グローバルX S&P500・カバード・コール ETF【XYLD】が2021年2月18日に分配金を発表しました。0.4835ドル(厳密には0.483528ドル)です。
1年前の同期は0.3596ドルでしたので、1年前の同期との比較では34.5%増です。前回2022年1月の分配金は0.4808ドルなので、先月との比較では0.6%増です。
2022年3月1日の終値は47.54ドル、過去1年の分配金は4.7119ドルなので、利回りは9.91%になります。
※このページでの利回りは、過去1年間の分配金をもとに計算します。
【XYLD】の過去の分配金と増配率は?
【XYLD】が設定されたのは2013年6月です。下の表は過去の配当金の一覧です。2020年9月以降は、一番右側の列の「過去1年分配金の対前年同期増減率」がプラスになっており好調が続いています。
※背景が赤になっているのが対象月と比べてマイナスです
【XYLD】の毎月の分配金は?
2017年まではかなり不安定ですね。年末の12月だけ多かったのは、税金の関係でキャピタル・ゲイン分配金をまとめて支払ったからです。
2018年以降は安定しており、毎月0.2ドル台でほぼ推移していました。2020年8月に0.3920ドルと増えたのは、ベンチマークを変更したためです。
なぜ分配金は安定していないのか?
公式サイトには以下の補足がありました。
2018年1月と2020年8月を境に分配金額に大きな変化が出たことは、ベンチマークを替えたことが影響していると考えられます。
そんなわけで、2020年7月以前のデータはあまり参考にならないかもしれません。
【XYLD】の分配金と株価の関係は?
下のグラフは2019年6月以降の、期ごとの分配金と株価の関係です。【XYLD】の分配金の上限はNAVの1%です。株価とNAVはだいたい同じです。そこで、現在のベンチマークになった2020年8月以降の株価と分配金を比較します。株価は権利落ちの終値です。
グラフの分配金と株価は単位が2桁異なりますので、株価(赤線)が分配金の上限1%の目安となります。分配金は株価の1%にほぼ収まっています。
株価は45~50ドルの間に収まることが多く、やや上昇しています。分配金は0.33~0.50ドルです。直近2回はかなり多いですね。ほぼ株価と同じなので、2%のプレミアムを獲得できた可能性が高いです。
【XYLD】の分配金と株価の関係は?
年間分配金と株価を1年ごとにまとめました。2021年の分配金は前年2020年と比べると24.5%増えました。株価はやや右肩上がりです。株価は年末のものです。
【XYLD】の年間増配率は?
年間増配率はバラつきがありますが、増加傾向です。2年続けて前年より約25%も増えており好調です。
2020年以降の利回りは?
2020年以降の【XYLD】の株価と利回りを見てみましょう。利回りは、過去1年の年間分配金額から算出しました。青線が株価(左軸)で、赤線が利回り(右軸)です。
2020年の年初の利回りは約5.7%で推移していましたが、2月半ば以降はコロナ・ショックで株価が下がったため、3月23日には利回りが約8.4%まで上昇しました。現在の株価はコロナ・ショック前とほぼ同じ水準です。
インデックスが変更されて分配金が現在の水準になったが2020年8月です。過去1年分配金から利回りを算出していますので、その1年後の2021年7月頃より利回りは現在と同水準になりました。現在の利回りは9.91%です。
【XYLD】を過去に買っていた場合のYOCは?
