米国株の高配当銘柄を集めたETFは、主に3つあります。バンガード社のバンガード 米国高配当株式ETF【VYM】、ステート・ストリート社のSPDRポートフォリオS&P 500高配当株式ETF【SPYD】、ブラックロック社のiシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF【HDV】です。
この3つのETFの中で、どれを買うと将来配当金がたくさんもらえるのでしょうか? 配当利回りは【SPYD】が高いですが、直近の増配率や株価の上昇度では【VYM】や【HDV】に軍配が上がっているようです。そこで、過去の増配率から将来のYOCを計算します。また、過去のトータルリターンも比較します。
株価チャートの移り変わりは?
下の表は2020年1月以降の株価チャートです。赤色の【VYM】と黄色の【HDV】は、似たような動きで、株価はだいぶ戻ってきています。緑色の【SPYD】は戻りが遅いですね。
配当利回りはどう変化したか?
【SPYD】は元々配当利回りが高かったですが、コロナ・ショックで株価が暴落して回復も遅れたため、現在の配当利回りもかなり高くなっています。【VYM】と【HDV】はコロナ・ショック前の水準に近づいてきました。配当利回りは直近1年の配当金額を元に算出しました。現在の配当利回りは【VYM】が3.53%、【SPYD】が5.90%、【HDV】が4.02%です。
最近3年間の配当をもとに増配率を計算する
2020年6月に支払われた配当を基準に、過去1年間の配当金を計算します。その金額を、さらに1年前、2年前、3年前の年間配当額と比較して、過去1、2、3年の増配率(1年あたり)を求めます。
VYMの過去3年の配当
【VYM】は2020年3月の配当は前年同期比でマイナスでしたが、6月は増えました。過去の増配率は8~10%と安定しています。
期 | その期の配当 | 過去1年配当合計 | 増配率 |
---|---|---|---|
2020年6月 | 0.8368 | 2.9567 | |
2019年6月 | 0.6247 | 2.6869 | 10.04% |
2018年6月 | 0.6302 | 2.4837 | 9.11% |
2017年6月 | 0.5960 | 2.306 | 8.64% |
※上の表の右端の「増配率」は上から過去1年、過去2年、過去3年のものです。CAGRを使って計算します。たとえば、過去3年の増配率は「(2.9567/2.306)^(1/(2020–2017))–1」で8.64%になります
SPYDの過去3年の配当
【SPYD】は2020年6月の配当が前年同期比較で大幅減配になってしまいました。直近の配当が大幅減配になると、過去との比較では厳しい数値になります。そのため、過去1~3年の増配率はいずれも芳しくありません。
期 | その期の配当 | 過去1年配当合計 | 増配率 |
---|---|---|---|
2020年6月 | 0.3657 | 1.7068 | |
2019年6月 | 0.4620 | 1.6955 | 0.67% |
2018年6月 | 0.3761 | 1.7999 | -2.62% |
2017年6月 | 0.3428 | 1.5715 | 2.79% |
HDVの過去3年の配当
【HDV】の最近3年の配当はなかなか安定しています。2020年3月と6月はどちらも前年同期比プラスの配当だったため、素晴らしい増配率になりました。
期 | その期の配当 | 過去1年配当合計 | 増配率 |
---|---|---|---|
2020年6月 | 0.8795 | 3.4303 | |
2019年6月 | 0.7504 | 3.0724 | 11.65% |
2018年6月 | 0.7964 | 3.103 | 5.14% |
2017年6月 | 0.7181 | 2.7843 | 7.20% |
過去1年増配率を使って将来YOCを計算する
それでは、これまで計算した過去の増配率を使って、購入単価当たりの将来の利回り(YOC)がどのように変化するか予測します。最初は、過去1年増配率と同じように増配を続けた場合、将来のYOCがどうなるかを計算しました。
