BDC銘柄の最大規模を誇るエイリス・ キャピタル【ARCC】が2022年7月26日に増配を発表しました。これまで0.42ドルだった配当が0.43ドルになります。2.4%の増配です。今年の初めに、年間0.12ドルの追加配当(0.03ドルずつ4回)も決定します。
【ARCC】の2022年7月28日の終値は20.11ドル、年間配当は1.72ドルになる予定で、利回りは8.55%です。
※このページでの利回りは直近の配当が1年続いたものと仮定して計算します。なお、追加配当(特別配当)を含めません
エイリス・キャピタル【ARCC】の過去の配当、年間増配率
エイリス・キャピタル【ARCC】は、年4回の配当を支払っています。ほぼ一定です。次回の配当落ちは9月14日です。背景が黄色の部分は追加配当です。2022年12月は確定していないので、予想です。
過去1年配当は通常配当のみです。「対前期増減率」を見ると、マイナスになったのが、2009年6月の1回だけです。リーマンショックによる減配ですね。
※背景が赤色は、対象月と比較してマイナスという意味です
エイリス・キャピタル【ARCC】の期別の配当は?
下のグラフは期別の配当です。基本的に配当落ちの月を基準にしています。通常配当はリーマン・ショック前の影響で2009年6月に0.35ドルに減ったあと、少しずつ増えています。現在は0.43ドルになり、ようやくリーマンショック前を上回りました。
前回の増配は2022年3月でした。3回続けて、半年後に増配のペースです。
エイリス・キャピタル【ARCC】の年間配当額と年間増配率は?
株価と配当の比較です。株価は2021年を除いて年末のものです。リーマンショック時の2008年に株価は大暴落しましたが、配当は減少は軽微でした。その後株価は急回復し、配当も少しずつ増えていきました。
エイリス・キャピタル【ARCC】の株価と配当の関係は?
配当金と増配率を1年ごとにまとめました。通常配当のみです。ほぼ横ばいで、何年かに一度わずかに増配するペースです。【ARCC】は業績が好調でもあまり通常配当は増やさず、追加配当で対応することが多いです。
最近のエイリス・キャピタル【ARCC】の株価と配当利回りは?
2020年1月以降のエイリス・キャピタル【ARCC】の株価と配当利回りを見てみましょう。青線が株価(左軸)で、赤線が配当利回り(右軸)です。2020年の年初の配当利回りは約8.6%でしたが、2月半ば以降は急降下したため、3月23日に約19.8%まで上がりました。その後、株価はコロナ・ショック前を上回った後は、伸び悩んでいます。2022年7月28日の利回りは8.55%です。
エイリス・キャピタル【ARCC】を過去に買っていた場合のYOCは?
過去にエイリス・キャピタル【ARCC】を買った場合、取得価格あたりの配当利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 現在から10年前までの株価、配当利回り、YOCを見ていきましょう。株価は月末のもので月1回なので、少しアバウトです。
2022年7月28日の終値は20.11ドル、1年配当金額は1.72ドルなので、現在の配当利回りは8.55%です。過去10年の平均配当利回りは約9.2%です。過去10年の株価はあまり変化はなく、増配も少しです。コロナ・ショックの2020年3月頃に買っていたら、現在YOCは約16.0%になっていました。
BDCとは?
BDCとは「Business Development Company」の略で、銀行から融資を受けられない新興企業や中小企業の事業開発に金融面を中心にサポートする投資会社です。クローズド・エンド型のファンドであり、ニューヨーク証券取引所ナスダック証券取引所などに上場しています。
新興企業は不安定ですが、成長すると莫大な利益をもたらす可能性があります。創業時のグーグルやアップルなどもBDCから支援を受けていました。
BDCに対する規制は?
BDCは利益の90%以上を配当に充てることで、法人税の免除を受けています。そのため高配当を実現できるので、インカム投資家に人気です。REITと似ていますね。
また、資産の70%を法律で定められた適格投資対象にすること、1銘柄当たりの構成比率を全体の25%以下に抑えることなどが定められています。
BDCにはどんな銘柄があるのか?
下の表はBDC銘柄の中から規模の大きいものを選びました。【ARCC】は規模が最も大きいです。配当利回りは過去1年の配当から算出したものと、直近の配当を1年分に変換したものの2つを出しました。
DEレシオは自己資本に対する負債額を示すもので、財務の健全性を測る指標です。BDCの場合は、自己資本の2倍まで借り入れることが可能です。つまり2倍までならレバレッジをかけて商売できるという意味です。ここに挙げた大手BDCは、1倍をわずかに超えているぐらいなので、健全といえます。
利回り(12カ月)は過去1年の配当から算出したものです。
配当利回り(直近)は直近の配当が今度1年続いたものとして算出しました。こちらは特別配当を含んでいません
SBI証券や楽天証券など日本の主要証券会社ではBDC銘柄の取り扱いをやめてしまいました。「IG証券」などの海外証券会社なら購入可能です。
貸し出しのアセットクラスは?
第一抵当権のシニアローンは5割弱。若干リスクが高いですね。投資先は452社と、分散は利いています。
投資先のセクターは?