過去に【XYLD】を買った場合、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 現在から8年8カ月前までの株価、利回り、YOCを見ていきましょう。株価は月末のもので月1回なので、ややアバウトです。
下のグラフの黄色の線が、過去に買った場合の、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)です。この線が左肩上がりの場合は、株価好調&増配傾向にあるといえます。
2022年3月2日の終値は47.54ドル、過去1年の分配金額は4.7119ドルなので、現在の利回りは9.91%です。過去7年10カ月の平均利回りは約6.0%です。
現在の株価は設定時より少し高いのでで、早く買っていればYOCは多少は上がります。2016年1月に買っていればYOCは11.7%になっていました。また、コロナショック時の2020年3月に購入していれば、YOCは約12.3%になっていました。
ちなみに利回りは過去1年の分配金から算出しているので、設定から11カ月は出ません。そのため、上のグラフの左端の利回りはありません。
ライバルETFとの比較
【XYLD】と日本で購入可能なカバードコール系のETFの比較です。
【XYLD】、【XYLG】はS&P500が対象です。【XYLG】は50%カバードコールなので、利回りは【XYLD】の約半分ですが、値上がり益も狙えます。
【QYLD】、【QYLG】はナスダック100が対象です。【QYLG】も50%カバードコールなので、利回りは【QYLD】の約半分で、値上がり益が期待できます。
【JEPI】はS&P500に近い大型株を約8割を保有。残りの2割弱でELNという仕組債を保有して、カバードコールと似たようなオプション取引を行います。
過去1年分配金から算出した利回りは、通常は【QYLD】【XYLD】【JEPI】の順で高いです。ただし、2021年12月の分配金は、50%カバードコールETFの【QYLG】と【XYLG】がキャピタルゲインが莫大だったため、とてつもない金額になりました。現在この両銘柄の「分配金利回り(12カ月)」は通常よりかなり高い状態です。【QYLG】と【XYLG】の利回りは「分配金利回り(直近)」の方が現実的です。
分配金利回り(12カ月)は過去1年の配当から算出したものです。
分配金利回り(直近)は直近の分配金が今度1年続いたものとして算出しました
カバードコール系ETFの利回り推移
カバードコール系ETFの2021年12月の分配金はいずれも好調でした。とくに【QYLG】【XYLG】は凄まじい額だったので、直近の分配金を1年換算して株価で割って利回りを求めると、以下のグラフのような推移になります。
【JEPI】は2021年の前半は分配金が少なかったですが、最近は回復傾向です。
※上に突き抜けている2021年12月の【QYLG】の数値は59.9%、【XYLG】は41.8%、【QYLD】は26.9%です。
カバードコール系ETFの利回りを過去1年分配金から算出
先ほどのグラフだと、少しイメージしづらいかもしれません。過去1年の分配金から利回りを算出しました。【QYLG】【XYLG】は2021年12月が凄まじかったので、過去1年からの利回りでも、爆上げしています。
2021年9~11月ぐらいのデータが、最近の利回りの目安かなと思います。つまり【QYLD】11%、【XYLD】9%、【JEPI】7%、【QYLG】5.5%、【XYLG】4.5%ぐらいですね。【QRMI】と【XRMI】は設定間もないので、何とも言えないですね。
【XYLD】はどんなETFか?
【QYLD】はオプション取引を行って利益を狙います。オプション取引というのは保険料みたいなものです。
オプションの中でも、カバード・コール戦略という方法を取ります。S&P500インデックスを保有しながら、S&P500インデックスを将来買う権利を売ります。
将来買う権利を売ることを、「コール・オプションの売り」と言います。表の上から2番目の黄色の部分です。
オプションを売ったことで、プレミアムを受け取ることができます。そして獲得したプレミアムは、【XYLD】ホルダーに分配金として支払います。この分配金額が多額で、毎月、株価のほぼ1%が最大値です。年利に換算すると12%を目標としています。
S&P500という米国を代表する500社の値上がり益をオプション代に変換して、それを分配金にするというのが【XYLD】のイメージです。
ちなみに分配金に支払われた残りは【XYLD】に再投資され、株価の上昇に寄与します。
【XYLD】は2番目のコール・オプション(買う権利)を売るに該当します
プロセスは?
以下のような手順で行われます。
(1)S&P500指数のすべての株式を購入します。
(2)毎月第3金曜日に、1カ月後に満期を迎える S&P500 Index オプションを販売します。翌月の第3木曜日が満期です。
(3)インデックスオプションの販売と引き換えに、プレミアムを受け取ります。
(4)満期日が過ぎたら、プレミアムの一部を【XYLD】ホルダーに分配します。
(5)翌月以上、このプロセスが繰り返されます。
プレミアムの価値は?
