結構前のことですが、バンガード社のバンガード・トータル・インターナショナル・ストック(除く米国)ETF【VXUS】が、2021年3月17日に分配金を発表しました。0.1004ドルです。1年前の同期は0.1553ドルでしたので、1年前の同期との比較では35.4%減です。
利回りを過去1年間の分配金額から算出すると、2022年5月6日の終値は54.59ドル、過去1年の分配金額は1.9129ドルなので、利回りは3.50%になります。
※このページでの利回りは過去1年間の分配金をもとに計算します
- 【VXUS】の過去の分配金と増配率は?
- 2020年以降の利回りは?
- 現在の【VXUS】の株価と利回りの関係は?
- 【VXUS】を過去に買っていた場合のYOCは?
- 基本情報を確認しよう
- 【VXUS】のセクター別の構成比率は?
- 【VXUS】の市場別の構成比率は?
- 【VXUS】の上位組込銘柄はどんな会社か?
- 2020年3月以降の上位20銘柄の推移
- 【VXUS】上位20銘柄は主要ETFには組み込まれているのか?
- ライバルETFとトータルリターンを比較する
- 過去の増配率を確認しよう
- 過去3年増配率を使った今後のYOC予想は?
- 過去5年増配率を使った今後のYOC予想は?
- 過去7年増配率を使った今後のYOC予想は?
- 過去3、5、7年増配率で推移した場合のYOC予想一覧
- まとめ
【VXUS】の過去の分配金と増配率は?
【VXUS】が設定されたのは2011年1月です。下の表は過去の分配金の一覧です。
今回の【VXUS】の分配金が増配or減配なのかは、どのデータを比較するかによって異なります。もっともオーソドックスなのは、下の表の(1)「期別分配金」の今回と前年同期の比較です。その結果が、(2)「期別分配金の対前年同期増減率」です。今回が0.1004ドル、前年の同期が0.1553ドルなので35.4%減になります。
また、(3)「過去1年分配金」を1年前と比較するのも参考になります。表の(4)「過去1年分配金の対前年同期増減率」は今回が1.9129ドル、前年の同期が1.3362ドルなので、43.2%増となります。
色をつけた箇所のデータをグラフにして解説していきます。
期別分配金で1年ごとの分配金イメージをつかもう
(1)「期別分配金」を1年ごとに重ねて棒グラフにしました。3月の分配金は少ないですね。年間分配金は2021年が過去最高の1.9678ドルを記録しました。
期別分配金を1つずつ並べて比べよう
(1)「期別分配金」を1つずつ棒グラフにして、株価と比較しました。米国以外の世界が対象なので、分配金の支払いが年2回のケースが多いです。そのため、6月と12月が多く、3月と9月は少ない傾向にあります。2021年12月の0.9412ドルというのは過去最高です。かなり飛び抜けた金額です。
年間分配金と株価の関係は?
(3)「過去1年分配金」を1年ごとにまとめて年間分配金とし、株価と比較しました。年間分配金は2020年はコロナ・ショックの影響で減りましたが、翌2021年はかなり増えました。株価は堅調に伸びていましたが、2022年に入って調整局面を迎えています。
過去1年分配金額を1つずつ並べて確認しよう
(3)「過去1年分配金」を期ごとに棒グラフにして、株価と比較しました。ある程度は連動しています。期別分配金に比べると、過去1年分配金はだいぶマイルドになります。2020年6月以降は分配金が停滞して、株価は上昇していましたが、遅れて分配金も伸びています。
期別と過去1年分配金を、前年同期と比較しよう
(2)「期別分配金の対前年同期増減率」、(4)「過去1年分配金の対前年同期増減率」をグラフにしました。
ETFの場合、「期別分配金の対前年同期増減率」で増配や減配を決めることが多いですが、大きく減ることも比較的あるので、あまり気にする必要はありません。
それよりも「過去1年分配金の対前年同期増減率」がプラスで推移しているかが重要です。【VXUS】は、この値も増えたり減ったりしています。2021年6月以降は、かなり伸びています。
年間増配率は?
(4)「過去1年分配金の対前年同期増減率」の1年ごとのデータを見てみましょう。いわゆる年間増配率です。2015年と2020年がマイナスですが、その前年は二桁%のプラスでした。ETFは前年が多すぎると翌年マイナスになるというケースが結構あります。
長期の増配率をチェック!
