バンガード社のETFは公式サイトで月1回更新されます。月末のデータが、翌月の15日頃に反映されます。今回2020年7月末のデータが更新されましたので、バンガード 米国高配当株式ETF【VYM】の組込銘柄の変化や傾向について検証します。
【VYM】のセクター別のファンド構成比は?
【VYM】に組み込まれている銘柄のセクター別の組込比率です。バンガードの公式サイトではICB(Industry Classification Benchmark)で分類されていますが、これをGICS(Global Industry Classification Standard)に変換しました。
金融の割合が最も多く、ヘルスケア、生活必需品、情報技術と続いています。
【VYM】のセクター比率はどう変化したか?
セクター別の組込比率を1カ月前と比較しました。ほとんど変化はありません。生活必需品が0.5ポイント増えて、情報技術が0.6ポイント減りましたが、目立った変化というわけではありません。
【VYM】にはどんな銘柄が組み込まれているのか?
【VYM】の保有銘柄数は426銘柄です。組込銘柄の一覧を円グラフにしました。組込比率1%以上の銘柄が30銘柄あり、全体の約53.8%を占めています。組込比率1%未満は396銘柄で全体の約46.2%、円グラフの白い部分です。
【VYM】の上位組込銘柄はどんな会社か?
【VYM】の組込比率1%以上の銘柄です。ほぼ時価総額の大きい順に並んでいます。連続増配年数は基本的に長いですが、金融、ヘルスケア、情報技術セクターの銘柄は10年前後と比較的短いものも含まれています。データは2020年7月末時点のものです。
過去4カ月の組込比率1%以上の銘柄比較
最近4カ月間の組込比率1%以上の銘柄の比較です。先月との比較では、あまり変化はありません。30番目がギリアド・サイエンシズ【GILD】からユナイテッド・パーセル・サービス【UPS】に変わったぐらいです。
上位組込銘柄で比率が増えたのがファイザー【PFE】で1.89%から2.17%になりました。減ったのはインテル【INTC】で2.64%から2.05%に、エクソン・モービル【XOM】は1.97%から1.80%になりました。
【VYM】上位30銘柄は主要7ETFには組み込まれているのか?
【VYM】の組込比率1%以上の30銘柄は、他のETFには組み込まれているのでしょうか? その一覧が下の表です。左から高配当【VYM】【HDV】【SPYD】、連続増配【VIG】、S&P500【VOO】、米国全体【VTI】、ダウ30平均【DIA】、ナスダック【QQQ】です。表内の数字は組込順位。一番上の行をクリックすると、その項目の順番に並び直します。同じ箇所を続けてクリックすると数値の大小が逆になります。試してください。
※「Tik」はティッカー・コード、「配利」は配当利回りです。配当利回りは2020年7月末の株価から算出しました。【SPYD】は7月の時点で均等に組込、【DIA】は株価の高い順が組込順位なので、この2つの組込順位はあまり重要ではありません。
Tik | 配利 | VYM | HDV | SPYD | VIG | VOO | VTI | DIA | QQQ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
JNJ | 2.8 | 1 | 3 | – | 4 | 7 | 7 | 10 | – |
PG | 2.4 | 2 | – | – | 3 | 9 | 9 | 12 | – |
JPM | 3.7 | 3 | – | – | – | 11 | 14 | 18 | – |
VZ | 4.3 | 4 | 4 | 33 | – | 16 | 16 | 23 | – |
PFE | 4.0 | 5 | 6 | 45 | – | 19 | 20 | 30 | – |
T | 7.0 | 6 | 1 | – | – | 22 | 23 | – | – |
MRK | 3.0 | 7 | 7 | – | – | 23 | 24 | 21 | – |
INTC | 2.8 | 8 | – | – | – | 24 | 25 | 24 | 12 |
CSCO | 3.1 | 9 | 9 | – | – | 25 | 31 | 28 | 15 |
CMCSA | 2.2 | 10 | – | – | 9 | 26 | 26 | – | – |
BAC | 2.9 | 11 | – | – | – | 27 | 27 | – | – |
PEP | 3.0 | 12 | 10 | – | 10 | 28 | 28 | – | 14 |
KO | 3.5 | 13 | 8 | – | – | 30 | 30 | 25 | – |
WMT | 1.7 | 14 | – | – | 2 | 29 | 29 | 13 | – |