現在の配当利回りは【VYM】が3.53%、【SPYD】が5.90%、【HDV】が4.02%です。過去1年増配率は【VYM】が10.04%、【SPYD】が0.67%、【HDV】が11.65%です。
【HDV】のYOC予想は10年後が12.1%、20年後は36.4%。【VYM】は10年後が9.2%、20年後が24.0%。一方、【SPYD】は10年後が6.3%、20年後は6.7%と伸び悩んでいます。
※将来YOCは、過去1年増配率を使う場合は(現在の配当利回り×(1+過去1年増配率)^何年後)で計算しました。FV関数を使っても計算できます
過去2年増配率を使って将来YOCを計算する
次は、過去2年増配率(1年あたり)を当てはめて、将来のYOCがどうなるかを計算します。過去2年増配率は【VYM】が9.11%、【SPYD】が-2.62%、【HDV】が5.14%です。
【VYM】のYOC予想は10年後が8.5%、20年後は20.2%。【HDV】は10年後が6.6%、20年後が11.0%。一方、【SPYD】は10年後が4.5%、20年後は3.5%と現在より下がっています。
過去3年増配率を使って将来YOCを計算する
最後は、過去3年増配率(1年あたり)を当てはめて、将来のYOCがどうなるかを計算します。過去3年増配率は【VYM】が8.64%、【SPYD】が2.79%、【HDV】が7.20%です。
【VYM】のYOC予想は10年後が8.1%、20年後は18.5%。【HDV】は10年後が8.1%、20年後が16.1%。【SPYD】は10年後が7.8%、20年後は10.2%。これまでとは異なり、【SPYD】はまずまず健闘しました。
トータルリターンを比較する
過去1年のトータルリターンを比較してみましょう。2019年8月に1万ドル投資して配当を再投資した場合、2020年7月末には【VYM】が9500ドル、【HDV】が9100ドル、【SPYD】が7800ドルになっていました。いずれもパフォーマンスがよくないですね。
過去2年のトータルリターンを比較する
今度は過去2年のトータルリターンを比較しました。2018年8月に1万ドル投資して配当を再投資した場合、2020年7月末には【HDV】が1万100ドル、【VYM】が1万ドル、【SPYD】が8100ドルになっていました。過去2年だと【HDV】と【VYM】はトントンですね。
過去3年のトータルリターンを比較する
過去3年のトータルリターンを見てみましょう。2017年8月に1万ドル投資して配当を再投資した場合、2020年7月末には【VYM】が1万1200ドル、【HDV】が1万1000ドル、【SPYD】が9100ドルになっていました。過去3年でも【VYM】と【HDV】は競っていますね。
過去4年のトータルリターンを比較する
それでは過去4年のトータルリターンを比較しました。2016年8月に1万ドル投資して配当を再投資した場合、2020年7月末には【VYM】が1万2600ドル、【HDV】が1万1600ドル、【SPYD】が9800ドルになっていました。少し【VYM】がリードしました。
【HDV】の設定以来でトータルリターンを比較する
【SPYD】が設定されたのは2015年10月なので、過去5年のトータルリターンは比較できません。【HDV】の設定は2011年が3月なので、2011年4月以降の期間で【HDV】と【VYM】のトータルリターンを比較しました。せっかくなので【VOO】もご用意しました。
2011年4月に1万ドル投資して配当を再投資した場合、2020年7月末には【VYM】が2万4400ドル、【HDV】が2万2500ドルでした。あまり差はないですが、ここでも【VYM】が少し上回りました。
ちなみに【VOO】は2万9800ドルでした。2019年の中盤ぐらいまでは、【VYM】と【HDV】は【VOO】と互角でした。この1年で一気に離されました。
まとめ
いかがでしたか? 【SPYD】はコロナ・ショックによるダメージが大きく、株価の戻りが遅く、6月の配当では減配になりました。そのため、YOC予想やトータルリターンでは、【VYM】と【HDV】に劣っています。
ただし、景気上昇局面では【SPYD】のパフォーマンスは悪くないので、今後株価が上昇する場合では期待できるかもしれません。