ブラックロック社のiシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF【HDV】が、2021年9月23日に分配金を発表しました。0.7641ドル(厳密には0.764133ドル)です。1年前の同期は0.8508ドルでしたので、1年前の同期と比べて10.2%減です。
利回りを過去1年間の分配金額から算出すると、2021年9月23日の終値は96.03ドル、過去1年の分配金額は3.3798ドルなので、利回りは3.52%になります。
※このページでの利回りは過去1年間の分配金をもとに計算します。
基本情報を確認しよう
【HDV】は財務が健全かつ持続的に平均以上の配当を支払うことのできる75銘柄を選び、支払った配当額の総額をベースに銘柄の加重を行います。そのため、配当利回りの高い米国の大企業が中心のETFになります。リートは対象外です。四半期に1度、銘柄の入れ替えがあります。
【HDV】と米国の高配当ETF【VYM】【SPYD】【DVY】を比較してみましょう。経費率は【DVY】が少し高いです。利回りは【SPYD】がもっとも高く、運用総額と組込銘柄数は【VYM】が多いですね。
【HDV】のセクター別のファンド構成比は?
【HDV】に組み込まれている銘柄のセクター別の組込比率です。GICS(Global Industry Classification Standard)で分類されています。
【HDV】は9月16日頃に銘柄の入れ替えを行いました。その結果、ヘルスケアが首位になりました。上位銘柄にアッヴィ【ABBV】、ギリアド・サイエンシズ【GILD】が新加入したためです。
また、AT&T【T】が2位に組み込まれた通信サービスも比率を増やしました。生活必需品、公益事業などのセクターは比率を下げています。
【HDV】の上位組込銘柄はどんな会社か?
【HDV】の組込比率1%以上の上位27銘柄です。9月23日のデータです。ベンチマークは、モーニングスター配当フォーカス指数です。上位27銘柄で、全体の87%を占めており、結構集中投資です。
2020年4月以降の上位銘柄は?
上位組込銘柄の1カ月ごとの推移です。【HDV】は毎年3、6、9、12月に組み換えがあります。下の表では銘柄の入れ替えがあったところは、太い線を引こうと思ったら、すべての期間で入れ替えが行われていました。
最新の2021年9月の特徴は、比率1%以上の銘柄が27と増えています。また、ヘルスケア・セクターが今までは4~5銘柄だったのが、6銘柄と最多ですね。
【HDV】上位20銘柄は主要ETFには組み込まれているのか?
【HDV】の組込比率上位20銘柄は、他のETFにどのくらいの割合で組み込まれているのでしょうか? 高配当【SPYD】【HDV】【DVY】【VYM】、連続増配【SDY】【VIG】、市場全体【DIA】【VOO】【VTI】、ハイテク・グロース系【QQQ】【VUG】【VGT】の主要12ETFへの組込比率(%)をまとめました。
背景色のオレンジ色が濃いほど、組込比率が高いことを意味しています。
【HDV】の組込上位銘柄は、すべて【VYM】の上位に組み込まれています。ただし、【HDV】の方が集中投資です。高配当の【SPYD】【DVY】、連続増配【SDY】【VIG】、そしてNYダウ【DIA】とも上位組込銘柄が被っており、様々なジャンルと共通しています。
【HDV】との重複率は【SPYD】が22%、【DVY】23%、【VYM】36%、【SDY】16%、【VIG】が22%、【DIA】は20%、【VOO】が12%、【VTI】10%、【VUG】3%、【QQQ】8%、【VGT】5%です。
重複比率は高配当系はすべて20%を超えており、【VIG】や【DIA】も20%オーバーでした。
※組込比率は、バンガード社のETFは2021年8月末、【HDV】は9月22日、その他のETFは9月14日頃のデータをもとにしています。【DIA】は株価の高い銘柄が比率が高くなり、【SPYD】は均等平均加重組入なので、これらのETFの組込比率はあまり重要ではありません。
主要ETFの並び順は基本的に左端が最も利回りが高く、右に行くにつれて下がっていきます。ただし、【VGT】は少し毛色が異なるセクターETFなので、右端にしました。主要ETFのティッカー・コードの下の数字は9月17日の利回り(%)です。
【HDV】の過去の分配金と増配率は?
