。過去5年の平均配当利回りは約6.8%です。
長期で見ると株価は右肩上がりなので、早い時期に買うとYOCは上がります。2011年12月頃に買っていたら、現在YOCは約13.4%になっていました。
競合銘柄とトータルリターンを比較する
メイン・ストリート・キャピタル【MAIN】と主要BDC銘柄のエイリス・キャピタル【ARCC】、ハーキュリーズ・キャピタル【HTGC】、そしてS&P500ETF【VOO】のトータルリターンを比較します。PORTFOLIO VISUALIZERを使って、2011年11月から2021年10月までの10年間を比べます。税金や手数料は考慮しません。
10年間で【MAIN】が5.4倍、【HTGC】は4.7倍、【VOO】は4.5倍、【ARCC】は3.6倍になっていました。【MAIN】は【VOO】をアウトパフォームしていますね。
過去のトータルリターン
過去3カ月、1、3、5、10年の年平均トータルリターンは以下の通りです。メイン・ストリート・キャピタルの過去10年リターンは18.4%、過去3年や5年は約13.5%です。
過去10年では【VOO】を上回っていますが、3年や5年では下回っています。
危険度はどのくらいか?
ETFの安定度を比べてみましょう。最大ドローダウンは、計測期間における最大下落率です。マイナスの数値が小さいほど最大下落率が低いです。
シャープレシオとは、同じリスクを取った場合のリターンの比較です。「(ファンドのリターン?無リスク資産のリターン)÷標準偏差」の値です。1を超えていれば、優秀です。
ソルティノレシオはシャープレシオの改良版で、相場が軟調の際の成績を示しています。「(ファンドのリターン-無リスク資産のリターン)÷下方偏差」で計算します。1.5を超えていると、素晴らしいです。
【MAIN】の過去リターンはもっとも素晴らしかったですが、これらの値は他の銘柄と比較すると、よくないですね。最大ドローダウン値は悪いです。BDC銘柄はどれも下落率が高いですね。対して【VOO】は安定感があり素晴らしいです。
過去の分配金はどのくらいか?
2011年11月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合の年間にもらえる分配金の推移です。分配金は再投資します。税金は考慮しません。PORTFOLIO VISUALIZERのデータです。
10年間の配当金の合計は【MAIN】が2万2500ドル、【HTGC】が2万1200ドル、【ARCC】が1万6800ドル、【VOO】が4100ドルでした。
BDC銘柄の中で【MAIN】の現在利回りは高くないですが、このデータ集計期間の前半はもう少し高く、しかも着実に増配しているため、配当金は年々増えています。
メインストリート・ キャピタル【MAIN】の今後のYOC予想は?
現在の配当金額(0.215ドル)と1、3、5、10年前の同時期の配当金額(0.205ドル、0.195ドル、0.185ドル、0.135ドル)を比較して年間増配率を計算し、それを使って将来の分配金とYOCを予想しました。YOC(Yield on Cost)とは、購入単価あたりの利回りのことです。【MAIN】株を2021年11月5日の終値45.55ドルで買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。
増配率は過去1年が4.9%、過去3年が3.3%、過去5年が3.1%、過去10年が4.8%でした。現在の利回りは7.47%です。
「配当を再投資しない」「配当を再投資しない(税引き後)」「配当を再投資する」「配当を再投資する(税引き後)」の4パターンで検証します
配当金を再投資しない場合
まずは配当金を再投資しないケースを見てみましょう。税金は考慮しません。スタート年は、現在の利回りの5.66%です。
もっとも増配率の低い過去5年の増配率(3.1%)ペースだと5年後のYOCは6.58%、10年後のYOCは7.65%になります。もっとも成績の良い過去1年の増配率(4.9%)で推移すると5年後のYOCは7.19%、10年後のYOCは9.12%になります。
10年前に購入して配当再投資をしない場合の現在のYOCは約13.4%でしたね(6つ前の画像です)。現在【MAIN】を買って過去10年増配率で推移した場合の10年後予想YOCは9.02%です。
結果が異なるのは、【HTGC】の10年前の利回りが約8.4%だったのに対して、現在の利回りが5.66%と差があるためです。現時点での利回りが高いかどうかが、将来YOCの伸びにとって重要です。
配当金を再投資しない場合(税引き後)
次に配当金を再投資しないケースで、税金を引いた額で計算してみましょう。配当は28%の税金を引いた72%が支払われます。スタート年のYOCは5.66%ではなく、税引き後の4.08%になります。
もっとも増配率の低い過去5年の増配率(3.1%)ペースだと5年後のYOCは4.74%、10年後のYOCは5.51%になります。もっとも成績の良い過去1年の増配率(4.9%)で推移すると5年後のYOCは5.17%、10年後のYOCは6.57%になります。
配当金を再投資する場合
それでは配当金を年1回再投資する場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。再投資する場合の配当は、現在と10年前の株価を比較して年平均騰落率を計算し、それを使って調整します。
もっとも増配率の低い過去5年の増配率(3.1%)ペースだと5年後のYOCは8.59%、10年後のYOCは13.60%になります。もっとも成績の良い過去1年の増配率(4.9%)で推移すると5年後のYOCは9.47%、10年後のYOCは17.03%になります。
配当金を再投資する場合(税引き後)
最後に配当金を再投資するケースで、税金を引いた額で計算してみましょう。配当は28%の税金を引いた72%が支払われます。スタート年のYOCは5.66%ではなく、税引き後の4.08%になります。
もっとも増配率の低い過去5年の増配率(3.1%)ペースだと5年後のYOCは5.75%、10年後のYOCは8.36%になります。もっとも成績の良い過去1年の増配率(4.9%)で推移すると5年後のYOCは6.32%、10年後のYOCは10.33%になります。
【MAIN】は現在の利回りはBDC銘柄の中ではそれほど高くないですが、増配率がまずまずなので、配当再投資をし続ければ、将来YOCは着実に伸びそうです。
まとめ
メインストリート・キャピタル【MAIN】投資先企業の業績が引き続き好調だったため、2021年第3四半期の1株当たりの純資産額は、前期と比べて3.6%増加しました。そのため12月に0.1ドルの追加配当、2022年第1四半期に増配が決定しました。
前回の増配から、わずか3カ月での再度増配となりました。
【MAIN】は過去10年リターンで【VOO】を上回っており、BDCとしては珍しくキャピタルゲインも狙える銘柄です。
2021年11月現在、楽天証券などで取り扱っています。SBI証券やマネックス証券では購入できないのが残念です。