バンガード社のETFは公式サイトで月1回更新されます。月末のデータが、翌月の15日頃に反映されます。今回2020年9月末のデータが更新されましたので、バンガード トータルストックマーケットETF【VTI】の組込銘柄の変化や傾向について検証します。
【VTI】のセクター別のファンド構成比は?
【VTI】に組み込まれている銘柄のセクター別の組込比率です。バンガードの公式サイトではICB(Industry Classification Benchmark)で分類されていますので、これをGICS(Global Industry Classification Standard)に変換しました。情報技術の割合が最も多く、27.3%と全体の4分の1以上を占めています。以下、ヘルスケア、一般消費財、通信サービスと続いています。
【VTI】にはどんな銘柄が組み込まれているのか?
【VTI】の保有銘柄数は3566銘柄です。組込銘柄の一覧を円グラフにしました。組込比率0.5%以上の銘柄は33あり、全体の約39.0%を占めています。組込比率0.5%未満は3533銘柄で全体の約61.0%、円グラフの白い部分です。
【VTI】の上位組込銘柄はどんな会社か?
【VTI】の組込比率1%以上の銘柄です。ベンチマークはCRSP USトータル・マーケット・インデックス。米国株式市場の投資可能銘柄のほぼ100%をカバーしています。データの中身は2020年9月末時点のものです。
過去6カ月の組込比率1%以上の銘柄比較
最近6カ月間の組込比率0.5%以上の銘柄の比較です。先月との比較では、あまり変化はありません。5カ月前の4月30日との比較ではエクソン・モービル【XOM】が8月末に、シェブロン【CVX】が7月末に0.5%未満のランク外になってしまいました。
【VTI】上位33銘柄は主要ETFには組み込まれているのか?
【VTI】の組込比率0.5%以上の33銘柄は、他のETFには組み込まれているのでしょうか? その一覧が下の表です。左から米国全体【VTI】、S&P500【VOO】、高配当【VYM】【HDV】【SPYD】、連続増配【VIG】、ダウ30平均【DIA】、ナスダック100【QQQ】、情報技術【VGT】です。表内の数字は組込順位。一番上の行をクリックすると、その項目の順番に並び直します。同じ箇所を続けてクリックすると数値の大小が逆になります。試してください。
※「Tik」はティッカー・コード、「配利」は配当利回りです。配当利回りは2020年9月末の株価から算出しました。【SPYD】は7月の時点で均等に組込、【DIA】は株価の高い順が組込順位なので、この2つの組込順位はあまり重要ではありません。
Tik | 配利 | VTI | VOO | VYM | HDV | SPYD | VIG | DIA | QQQ | VGT |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
AAPL | 0.7 | 1 | 1 | – | – | – | – | 20 | 1 | 1 |
MSFT | 1.1 | 2 | 2 | – | – | – | 2 | 6 | 2 | 2 |
AMZN | – | 3 | 3 | – | – | – | – | – | 3 | – |
FB | – | 4 | 4 | – | – | – | – | – | 4 | – |
GOOGL | – | 5 | 5 | – | – | – | – | – | 5 | – |
GOOG | – | 6 | 6 | – | – | – | – | – | 6 | – |
BRK.B | – | 7 | 7 | – | – | – | – | – | – | – |
JNJ | 2.7 | 8 | 8 | 1 | 3 | – | 4 | 13 | – | – |
PG | 2.3 | 9 | 9 | 2 | – | – | 3 | 15 | – | – |
V | 0.6 | 10 | 10 | – | – | – | 5 | 8 | – | 4 |
TSLA | – | 11 | – | – | – | – | – | – | 7 | – |
NVDA | 0.1 | 12 | 11 | – | – | – | – | – | 8 | 3 |
MA | 0.5 | 13 | 13 | – | – | – | – | – | – | 5 |
HD | 2.2 | 14 | 12 | – | – | – | 6 | 2 | – | – |
UNH | 1.6 | 15 | 14 | – | – | – | 7 | 1 | – | – |
JPM | 3.7 | 16 | 15 | 3 | – | – | – | 22 | – | – |
VZ | 4.2 | 17 | 16 | 4 | 4 | 48 | – | 25 | – | – |
ADBE | – | 18 | 17 | – | – | – | – | – | 10 | 6 |
PYPL | – | 19 | 18 | – | – | – | – | – | 9 | 8 |
DIS | – | 20 | 20 | – | – | – | 8 | 17 | – | – |