【HDV】が設定されたのは2011年3月です。下の表は過去の分配金の一覧です。
今回の【HDV】の分配金が増配or減配なのかは、どのデータを比較するかによって異なります。もっともオーソドックスなのは、前年の同期との分配金額の比較です。今回が0.7641ドル、前年の同期が0.8508ドルなので10.2%の減配になります。また、前年同期との過去1年分配金額の比較では、今回が3.3798ドル、前年の同期が3.4237ドルなので、1.3%減配となります。
※背景が赤になっているのが減配です
【HDV】の期別分配金は?
コロナ・ショックがあったにもかかわらず、2020年の分配金は大きく伸びました。2021年に入ってからの分配金は3回とも前年同期を下回っています。前々年と同じくらいのペースです。
【HDV】の年間分配金額と年間増配率は?
【HDV】の分配金を1年ごとにまとめてグラフ化しました。2016年以外は増配を続けており、増配率もなかなか高いです。ただし、2021年は前年を上回れるかは微妙です。
【HDV】の分配金額を棒グラフで確認しよう
期ごとの分配金額を株価と比較しました。最近は期によって少し差が出てきています。長期で見ると堅調に推移していましたが、直近は下降しています。
【HDV】の過去1年分配金額を棒グラフで確認しよう
過去1年分配金額を棒グラフにして、【HDV】の株価と比較しました。過去1年分配金額は、株価とある程度連動しています。2013年以降の過去1年分配金は、上昇とやや低迷を3回繰り返していますね。
2020年以降の利回りは?
2020年に入ってからの【HDV】の株価と利回りを見てみましょう。利回りは、過去1年の年間分配金額から算出しました。青線が株価(左軸)で、赤線が利回り(右軸)です。利回りは2020年の年初は3.4%前後で推移していましたが、2月半ば以降は株価が急落し、3月23日には利回りが5.18%まで上昇しました。現在は株価がコロナ・ショック前と同水準まで戻り、利回りは3.52%です。
現在の【HDV】の株価と利回りの関係は?
年間分配金額が現在と同じく3.3798ドルで変わらなかったら、利回りはどのように変化するでしょうか。下のグラフは年間分配金額が現在と同じ3.3798ドルが続いた場合の、利回りと株価の相関図です。利回りを0.1%ごとに株価を出しました。今後【HDV】を購入しようと考えている人は、目安にしてください。
【HDV】を過去に買っていた場合のYOCは?
過去に【HDV】を買った場合、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 現在から10年前までの株価、利回り、YOCを見ていきましょう。株価は月末のもので月1回なので、ややアバウトです。
下のグラフの黄色の線が、過去に買った場合の、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)です。この線が左肩上がりの場合は、株価好調&増配傾向にあるといえます。
2021年9月23日の終値は96.03ドル、過去1年の分配金金額は3.3798ドルなので、現在の利回りは3.52%です。過去10年の平均利回りは約3.4%です。
9年前と比較して株価は若干上がっていて、増配もしていますので、早い時期に買った方がYOCは上がります。2011年10月に買っていたら、現在YOCは約6.4%になっていました。また、株価が暴落したコロナ・ショック時の2020年3月に買っていればYOCは4.7%前後まで上がっています。
ちなみに利回りは過去1年の分配金から算出しているので、設定から1年間は出ません。【HDV】が設定されたのが2011年3月なので、上のグラフの左端の利回りはありません。
ライバルETFとトータルリターンを比較する
【HDV】とライバルの高配当ETF【VYM】【DVY】【DHS】とトータルリターンを比較します。PORTFOLIO VISUALIZERを使って、2011年9月から2021年8月までの10年間を比べます。
2011年9月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合、2021年8月には【VYM】が3万4600ドル、【DVY】が3万2900ドル、【DHS】が2万8700ドル、【HDV】が2万7100ドルになっていました。【HDV】はこの中では一番成績が悪いですね。
過去のトータルリターン
過去3カ月、1、3、5年、10年の年平均トータルリターンは以下の通りです。過去10年のリターン(年平均)は、【VYM】が13.2%、【DVY】は12.7%、【DHS】が11.1%、【HDV】は10.5%でした。
危険度はどのくらいか?