プレミアムの価格は、次の5つの要因によって決定されます。
(1)現在の資産価格
(2)オプションの権利行使価格
(3)オプション満期までの残り時間
(4)原資産のボラティリティ
(5)リスクフリーレート(金利)
オプションの権利行使価格は?
オプションの権利行使価格はATM(アット・ザ・マネー)です。原資産価格と権利行使価格が同じです。S&P500は近年好調だったので、1カ月後に同じ価格で買うことができるのは買い手に有利です。そのためプレミアムの代金はそれなりに高くなります。
権利行使日に価格が上がった場合は、実際の株をやり取りせずに、その差額を支払うことになります。これを差金決済と言います。
ただし、保有している原資産も値上がりしているので、その分をカバーできるという意味でカバード・コールと言います。
※権利を行使すれば利益が出る状態が「イン・ザ・マネー(ITM)」、損失が出る状態が「アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)」、同じ場合は「アット・ザ・マネー(ATM)」です
実際の取引を図で解説
原資産であるS&P500インデックスの株価が(1)5%上がる場合、(2)横ばいの場合、(3)5%下がる場合の3パターンで考えてみましょう。
まず前提として、現在の【XYLD】の株価を50ドルとします。原資産であるナスダック100の株価も同じく50ドルと仮定します。プレミアム(オプション料)はNAVの2%で1ドル、【XYLD】のホルダーがもらえるプレミアムはNAVの1%である0.5ドルにします。最近の【XYLD】の株価は50ドル前後、分配金が0.5ドル弱なので、妥当なところですね。ちなみにNAVと株価は厳密には異なりますが、ここでは同じとして考えます。
1カ月後の株価が5%上昇した場合
利益はコール・オプションの売却によるプレミアムのみとなります。原資産(S&P500)の上昇による収益は、保有している原資産の上昇と、売却したコール・オプションの値上がりで相殺されます。カバードコール戦略をせずに、S&P500を保有しているだけの方が利益は大きかったですね。
1か月後の株価に変化がなかった場合
1か月後の株価に変化がない場合は、コール・オプションの買い手は権利を行使しません。行使してもしなくても同じですね。獲得したプレミアムの分だけ、【XYLD】は利益が出ます。【XYLD】は原資産(S&P500)のパフォーマンスを上回る可能性があります。
1か月後の株価が5%下落した場合
1か月後の株価が下がった場合は、コール・オプションの買い手は権利を行使しません。XYLDの株価も下がりますが、プレミアムを獲得する分だけ、原資産(S&P500)と比較して損失が軽減されます。
軟調な相場が中長期にわたって続くと、オプションの買い手がいなくなり、プレミアムの価格が下がり、【XYLD】の株価も下がってしまいます。これが【XYLD】にとって考えられる最悪のケースです。
権利行使日の株価とXYLD・原資産(S&P500)の収益の関係
これまでの3パターンをまとめると、以下のような図になります。権利行使日の株価が、行使価格にプレミアムの代金を加えた株価よりも低い場合は、XYLDの方が儲かります(もしくは損失が少ない)。ただし利益はプレミアムに限定されます。
そして、権利行使日の株価が、行使価格にプレミアムの代金を加えた株価を超えると、超えた分だけ、S&P500の利益が増えるというわけですね。
分配金額の決め方
【XYLD】の毎月の分配金は、(1)純資産価値(NAV)の1%、(2)受け取ったオプション・プレミアムの半分、のいずれか低い方を上限とします。受け取ったオプション・プレミアムに超過分がある場合は、ファンドに再投資されます。
オプション・プレミアムが好調で2%を超えていたケースは、オプション・プレミアムの半分が1%を超えるので(1)となり、分配金はNAVの1%になります。下の表の背景色のついていない箇所です。
(2)はオプション・プレミアムが2%を下回った場合です。オプション・プレミアムの半分になるので、分配金はNAVの1%未満になります。下の表の背景が緑色の箇所が、オプションプレミアムが2%を下回っていたケースです。NAVに対して1%未満になるので、(1)より少ないですね。下の表の背景色が黄色の割合になります。