XOM | 8.3 | 15 | 2 | 65 | – | 32 | 33 | 27 | – |
ABBV | 5.0 | 16 | – | 69 | – | 34 | 34 | – | – |
CVX | 6.2 | 17 | 5 | 62 | – | 36 | 37 | 20 | – |
MCD | 2.6 | 18 | – | – | 13 | 37 | 38 | 6 | – |
AMGN | 2.6 | 19 | 12 | – | – | 38 | 39 | – | 18 |
NEE | 2.0 | 20 | – | – | 16 | 41 | 42 | – | – |
BMY | 3.1 | 21 | – | – | 17 | 42 | 43 | – | – |
LIN | 1.6 | 22 | – | – | – | 44 | 47 | – | – |
LLY | 2.0 | 23 | – | – | – | 47 | 45 | – | – |
AVGO | 4.1 | 24 | – | 14 | – | 46 | 49 | – | 19 |
PM | 6.1 | 25 | – | 42 | – | 49 | 50 | – | – |
QCOM | 2.5 | 26 | – | – | 20 | 50 | 51 | – | 20 |
TXN | 2.8 | 27 | 13 | – | 22 | 52 | 53 | – | 21 |
IBM | 5.3 | 28 | – | 64 | – | 56 | 57 | 15 | – |
C | 4.1 | 29 | – | – | – | 58 | 59 | – | – |
UPS | 2.8 | 30 | 11 | – | – | 59 | 60 | – | – |
【HDV】の1~13位がすべて【VYM】に入っていました。【HDV】は全76銘柄中73銘柄が【VYM】にも組み込まれており、重複率が高いですね。
【VYM】の上位銘柄30銘柄中、14銘柄が【DIA】に組み込まれていました。【DIA】は全30銘柄中20銘柄が【VYM】にも組み込まれており、こちらも結構重複していますね。
今年に入ってからの配当利回りは?
2020年に入ってからの【VYM】の株価と配当利回りを見てみましょう。過去1年の年間配当額から算出しました。青線が株価(左軸)で、赤線が配当利回り(右軸)です。配当利回りは3.1%前後で推移していましたが、2月半ば以降は株価が下がったため、3月23日には配当利回りが4.5%まで上昇しました。現在は株価がある程度回復して、配当利回りは3.52%です。
【VYM】を過去に買っていた場合のYOCは?
過去に【VYM】を買った場合、現在の購入単価当たりの配当利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 現在から、【VYM】が設定された14年前の2006年頃まで、1年ごと遡って【VTI】を買った場合のYOCと株価を見ていきましょう。
2020年8月14日の終値は83.98ドル、過去1年の配当金額は2.9567ドルなので、現在の配当利回りは約3.5%です。
【VYM】の株価は2018年以降は横ばい、それ以前は右肩上がりで、増配率もなかなかでした。そのため、早い時期に買っていれば、YOCはかなり上がります。約10年前に買っていたら、現在YOCは約8.0%になっていました。10年前に買っていれば、株価とYOC、どちらも約2.3倍になっていました。
【VYM】の今後の配当予想は?
現在の過去1年配当金額(2.9567ドル)と1、3、5、10年前の同時期の過去1年配当金額(2.6869ドル、2.306ドル、2.053ドル、1.08ドル)を比較して年間増配率を計算し、それを使って将来の配当金とYOCを予想しました。YOC(Yield on Cost)とは、購入単価あたりの配当利回りのことです。【VYM】株を2020年8月14日の終値89.98ドルで買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。棒グラフが配当金予想、折れ線グラフがYOC予想です。
年間増配率は過去1年が10.0%、過去3年が8.6%、過去5年が7.6%、過去10年が12.1%でした。現在の配当利回りは3.52%です。もっとも増配率が低い過去5年のペースで増配が続くと10年後のYOCは7.3%、20年後のYOCは15.2%になります。もっとも増配率が高い過去10年の増配と同じだと10年後のYOCは11.0%、20年後のYOCは34.3%になります。現在の配当利回りは高くないですが、増配率はまずまずので、将来のYOCはそれなりに見込めそうです。
まとめ
いかがでしたか? 先月からの変化はあまりありませんでした。
【VYM】は【HDV】と重複している銘柄が多いのは有名ですが、【DIA】とも重なっているのは意外でした。