1年ごとの増配率は年によって結果が異なるので、若干イメージしづらいかもしれません。そういう時は、複数年単位で増配率をチェックしましょう。下のグラフは過去3年と過去5年の増配率の推移です。
過去5年増配率はかろうじてプラスが続いています。
2020年以降の利回りは?
2020年以降の【VXUS】の株価と利回りを見てみましょう。過去1年の年間分配金額から算出しました。青線が株価(左軸)で、赤線が利回り(右軸)です。2020年の年初は利回りが3.0%前後でしたが、2月半ば以降はコロナ・ショックで株価が下がったため、3月18日には利回りが4.6%まで上昇しました。現在の株価はコロナ・ショック前と同じくらいですが、分配金が増えているため、利回りは約3.50%です。
現在の【VXUS】の株価と利回りの関係は?
年間分配金額が現在と変わらなかったら、利回りはどのように変化するでしょうか。下のグラフは年間分配金額が現在と同じ1.9129ドルが続いた場合の、利回りと株価の相関図です。利回りを0.2%ごとに株価を出しました。今後【VXUS】を購入しようと考えている人は、目安にしてください。
【VXUS】を過去に買っていた場合のYOCは?
過去に【VXUS】を買った場合、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 2014年以降の株価、利回り、YOCを見ていきましょう。株価は月末のもので月1回なので、ややアバウトです。
下のグラフの黄色の線が、過去に買った場合の、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)です。この線が左肩上がりの場合は、株価好調&増配傾向にあるといえます。
2022年5月6日の終値は54.59ドル、過去1年の分配金額は1.9129ドルなので、現在の利回りは3.50%です。過去8年5カ月の平均利回りは約2.8%です。
過去8年5カ月で株価はやや右肩上がりなので、早い時期に買うとYOCが上がります。2016年2月に買っていたらYOCは約4.6%になっていました。また、2020年3月のコロナ・ショックの頃に買っていても、YOCは4.6%前後でした。
基本情報を確認しよう
【VXUS】のベンチマークは、FTSEグローバル・オールキャップ(除く米国)インデックスです。米国を除く世界の市場の約98%が対象で、このETF1本で米国以外のほとんどの地域をカバーしています。
同じ米国以外の世界が対象の【VEU】は、小型株を含まないため組込銘柄数が3600ほどです。【VXUS】は約7900なので、だいぶ違いますね。
全米を除く先進国【VEA】、ヨーロッパ【VGK】、新興国【VWO】とも比べてみましょう。すべてバンガード社なので、経費率は0.1%を切っており低いですね。現在は世界的に株価が下落しているため、いずれのETFも利回りは3%を超えています。
運用総額は【VEA】が13.1兆円、【VWO】が9.9兆円、【VXUS】は6.4兆円。それ以外も2兆円以上なので、いずれも規模は大きいですね。
【VXUS】のセクター別の構成比率は?
左の円グラフが【VXUS】に組み込まれている銘柄のセクター別の組込比率です。GICS(Global Industry Classification Standard)による分類です。金融の割合が最も多く、資本財、情報技術、一般消費財と続いています。2022年3月末現在のfidelityのデータです。
右側の全米ETF【VTI】との比較では、金融や資本財セクターが【VT】の方が多く、情報技術やヘルスケア、通信サービスが【VTI】に多く組み込まれています。【VXUS】は少し古い時代に強かったセクターが多いと言えるかもしれません。
【VXUS】の市場別の構成比率は?
地域別では、ヨーロッパが最多で約40%で、アジア太平洋が27%、新興国が25%です。この3つのエリアがほとんどを占めています。
市場別は日本が最多で約15%。以下、英国、カナダ、中国、フランス、スイス、オーストラリアと続きます。上位10カ国で全体の約72%を占めています。世界全体の株式市場は米国の比率が圧倒的に多いですが、米国以外のエリアとなると、各地域や各国で飛び抜けたところがなく、なかなかバランスが取れています。
【VXUS】の上位組込銘柄はどんな会社か?