ただし(2)オプション・プレミアムが2%を下回った場合はオプション・プレミアムのちょうど半分の50%ではないようです。下の表の背景がオレンジ色の箇所が比率です。48~50%のようです。
また、2021年7月や2022年1月のように、オプション・プレミアムが2%を上回っていても、分配金が1%ではないケースもあるようです。
ちなみに、NAVと株価はほぼ同じです。オプション・プレミアムを2%以上獲得できていれば、株価の1%ぐらいが分配金の目安と言えそうです。つまり、毎月株価のほぼ1%が上限なので、年間の利回りの最高値は12%になります。
ベンチマークが入れ替わったタイミングに赤い線を引きました。2020年7月以前のデータは、獲得したプレミアムが少ないですね。2020年8月以降はプレミアムを1.5%ぐらいは獲得できています。直近3回は分配金額が多く、獲得プレミアムは2%前後のようです。
上の表のオプションプレミアムと分配金をグラフにしました。いずれもNAVに対しての「%」です。分配金額(ドル)ではありません。ベンチマークを変更した2020年8月以降の分配金は0.7~1%ぐらいで安定しています。変更前の分配金は0.5%と、MAXの半分が続いていました。
オプション・プレミアムとボラティリティの関係
カバードコール戦略はボラティリティが大きいと、プレミアムをたくさん稼ぐことができると言われていますが、本当でしょうか? 下のグラフは、S&P500の近い将来のボラティリティを予測する指数【VIX】と、【XYLD】が獲得したオプション・プレミアムの関係です。
2020年8月以降は、連動していますね。ベンチマークを現在のものに変更してからは安定しています。2020年2月以前はオプションが1%を下回っており不調です。それゆえ、ベンチマークを変更した可能性が考えられます。
オプション・プレミアムが2%を超えることはあまりないですが、ベンチマーク変更後は1.5%ぐらいは獲得しています。【VIX】の値が30ぐらいが、オプション・プレミアムがMAXの2%になりそうです。
ベンチマーク変更の効果は?
過去3年の運用総額の変化を見てみましょう。グラフの上が【XYLD】、下が【QYLD】です。表の上に伸びている緑棒が資金が流入(売れた)、下に伸びている赤棒が資金流出(売られた)です。ETF DATABASEのデータです。
以前のベンチマークだった2020年8月より前は、売れ行きはあまりよくありません。同時期の【QYLD】と比較しても顕著に表れています。
ベンチマークを変更した後、分配金が0.4ドル前後で安定したのが確認されると、売れ行きが好調に転じたと考えられます。
3年間の売れ行きは10億ドルなので1100億円ほどです。【QYLD】の1/6ぐらいですね。
参考サイト
【XYLD】の財務は健全か?
【XYLD】は財務面では安全でしょうか。下のデータはグローバルX社の公式サイトにある年次報告書に日本語訳をつけたものです。期首が11月頭で期末が10月末です。
赤い文字のところを、下の表のようにまとめました。【XYLD】の1株あたりのデータです。期首が11月で、期末が10月末です。「A」期首純資産額は前年11月1日のNAVです。株価とほぼ同じです。「B」運用による合計が保有額の含み損や獲得したオプションプレミアム。「F」分配による合計は支払った分配金。AにBを足して、Fを引くと、「G」期末純資産額になります。つまり1年後の10月末のNAV=株価です。
薄いオレンジ色の「B」運用による合計というのが、オプション・プレミアムなどの利益です。バラつきがありますね。
2020年の「B」運用による合計はマイナスです。コロナ・ショックの株価暴落の際に、運用がうまくいかなかった可能性などが考えられます。
ただ、それ以外の年は損益がプラスが多いですね。損益はこの6年間で7.26ドルのプラスです。この5年間の分配金の合計は17.08ドルなので、それを合わせて計算すると、かなり好調ですね。
2021年は「B」運用による合計が12.53と好調でした。トータルリターンは約30.7%もプラスです。
【XYLD】のセクター比率は?