投資先のセクターはかなり細かいですね。ソフトウエア(IT)が23%、ヘルスケアが11%を占めており最多です。それ以外でも商業・専門サービス、金融、保険、資本財、自動車、耐久消費財・アパレルなど、幅広いセクターが対象です。
業績と予想
業績はどうでしょうか? 2021年以外は楽天証券のデータです。2022年はコンセンサスの予想です。売り上げは順調に伸びています。
競合銘柄とトータルリターンを比較する
エイリス・キャピタル【ARCC】と主要BDC銘柄のメイン・ストリート・キャピタル 【MAIN】、ハーキュリーズ・キャピタル【HTGC】、そして高配当ETF【VYM】とトータルリターンを比較します。PORTFOLIO VISUALIZERを使って、2012年7月から2022年6月までの10年間を比べます。
2012年7月に1万ドル投資して配当を再投資した場合、2022年6月には【MAIN】が3万4100ドル、【HTGC】が3万1100ドル、【ARCC】と【VYM】は2万8900ドルになっていました。
ライバル銘柄とのトータルリターン比較
BDC銘柄【ARCC】【PSEC】【MAIN】【HTGC】【NEWT】、カバードコールETF【QYLD】、高配当【VYM】、全米【VTI】の過去1、3、5、10年のトータルリターンを比較しました。現在の利回りは紫の★です。
BDC銘柄はなかなか成績がいいですね。【ARCC】はほとんどの期間で【VYM】を上回り、【VTI】との比較でも互角ですね。
危険度はどのくらいか?
ETFの安定度を比べてみましょう。最大ドローダウンは、計測期間における最大下落率です。マイナスの数値が小さいほど最大下落率が低いです。
シャープレシオとは、同じリスクを取った場合のリターンの比較です。「(ファンドのリターン?無リスク資産のリターン)÷標準偏差」の値です。
ソルティノレシオはシャープレシオの改良版で、相場が軟調の際の成績を示しています。「(ファンドのリターン-無リスク資産のリターン)÷下方偏差」で計算します。
BDC銘柄は全体的に最大ドローダウンが悪いです。コロナ・ショックでかなり暴落しました。金融&超高配当らしいと言えます。シャープレシオやソルティのレシオは【NEWT】以外は【VYM】よりも劣っています。
過去の分配金はどのくらいか?
2012年7月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合の年間にもらえる分配金の推移です。税金は考慮しません。PORTFOLIO VISUALIZERのデータです。
10年間の配当金の合計は【NEWT】が最も多く5万400ドル、【HTGC】が1万9300ドル、【ARCC】と【MAIN】が1万6500ドル、【PSEC】が1万4700ドル、【QYLD】が1万11300ドル(8年間)、【VYM】が6000ドル、【VTI】が3700ドルでした。BDC銘柄はいずれも物凄いインカムですね。
エイリス・キャピタル【ARCC】の今後の配当予想は?
現在の配当金額(0.43ドル)と1、3、5、10年前の同時期の配当金額(0.41ドル、0.4ドル、0.38ドル、0.38ドル)を比較して年間増配率を計算し、それを使って将来の分配金とYOCを予想しました。YOC(Yield on Cost)とは、取得価格あたりの利回りのことです。【ARCC】株を2022年7月28日の終値20.11ドルで買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。
増配率は過去1年が4.9%、過去3年が2.4%、過去5年が2.5%、過去10年が1.2%でした。現在の利回りは8.55%です。
「配当を再投資しない」「配当を再投資する(税引き後)」の2パターンで検証します
配当金を再投資しない場合
まずは配当金を再投資しないケースを見てみましょう。税金は考慮しません。スタート年は、現在の利回りの8.55%です。
もっとも増配率の低い過去10年の増配率(1.2%)ペースだと10年後のYOCは9.7%、20年後のYOCは11.0%になります。もっとも成績の良い過去1年の増配率(4.9%)で推移すると10年後のYOCは13.8%、20年後のYOCは22.2%になります。
配当金を再投資する場合(税引き後)
次に配当金を再投資しないケースで、税金を引いた額で計算してみましょう。配当は28%の税金を引いた72%が支払われます。スタート年のYOCは8.55%ではなく、税引き後の6.16%になります。
それでは配当金を年1回再投資する場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。再投資する場合の配当は、現在と10年前の株価を比較して年平均騰落率(CAGR)を計算し、それを使って調整します。
もっとも増配率の低い過去10年の増配率(1.2%)ペースだと10年後のYOCは12.9%、20年後のYOCは29.5%になります。もっとも成績の良い過去1年の増配率(4.9%)で推移すると10年後のYOCは20.5%、20年後のYOCは104.1%になります。
【ARCC】は増配率はそれほどではありませんが、現在の利回りが高いので、配当再投資し続ければ、将来YOCは着実に伸びそうです。ただし、日本の証券会社では購入できないので、再投資はできません。
まとめ
【ARCC】は前回の増配が2022年3月でした。それから半年でまた増配となりました。好調なのが伺えます。
SBI証券や楽天証券など日本の主要証券会社ではBDC銘柄の取り扱いをやめてしまいました。「IG証券」などの海外証券会社なら購入可能です。