【VXUS】の組込銘柄数は約7900銘柄です。ベンチマークは、米国を除く世界の市場の98%をカバーする、FTSEグローバル・オールキャップ(除く米国)インデックス。上位20銘柄の組込比率の合計は約13.8%と少なく、世界中に分散されています。
国別でトップのシェアだった日本は、ランクインしているのはトヨタ自動車、ソニーです。上位は情報技術、一般消費財、ヘルスケア、金融が多いですね。
2020年3月以降の上位20銘柄の推移
組込比率上位20銘柄の推移です。2年半前と比べてアリババ【BABA】の比率と順位が大きく下がっています。台湾セミコンダクター・ マニュファクチャリング(TSMC)【TSM】は2位との構成比率の差が、1年前と比べると開いて独走状態です。
【VXUS】上位20銘柄は主要ETFには組み込まれているのか?
【VXUS】の組込比率上位20銘柄は、他のETFにどのくらいの割合で組み込まれているのでしょうか? 米国以外【VXUS】【VEU】、米国以外先進国【VEA】、欧州【VGK】、新興国【VWO】、世界【VT】への組込比率(%)をまとめました。
【VXUS】と【VEU】はほぼ同じです。組込銘柄数の少ない【VEU】のが若干個別銘柄の組込比率が高くなっています。米国除く先進国【VEA】と新興国【VWO】はまったく重複していません。【VEA】+【VWO】=【VXUS】or【VEU】にほぼなります。
※組込比率は2022年3月末のデータをもとにしています
ライバルETFとトータルリターンを比較する
【VXUS】と米国以外の世界の広範囲をターゲットにしているETFとの過去10年トータル・リターンを比較します。対象は、全米を除く先進国【VEA】、ヨーロッパ【VGK】、新興国【VWO】。PORTFOLIO VISUALIZERを使って、2012年5月から2022年4月までの10年間を比べます。
2012年5月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合、2022年4月には【VEA】と【VGK】が1万8200ドル、【VXUS】は1万6800ドル、【VWO】が1万3400ドルになっていました。【VWO】のリターンがあまりよくないですね。
ライバルETFと株価推移を比較する
今度は株価推移を比較します。
2012年5月に1万ドル投資して分配金を再投資しない場合、2022年4月には【VEA】が1万3500ドル、【VGK】が1万3000ドル、【VXUS】は1万2500ドル、【VWO】は1万200ドルになっていました。
利回りが似ているので、チャートの形はトータルリターンとほぼ同じですね。
過去10年の分配金はどのくらいか?
過去10年の分配金を比較します。下のグラフは、10年前に1万ドルを投資した場合の、年間分配金の推移です。分配金は再投資します。税金は考慮しません。
どのETFも分配金額は伸び悩んでいます。とくに2020年はコロナ・ショックの影響でどの銘柄も減りました。ただし、翌2021年は回復しています。
10年間の分配金の合計は【VGK】が4700ドル、【VEA】が4200ドル、【VXUS】が3900ドル、【VWO】が3000ドルでした。
過去のトータルリターン
過去1、3、5、10年の年平均トータルリターンは以下の通りです。全米【VTI】、世界【VT】なども加えました。
過去1年はどのETFでもマイナスです。【VXUS】【VEU】【VEA】【VWO】の過去3年以上のリターンはいずれも似ています。5%前後ですね。
危険度はどのくらいか?
ETFの安定度を比べてみましょう。最大ドローダウンは、計測期間における最大下落率です。マイナスの数値が小さいほど最大下落率が低いです。
シャープレシオとは、同じリスクを取った場合のリターンです。「(ファンドのリターンー無リスク資産のリターン)÷標準偏差」の値です。
ソルティノレシオはシャープレシオの改良版で、相場が軟調の際の成績を示しています。「(ファンドのリターンー無リスク資産のリターン)÷下方偏差」で計算します。
米国が入っていないと、シャープレシオ、ソルティノレシオともに冴えないですね。とくに新興国【VWO】は、この10年苦戦しているのが現れています。
過去の増配率を確認しよう
増配率を見てみましょう。月の分配金を基準に、過去1年分配金額を遡って計算し、それを使って過去3、5、7年増配率を算出しました。過去3年や5年だと、新興国【VWO】、米国以外世界【VXUS】【VEU】の成績がいいですね。過去7年は全米【VTI】や世界【VT】の増配率が高いです。
過去3年増配率を使った今後のYOC予想は?