【XYLD】に組み込まれている銘柄のセクター別の組込比率です。S&P500の銘柄を保有しますので、【VOO】とほぼ同じです。情報技術の割合が多く3割弱、ヘルスケアと一般消費財、金融、通信サービスが1割強で続いています。
【XYLD】の上位組込銘柄は?
【XYLD】の組込比率1%以上の銘柄です。ベンチマークは、Cboe S&P 500 バイライト・インデックスです。組込上位10銘柄で30%を占めています。
S&P500をカバードコールするので、中身はETFの【SPY】【VOO】などとほぼ同じです。【SPY】との上位銘柄の組込比率は、ほとんど差がないですね。
【XYLD】と【JEPI】を比較する
【XYLD】とライバルETFと言われるJPモルガン エクイティ プレミアム ETF【JEPI】を比較します。【JEPI】が設定されたのが2020年5月、【XYLD】が現在のベンチマークになったのが2020年8月なので、2020年9月1日から2022年3月1日までの1年6カ月間を比べます。
株価の上昇率はどうか?
【XYLD】の終値は2020年9月1日が45.10ドル、2022年3月1日が47.54ドルでした。この期間で1.05倍に増えました。
対して【JEPI】の終値は2020年9月1日が53.48ドル、2022年3月1日が58.79ドルでした。この期間で1.10倍になりました。
株価上昇が期待できる【JEPI】が優勢です。ただ、【XYLD】が健闘したとも言えます。
利回りはどうか?
利回りを比較します。支払った分配金を12倍して株価で除して計算します。過去1年利回りではなく、現時点での利回りで比較します。
この期間における【XYLD】の平均利回りは10.1%。対して【JEPI】は8.0%でした。【XYLD】が約2%上回っています。
トータルリターンはどうか?
トータルリターンを比較します。2020年9月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合、2022年2月には【JEPI】が1万2500ドル、【XYLD】が1万2400ドルで、ほぼ互角です。推移を見ても似ていますね。
カバードコール系ETFとトータルリターンを比較する
PORTFOLIO VISUALIZERを使用して、【XYLD】とカバードコール系ETFのトータルリターンを比較します。 S&P500を50%カバードコールする【XYLG】、ナスダック100をカバードコールする【XYLD】、ナスダック100を50%カバードコールする【QYLG】で比べました。2014年3月から2022年2月までの8年間を比較します。
【XYLG】や【QYLG】は設定から1年ほどしか経っていません。【XYLG】は【XYLD】と【VOO】を50%ずつ、【QYLG】は【QYLD】と【QQQ】を50%ずつという比率にしてテストをしました。
2014年3月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合、2022年2月には【QYLG】が2万7500ドル、【XYLG】が2万2000ドル、【QYLD】が1万7600ドル、【XYLD】が1万7400ドルになっていました。
過去のトータルリターン
カバードコールETF5種類【XYLD】【XYLG】【QYLD】【QYLG】【JEPI】と、その原資産であるナスダック100ETF【QQQ】、S&P500ETF【VOO】、さらに高配当ETF【VYM】のトータルリターンを比較します。
PORTFOLIO VISUALIZERを使い、過去1、3、5、8年を比べます。
いずれの期間でも【QQQ】のリターンがいいですね。【VOO】と【QYLG】が続いています。ジャンル別に見ると、カバードコール100%よりも50%の方が成績が良く、もっとも成績が良いのは原資産の【QQQ】や【VOO】ですね。「ナスダック100」や「S&P500」の中で比較すると歴然としています。
危険度はどのくらいか?
ETFの安定度を比べてみましょう。最大ドローダウンは、計測期間における最大下落率です。マイナスの数値が小さいほど最大下落率が低いです。
シャープレシオとは、同じリスクを取った場合のリターンの比較です。「(ファンドのリターン?無リスク資産のリターン)÷標準偏差」の値です。
ソルティノレシオはシャープレシオの改良版で、相場が軟調の際の成績を示しています。「(ファンドのリターン-無リスク資産のリターン)÷下方偏差」で計算します。
シャープレシオやソルティノレシオの値は【QQQ】が最も高く、左に行くにつれて下がっていきます。ベンチマークが同じ場合は、カバードコールよりも原資産を普通に保有したほうが数値がよいですね。トータルリターンと似た傾向です。
最大ドローダウン値はあまり差がないです。カバードコールはオプションの代金がもらえるので、理論上は株価下落時のクッションになります。ただし株価暴落のケースだと、オプションが売れなくなったり、オプションの価格が減る可能性があります。そういう場合は、原資産を取り崩して分配金を支払うことになるので、株価が下がってしまうことが考えられます。そのため100%カバードコールの【XYLD】や【QYLD】はあまりよくないです。
高配当ETFとの分配金比較は?