NFLX | – | 21 | 22 | – | – | – | – | – | 11 | – |
INTC | 2.6 | 22 | 21 | 5 | – | – | – | 26 | 13 | 9 |
CRM | – | 23 | 19 | – | – | – | – | 3 | – | 7 |
CMCSA | 2.0 | 24 | 23 | 6 | – | – | 9 | – | 12 | – |
MRK | 2.9 | 25 | 24 | 7 | 10 | – | – | 23 | – | – |
PFE | 4.1 | 26 | 25 | 8 | 6 | 51 | – | – | – | – |
T | 7.3 | 27 | 26 | 9 | 1 | 60 | – | – | – | – |
WMT | 1.5 | 28 | 27 | 10 | – | – | 1 | 14 | – | – |
ABT | 1.3 | 29 | 28 | – | – | – | 11 | – | – | – |
PEP | 3.0 | 30 | 29 | 11 | 9 | – | 10 | – | 14 | – |
KO | 3.3 | 31 | 30 | 12 | 7 | – | – | 27 | – | – |
BAC | 3.0 | 32 | 31 | 13 | – | – | – | – | – | – |
TMO | 0.2 | 33 | – | – | – | – | – | – | – | – |
【VOO】と【VTI】の上位銘柄はほとんど同じです。S&P500に採用されていないテスラ【TSLA】が【VOO】には入っていません。
【QQQ】の上位6銘柄と【VTI】【VOO】の上位6銘柄は同じですね。いわゆるGAFAMです。
ファンドオーバーラップで他のETFとの比較する
ファンドオーバーラップを使って、他のETFとの重複割合を調べてみましょう。以下のようになりました。【VTI】との重複割合が高いのは【VOO】ですね。これは【VTI】の上位8割弱がS&P500銘柄のためです。この2つのETFは株価の動きやトータルリターン比較などでもだいたい同じです。
今年に入ってからの配当利回りは?
2020年に入ってからの【VTI】の株価と配当利回りを見てみましょう。過去1年の年間配当額から算出しました。青線が株価(左軸)で、赤線が配当利回り(右軸)です。配当利回りは1.7%前後で推移していましたが、2月半ば以降は株価が下がったため、3月23日には配当利回りが2.6%まで上昇しました。現在は株価がコロナ・ショック前を上回り、配当利回りは1.62%です。
【VTI】を過去に買っていた場合のYOCは?
過去に【VTI】を買った場合、現在の購入単価当たりの配当利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 現在から5年前までの株価、配当利回り、YOCを見ていきましょう。株価は月末のもので月1回なので、やや大雑把です。
2020年10月23日の終値は176.84ドル、過去1年の配当金額は2.8731ドルなので、現在の配当利回りは約1.62%です。過去5年の平均配当利回りは約1.83%です。過去5年で株価は右肩上がりで、増配もしていますので、早い時期に買った方がYOCは上がります。2016年1月に買っていたら、現在YOCは約2.92%になっていました。
【VTI】の今後の配当予想は?
現在の過去1年配当金額(2.8731ドル)と1、3、5、10年前の同時期の過去1年配当金額(2.7401ドル、2.397ドル、2.045ドル、1.16ドル)を比較して年間増配率を計算し、それを使って将来の配当金とYOCを予想しました。YOC(Yield on Cost)とは、購入単価あたりの配当利回りのことです。【VTI】株を2020年10月23日の終値176.84ドルで買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。棒グラフが配当金予想、折れ線グラフがYOC予想です。
年間増配率は過去1年が4.9%、過去3年が6.2%、過去5年が7.0%、過去10年が9.5%でした。現在の配当利回りは1.62%です。もっとも増配率が低い過去1年のペースで増配が続くと10年後のYOCは2.6%、20年後のYOCは4.2%になります。もっとも増配率が高い過去10年の増配と同じだと10年後のYOCは4.0%、20年後のYOCは10.0%になります。配当利回りはそれほど高くありませんが、安定して増配するので、それなりのYOCになりそうです。
まとめ
いかがでしたか? 【VTI】の株価は、コロナ・ショック前を上回りました。
【VTI】は全米をフォローしている投資しているETFで、GAFAMをはじめとしたIT系の割合が多く、なかなかのパフォーマンスを見せています。今後も米国の強さと成長を信頼するのならば、安心して保有できるETFといえそうです。
また、現在の配当利回りはあまり高くないですが、相場が好調の時は配当と値上がり益の両方が期待できるので、長期保有向きともいえます。