現在の過去1年分配金額と3、5、7年前の同時期の過去1年分配金額を比較して増配率を計算し、それを使って将来YOCを予想します。
YOC(Yield on Cost)とは、購入単価あたりの利回りのことです。それぞれのETFを2022年4月25日の終値で買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。
「分配金を再投資しない、税金は考えない」「分配金を再投資する、税引き後」の2つで検証します。過去3年、過去5年、過去7年増配率とこの2つを組み合わせるので、計6つとなります。
比べるETFは、全米を除く世界【VXUS】、全米を除く先進国【VEA】、ヨーロッパ【VGK】、新興国【VWO】、米国【VTI】、世界【VT】。
現在の利回りは【VXUS】3.50%、【VEA】3.34%、【VGK】3.44%、新興国【VWO】3.26%、米国【VTI】1.44%、世界【VT】2.13%。
分配金を再投資しない・税金も考えない場合
まずは過去3年増配率で検証します。分配金を再投資しない場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。
過去3年の年間増配率は【VXUS】7.9%、【VEA】5.2%、【VGK】0.0%、新興国【VWO】7.8%、米国【VTI】1.8%、世界【VT】5.2%。でした。
表の一番左の「スタート」が、それぞれのETFの現在の利回りです。過去1年の分配金から計算しています。
もっとも成績が良かったのは【VXUS】。10年後YOCは7.5%、20年後YOCは16.0%まで伸びました。
分配金を再投資する・税金を考える場合
次に分配金を再投資するケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%で計算します。再投資する分配金額は、3年間の株価の年平均成長率(CAGR)を計算し、それを使って調整します。
もっとも成績が良かったのは【VT】。10年後YOCは7.6%、20年後YOCは33.8%でした。
過去5年増配率を使った今後のYOC予想は?
次に過去5年増配率で検証します。
分配金を再投資しない・税金も考えない場合
過去5年の年間増配率は【VXUS】7.0%、【VEA】5.8%、【VGK】2.9%、新興国【VWO】8.4%、米国【VTI】5.4%、世界【VT】5.7%。でした。
まずは分配金を再投資しない場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。
もっとも成績が良かったのは【VWO】。10年後YOCは7.3%、20年後YOCは16.2%まで伸びました。【VT】は10年後YOCは6.9%、20年後YOCは13.7%でした。
分配金を再投資する・税金を考える場合
次に分配金を再投資するケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%で計算します。再投資する分配金額は、5年間の株価の年平均成長率(CAGR)を計算し、それを使って調整します。
もっとも成績が良かったのは【VWO】。10年後YOCは7.3%、20年後YOCは34.1%まで伸びました。【VT】は10年後YOCは7.0%、20年後YOCは26.8%でした。
過去7年増配率を使った今後のYOC予想は?
最後に過去7年増配率で検証します。
分配金を再投資しない・税金も考えない場合
過去7年の年間増配率は【VXUS】4.2%、【VEA】3.6%、【VGK】0.7%、新興国【VWO】3.0%、米国【VTI】6.1%、世界【VT】4.5%。でした。
まずは分配金を再投資しない場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。
もっとも成績が良かったのは【VXUS】。10年後YOCは5.3%、20年後YOCは8.0%でした。
分配金を再投資する・税金を考える場合
次に分配金を再投資するケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%で計算します。再投資する分配金額は、10年間の株価の年平均成長率(CAGR)を計算し、それを使って調整します。
もっとも成績が良かったのは【VXUS】。10年後YOCは5.1%、20年後YOCは12.1%でした。
過去3、5、7年増配率で推移した場合のYOC予想一覧
これまでの過去3、5、7年増配率を使用した将来YOC予想をまとめました。背景のオレンジ色が濃いほど数値が高いです。増配率は背景の青色の濃さで大小を現わしています。
将来YOC予想が一番良かったのは【VXUS】です。どの増配率で計算しても1位か2位でした。スタート時の利回りが一番高く、増配率も良かったためです。
【VWO】もかなり成績がよかったですね。過去3年と5年増配率では、【VXUS】と競っていました。
【VEA】は2位と3位のみと、なかなかの将来YOCでした。
まとめ
【VXUS】の2022年3月の分配金は少し物足りない結果に終りました。ただ、3月はいつも少ないので、あまり気にしなくてもいいと思います。
米国以外の地域は、長いこと米国に後れを取っていましたので、そろそろ巻き返すかもしれません。現在利回りが高いので、買い時かもしれません。
なお、次回の分配金の権利落ちは6月21日なので、その前日までに購入すれば分配金がもらえます。