バンガード社のETFは公式サイトで月1回更新されます。月末のデータが、翌月の15日頃に反映されます。今回2020年12月末のデータが更新されましたので、バンガード・トータル・インターナショナル・ストック(除く米国)ETF【VXUS】の組込銘柄の変化や傾向について検証します。
基本情報を確認しよう
米国以外の世界が対象の4つのETFを比較します。全米を除く世界が対象の【VXUS】と【VEU】、全米を除く先進国【VEA】、ヨーロッパ【VGK】を比較します。すべてバンガード社なので、経費率は低いですね。
運用総額は、米国を除く先進国【VEA】が9.4兆円とかなり大きいです。これは日本で「日本を除く先進国」つまりMSCIコクサイをベンチマークにした投資信託が売れているようなものです。ただ、MSCIコクサイの投資信託が売れているのは、少し前まではS&P500やナスダック100が対象の投資信託がなかったからという理由もありますけどね。
【VXUS】と【VEU】の違いは、【VXUS】は小型株を含んでいるため組込銘柄数が7386と多いですが、【VEU】は小型株を含まないので組込銘柄数は3489と半分ほどです。やや強引に米国ETFに当てはめると、【VXUS】は【VTI】で、【VEU】は【VOO】のような感じです。そうなると【VXUS】と【VEU】のリターンの差はほとんどないはずです。
※「配当利回り」は過去1年の配当額から算出しました。モーニングスターレーティングは2020年12月末のものです
過去のトータルリターンはどうか?
過去10年のトータルリターンはどうなっているでしょうか? 全米を除く世界が対象の【VXUS】と【VEU】、全米を除く先進国【VEA】、ヨーロッパ【VGK】を比較します。
2011年1月に1万ドル投資して配当を再投資した場合、2020年12月末には【VEA】が1万7200ドル、【VGK】が1万6700ドル、【VEU】が1万6300ドル、【VXUS】が1万6100ドルになっていました。どれも似たような動きですね。とくに全米を除く世界が対象の【VXUS】と【VEU】はほぼ同じです。
過去1、3、5、10年の年平均トータルリターンは以下の通りです。最近1年ではヨーロッパ【VGK】の成績が良くないです。過去5年では【VXUS】と【VEU】が優秀で、過去10年では【VEA】と【VGK】が好調です。
銘柄 | 1年 | 3年 | 5年 | 10年 |
---|---|---|---|---|
VXUS | 10.69% | 4.86% | 9.02% | 4.97% |
VEU | 11.12% | 5.12% | 9.20% | 5.08% |
VEA | 9.74% | 4.68% | 8.29% | 5.68% |
VGK | 6.11% | 4.08% | 7.36% | 5.33% |
【VXUS】のセクター別のファンド構成比は?
【VXUS】に組み込まれている銘柄のセクター別の組込比率です。バンガードの公式サイトではICB(Industry Classification Benchmark)で分類されていますので、これをGICS(Global Industry Classification Standard)に変換しました。金融の割合が最も多く、一般消費財が続き、情報技術と資本財は同じくらいですね。
【VXUS】の市場別のファンド構成比は?
市場別の構成比率を見てみましょう。トップは日本。以下、中国、英国が続き、フランス、カナダ、スイス、ドイツが続きます。地域別ではヨーロッパが約38.6%で最多、太平洋が約28.7%です。
【VXUS】の上位組込銘柄はどんな会社か?
【VXUS】の上位20銘柄の組込比率の合計は約14.4%と少なく、世界中に分散されています。国別でトップのシェアだった日本は、ランクインしているのはトヨタ自動車、ソニー、ソフトバンク・グループです。上位は中国とスイスが多く、台湾と韓国は1企業だけ飛び抜けています。セクター別では情報技術、ヘルスケア、一般消費財が多いですね。
過去3カ月の上位20銘柄の推移
2020年6月以降、組込比率上位20銘柄の3カ月ごとの比較です。TSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング)【TSM】の比率が、半年前と比較すると大きく増えています。
【VXUS】上位20銘柄は主要ETFには組み込まれているのか?