ETFの安定度を比べてみましょう。最大ドローダウンは、計測期間における最大下落率です。マイナスの数値が小さいほど最大下落率が低いです。
シャープレシオとは、同じリスクを取った場合のリターンの比較です。「(ファンドのリターン?無リスク資産のリターン)÷標準偏差」の値です。1を超えていれば、優秀です。
ソルティノレシオはシャープレシオの改良版で、相場が軟調の際の成績を示しています。「(ファンドのリターン-無リスク資産のリターン)÷下方偏差」で計算します。1.5を超えていると、素晴らしいです。
【HDV】は財務が健全な高配当を組み込んでいるわりに、ソルティノレシオの値は良くないですね。最大ドローダウンも今ひとつです。
過去の分配金はどのくらいか?
2011年9月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合の年間でもらえる分配金の推移です。分配金は再投資します。税金は考慮しません。PORTFOLIO VISUALIZERのデータです。
10年間の配当金の合計は【DHS】が6200ドル、【DVY】が6100ドル、【HDV】が6000ドル、【VYM】が5800ドルでした。似たような金額ですが、【HDV】は思ったほどよくないですね。
ちなみに【SPYD】【HDV】【VYM】【DVY】を過去5年リターンなどで比較したデータは【SPYD】の記事でやっています。
【HDV】の今後のYOC予想は?
現在の過去1年分配金額(3.3798ドル)と1、3、5、7年前の同時期の過去1年分配金額(3.4237ドル、3.1624ドル、2.7595ドル、2.3654ドル)を比較して年間増配率を計算し、それを使って将来YOCを予想します。YOC(Yield on Cost)とは、購入単価あたりの利回りのことです。【HDV】株を2021年9月23日の終値96.03ドルで買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。
年間増配率は過去1年がマイナス1.3%、過去3年が2.2%、過去5年が4.1%、過去7年が5.2%でした。現在の利回りは3.52%です。
「分配金を再投資しない」「分配金を再投資しない(税引き後)」「分配金を再投資する」「分配金を再投資する(税引き後)」の4パターンで検証します
分配金を再投資しない場合のYOC
まずは分配金を再投資しない場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。スタート年は、現在の利回りの3.52%です。
もっとも増配率の低い過去1年の増配率(-1.3%)で推移すると、5年後のYOCは3.30%、10年後のYOCは3.09%になります。もっとも成績の良い過去7年の増配率(5.2%)で推移すると5年後のYOCは4.54%ドル、10年後のYOCは5.86%です。
分配金を再投資しない場合(税引き後)のYOC
次に分配金を再投資しないケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%が支払われます。スタート年のYOCは3.52%ではなく、税引き後の2.53%になります。
もっとも増配率の低い過去1年の増配率(-1.3%)で推移すると、5年後のYOCは2.38%、10年後のYOCは2.23%になります。もっとも成績の良い過去7年の増配率(5.2%)で推移すると5年後のYOCは3.27%ドル、10年後のYOCは4.22%です。
分配金を再投資する場合のYOC
それでは分配金を年1回再投資する場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。再投資する分配金額は、現在と7年前の株価を比較して年平均騰落率を計算し、それを使って調整します。
もっとも増配率の低い過去1年の増配率(-1.3%)で推移すると、5年後のYOCは3.88%、10年後のYOCは4.24%になります。もっとも成績の良い過去7年の増配率(5.2%)で推移すると5年後のYOCは5.46%ドル、10年後のYOCは8.94%です。
分配金を再投資する場合(税引き後)のYOC
最後に分配金を再投資するケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%が支払われます。スタート年のYOCは3.52%ではなく、税引き後の2.53%になります。
もっとも増配率の低い過去1年の増配率(-1.3%)で推移すると、5年後のYOCは2.67%、10年後のYOCは2.80%になります。もっとも成績の良い過去7年の増配率(5.2%)で推移すると5年後のYOCは3.74%ドル、10年後のYOCは5.73%です。
まとめ
【HDV】は2020年の分配金は素晴らしかったのですが、2021年に入ってから前年を下回っています。2021年3月の銘柄入れ替えで、利回りの高いAT&T【T】が除外になった影響があるかもしれません。2021年9月の入れ替えでAT&T【T】は復帰したので、次回の分配金は期待できそうです。
なお、次回は12月13日が権利落ちで、その前日が分配金の発表となりそうです。