2014年3月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合の年間でもらえる分配金の推移です。分配金は再投資します。税金は考慮しません。
8年間の分配金の合計は【QYLD】が11100ドル、【QYLG】が7300ドル、【XYLD】が6500ドル、【XYLG】が4700ドル、【VYM】が3700ドルでした。ここはカバードコール100%の成績がよいです。
【XYLD】の今後のYOC予想は?
現在の過去1年分配金額(4.7119ドル)と1、3、5、7年前の同時期の過去1年分配金額を比較して年間増配率を計算し、それを使って将来YOCを予想します。YOC(Yield on Cost)とは、購入単価あたりの利回りのことです。【XYLD】株を2022年3月1日の終値47.54ドルで買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。
ベンチマークを2度変更したため、増配率はかなり高くなりました。また、カバードコールETFの性質上、今後も高い増配が続く可能性は低いです。
そこで、年間増配率が変化なし、増配率2%、マイナス2%、マイナス4%という4つのケースで検証します。
「分配金を再投資しない」「分配金を再投資しない(税引き後)」「分配金を再投資する」「分配金を再投資する(税引き後)」の4パターンで検証します
分配金を再投資しない場合のYOC
まずは分配金を再投資しない場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。スタート年は、現在の利回りの9.91%です。
増配率がマイナス4%で推移すると、5年後のYOCは8.08%、10年後のYOCは6.59%になります。増配率が2%で推移すると5年後のYOCは10.94%ドル、10年後のYOCは12.08%です。
分配金を再投資しない場合(税引き後)のYOC
次に分配金を再投資しないケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%が支払われます。スタート年のYOCは9.91%ではなく、税引き後の7.14%になります。
増配率がマイナス4%で推移すると、5年後のYOCは5.82%、10年後のYOCは4.74%になります。増配率が2%で推移すると5年後のYOCは7.88%ドル、10年後のYOCは8.70%です。
分配金を再投資する場合のYOC
それでは分配金を年1回再投資する場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。再投資する分配金額は、現在と5年前の株価を比較して年平均騰落率を計算し、それを使って調整します。
増配率がマイナス4%で推移すると、5年後のYOCは12.48%、10年後のYOCは14.55%になります。増配率が2%で推移すると5年後のYOCは17.82%ドル、10年後のYOCは33.61%です。
分配金を再投資する場合(税引き後)のYOC
最後に分配金を再投資するケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%が支払われます。スタート年のYOCは9.91%ではなく、税引き後の7.14%になります。
増配率がマイナス4%で推移すると、5年後のYOCは7.99%、10年後のYOCは8.44%になります。増配率が2%で推移すると5年後のYOCは11.25%ドル、10年後のYOCは18.36%です。
【XYLD】は利回りが高いため、分配金額が変わらなくても、分配金を再投資し続ければ、YOCは高くなりそうです。
まとめ
【XYLD】はベンチマークを2回変更していますので、2020年8月より前のデータはあまりアテになりません。ただ、ベンチマークを変更した2020年8月以降は分配金額が安定しています。最近はボラティリティが高く、直近3回の分配金は0.45ドルを超えており、快調です。
2021年は財務データを見る限り、かなり好調な1年だったようです。
日本の証券会社で購入可能なETFで、ライバルとなりそうなのは【JEPI】でしょうか。【QYLD】の保有比率が高すぎる人にとって、分散という意味で【XYLD】はいいかもしれません。
JPモルガン エクイティ プレミアム ETF【JEPI】と比較するのもいいかもしれません