米国株の高配当銘柄を集めたETFは、主に3つあります。バンガード社のバンガード 米国高配当株式ETF【VYM】、ステート・ストリート社のSPDRポートフォリオS&P 500高配当株式ETF【SPYD】、ブラックロック社のiシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF【HDV】です。
この3つのETFの中で、どれを買うと将来配当金がたくさんもらえるのでしょうか? 過去1、2、3年の増配率から将来のYOCを計算して検証します。
トータルリターンはどうか?
まずは、トータルリターンを比較しました。【VYM】と【HDV】はリターンが似ていますね。一方、【SPYD】はこの2つと比較すると劣っています。
ティッカー | 過去1年 | 過去2年 | 過去3年 | 過去5年 |
---|---|---|---|---|
VYM | 1.9% | 6.3% | 19.7% | 45.8% |
SPYD | -11.6% | -7.1% | 3.1% | 27.4% |
HDV | -1.5% | 11.8% | 17.7% | 42.4% |
株価チャートの移り変わりは?
下の表は2020年1月以降の株価チャートです。赤色の【VYM】と黄色の【HDV】は、ほぼ同じような動きで、株価はだいぶ戻ってきています。緑色の【SPYD】は少し戻りが遅いことがわかりますね。
配当利回りはどう変化したか?
【SPYD】はコロナ・ショックで株価が暴落し、回復するのが遅れたため、現在の配当利回りが高くなっています。【VYM】と【HDV】はコロナ・ショック前の水準にほぼ戻りました。配当利回りは直近1年の配当金額を元に算出しました。現在の配当利回りは【VYM】が3.22%、【SPYD】が5.76%、【HDV】が3.71%です。
最近3年間の配当をもとに増配率を計算する
2020年3月に支払われた配当を基準に、過去1年間の配当金を計算します。その金額を、さらに1年前、2年前、3年前の年間配当額と比較して、過去1、2、3年の増配率を求めます。
VYMの過去3年の配当
【VYM】はこれまでの増配率は高かったのですが、2020年3月が配当が前年同時期と比較して減配となったため、以前と比較すると増配率が今ひとつになりました。
年月 | その期の配当 | 過去1年配当合計 | 増配率 |
---|---|---|---|
2020年3月 | 0.5544 | 2.7446 | |
2019年3月 | 0.6516 | 2.6924 | 1.94% |
2018年3月 | 0.6084 | 2.4495 | 5.85% |
2017年3月 | 0.56 | 2.288 | 6.25% |
※上の表の右端の「増配率」は上から過去1年、過去2年、過去3年と比較した値です。CAGRを使って計算します。たとえば、過去3年の増配率は「(2.7446/2.288)^(1/(2020–2017))–1」で6.25%になります
SPYDの過去3年の配当
【SPYD】はあまり増配率が高くなかったですが、2020年3月の配当が前年同時期と比較して増配したため、過去の増配率も上がりました。
年月 | その期の配当 | 過去1年配当合計 | 増配率 |
---|---|---|---|
2020年3月 | 0.3962 | 1.8031 | |
2019年3月 | 0.3394 | 1.6096 | 12.02% |
2018年3月 | 0.3488 | 1.7666 | 1.03% |
2017年3月 | 0.3176 | 1.5543 | 5.07% |
HDVの過去3年の配当
【HDV】の最近3年の配当は安定しています。2020年3月の配当も前年同時期に比べて増配しました。
年月 | その期の配当 | 過去1年配当合計 | 増配率 |
---|---|---|---|
2020年3月 | 0.9144 | 3.3012 | |
2019年3月 | 0.8221 | 3.1184 | 5.86% |
2018年3月 | 0.7986 | 3.0247 | 4.47% |
2017年3月 | 0.7229 | 2.7456 | 6.34% |
過去1年増配率を使って将来YOCを計算する
それでは、これまで計算した過去の増配率を使って、購入単価当たりの将来の利回り(YOC)がどのように変化するか予測します。最初は、過去1年増配率と同じように増配を続けた場合、将来のYOCがどうなるかを計算しました。
現在の配当利回りは【VYM】が3.22%、【SPYD】が5.76%、【HDV】が3.71%です。過去1年増配率は【VYM】が1.94%、【SPYD】が12.02%、【HDV】が5.86%です。
配当利回り、増配率ともに【SPYD】が圧倒的です。【SPYD】は20年後の2040年にはYOCが50%を超え、30年後の2050年には173%になります。一方、【VYM】は過去1年増配率が低いため、30年後の2050年のYOCは5.72%とあまり変化がありません。
※将来YOCは、過去1年増配率を使う場合は(現在の配当利回り×(1+過去1年増配率)^何年後)で計算しました。FV関数を使っても計算できます
過去2年増配率を使って将来YOCを計算する
次は、過去2年増配率を当てはめて、将来のYOCがどうなるかを計算します。
現在の配当利回りは【VYM】が3.22%、【SPYD】が5.76%、【HDV】が3.71%です。過去2年増配率は【VYM】が5.85%、【SPYD】が1.03%、【HDV】が4.47%です。
【SPYD】は配当利回りは高いですが、増配率が1.03%と低いため、【VYM】には13年後に、【HDV】には14年後に抜かされます。増配率が低すぎると、元々の配当利回りが高くても厳しい結果になるようです。
過去3年増配率を使って将来YOCを計算する
最後は、過去3年増配率を当てはめて、将来のYOCがどうなるかを計算します。
現在の配当利回りは【VYM】が3.22%、【SPYD】が5.76%、【HDV】が3.71%です。過去3年増配率は【VYM】が6.25%、【SPYD】が5.07%、【HDV】が6.34%です。
【SPYD】の増配率は他の2銘柄と比較して1%以上低いですが、元々の配当利回りが高いため、30年経っても抜かされなかったです。買い値の配当利回りが、意外と重要ということを意味しています。増配率の1%の差というのは配当の中での1%なので、それほど大きくないのかもしれませんね。
まとめ
いかがでしたか? 将来のYOCを計算する場合、どの期間の増配率を基準にするかで、結果が大きく異なりました。
現在の配当利回りが高い【SPYD】の結果がよかったですね。ただし現在の【SPYD】は、【VYM】や【HDV】よりも株価が下落して配当利回りが高いので、将来の数値も上がる傾向にあります。また、基準とした過去1年の配当金額は、コロナ・ショックのダメージを受ける前のものです。2020年6月以降の配当は、減配になる可能性がありそうです。
2020年6月の配当金が出そろったら、再び検証してみて、今回の結果と比較してみるのも面白いかもしれません。