【VXUS】の組込比率上位20銘柄は、他のETFにどのくらいの割合で組み込まれているのでしょうか? 米国以外【VXUS】【VEU】、米国以外先進国【VEA】、欧州【VGK】、新興国【VWO】、世界【VT】への組込比率(%)をまとめました。
【VXUS】と【VEU】はほぼ同じです。組込銘柄数の少ない【VEU】のが若干個別銘柄の組込比率が高くなっています。
※組込比率は2020年12月末のデータをもとにしています。
ファンドオーバーラップで他のETFとの比較する
ファンドオーバーラップを使って、他のETFとの重複割合を調べてみましょう。米国以外【VEU】、米国以外先進国【VEA】、欧州【VGK】、新興国【VWO】、世界【VT】と比較しました。【VT】の中に【VXUS】がすっぽり入っており、【VXUS】の中には【VEU】【VEA】【VGK】がほとんど含まれています。新興国【VWO】は少し毛色が異なりますね。
【VXUS】の配当はどう変化したか?
【VXUS】は年4回配当が支払われます。3、6、9、12月に配当落ちがあり、その数日後に振り込まれます。2020年は、6月の配当が前年同期を大きく下回りました。そのため1年間のトータルでは2020年は2019年より24.5%も減りました。
今年に入ってからの配当利回りは?
2020年に入ってからの【VXUS】の株価と配当利回りを見てみましょう。過去1年の年間配当額から算出しました。青線が株価(左軸)で、赤線が配当利回り(右軸)です。2020年の年初の配当利回りは3%前後で推移していましたが、2月半ば以降は株価が下がったため、3月18日には配当利回りが約4.6%まで上昇しました。現在は株価がコロナ・ショック前を上回り、さらに2020年6月の配当が冴えなかったため、配当利回りは2.05%まで下がっています。
【VXUS】を過去に買っていた場合のYOCは?
過去に【VXUS】を買った場合、現在の購入単価当たりの配当利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 現在から5年前までの株価、配当利回り、YOCを見ていきましょう。株価は月末のもので月1回なので、やや大雑把です。
2020年1月25日の終値は62.89ドル、過去1年の配当金額は1.2867ドルなので、現在の配当利回りは2.05%です。過去5年の平均配当利回りは約2.82%です。過去5年で株価はやや右肩上がりで、配当は上がったり下がったりなので、早い時期に買っても多少はYOCが上がります。2016年2月頃に買っていたら、現在YOCは3.1%前後になっていました。
【VXUS】の今後の配当予想は?
現在の過去1年配当金額(1.2867ドル)と1、3、5、9年前の同時期の過去1年配当金額(1.7047ドル、1.5531ドル、1.276ドル、1.291ドル)を比較して年間増配率を計算し、それを使って将来の配当金とYOCを予想しました。
YOC(Yield on Cost)とは、購入単価あたりの配当利回りのことです。【VXUS】株を2021年1月25日の終値62.89ドルで買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。棒グラフが配当金予想、折れ線グラフがYOC予想です。
年間増配率は過去1年がマイナス24.5%、過去3年がマイナス6.1%、過去5年が0.2%、過去9年が0.0%でした。現在の配当利回りは2.05%です。もっとも増配率の低い過去1年のペースだと10年後のYOCは0.1%、20年後のYOCは0.0%になります。もっとも成績の良い過去5年の増配率を当てはめると10年後のYOCは2.1%、20年後のYOCは2.1%になります。2020年の配当が悪かったので、過去の配当との比較で将来YOCを計算すると、あまりよくない結果になりました。
まとめ
いかがでしたか? 【VXUS】の2020年の配当は冴えませんでしたが、株価はコロナ・ショック前を上回りました。アメリカ株ばかり買っているとポートフォリオが偏りすぎてしまうので、米国以外の候補として検討してみる価値はありそうです。
