米国株の長期投資の基本は、増配を続けている株を保有することとよく言われますね。本当にそうでしょうか? そこで、25年以上増配を続けている配当王から、時価総額の高い順に20銘柄を10年前に買ったと仮定して、現在の資産内容を検証します。投資金額は1銘柄あたり約1000ドル、計2万ドルで、配当再投資はしないでというルールで検証します。2009年9月1日にすべて買って、2019年9月4日現在の株価と比較します。なおADR銘柄、10年以内に合併や分裂を行った銘柄は除きます。
-
- 2019年時点で25年以上増配を続けている銘柄
- 時価総額の高い順に20銘柄
- 1銘柄あたり1000ドルに近い額で2009年9月1日の終値で購入
- 配当はそのまま保有
検証する20銘柄は名立たる企業がズラリ
検証する銘柄は以下の通りです。世界的にも有名な企業が揃っています。セクター別だと生活必需品が最多の6、ヘルスケアが3で続き、エネルギーと一般消費財、情報技術、資本財が2、通信サービスと公益事業、金融が1、そして素材が0です。なおIBMの増配年は24で1年足りませんが、サービスして加えることにしました。
銘柄 | ティッカー | セクター | 増配年 | 時価総額(100万$) |
---|---|---|---|---|
ジョンソン & ジョンソン | JNJ | ヘルスケア | 57 | 351730 |
エクソン・モービル | XOM | エネルギー | 46 | 319320 |
ウォルマート | WMT | 生活必需品 | 37 | 317640 |
プロクター & ギャンブル | PG | 生活必需品 | 63 | 302120 |
AT & T | T | 通信サービス | 35 | 249960 |
シェブロン | CVX | エネルギー | 32 | 240490 |
コカ・コーラ | KO | 生活必需品 | 57 | 229330 |
ペプシコ | PEP | 生活必需品 | 47 | 182800 |
マクドナルド | MCD | 一般消費財 | 43 | 161980 |
IBM | IBM | 情報技術 | 24 | 133230 |
スリーエム | MMM | 資本財 | 61 | 104830 |
ネクステラ・エナジー | NEE | 公益事業 | 25 | 100280 |
アリトリア・グループ | MO | 生活必需品 | 49 | 90890 |
ロウズ・カンパニーズ | LOW | 一般消費材 | 57 | 82600 |
ストライカー | SYK | ヘルスケア | 26 | 79180 |
キャタピラー | CAT | 資本財 | 26 | 77060 |
オートマチック・データ・プロセシング | ADP | 情報技術 | 44 | 70880 |
エース・リミテッド | CB | 金融 | 26 | 70340 |
ベクトン・ディッキンソン | BDX | ヘルスケア | 47 | 69360 |
コルゲート・パルモーブ | CL | 生活必需品 | 56 | 64430 |
10年前に20銘柄を1000ドル分ずつ購入!
まずは、2009年9月1日の終値で購入したとします。すべての銘柄が1000ドルに近づくようにします。20銘柄の合計は一番下にあるように1万9996ドルで、ほぼ2万ドルになりました。なお、購入手数料は考えないものとします。表内の単位は、基本的にはUSドルで、%の場合は数字の隣に表記しています。
ティッカー | 10年前株価 | 購入単位 | 購入額 |
---|---|---|---|
JNJ | 60.89 | 16 | 974 |
XOM | 68.61 | 15 | 1029 |
WMT | 49.09 | 20 | 982 |
PG | 53.85 | 19 | 1023 |
T | 27.01 | 37 | 999 |
CVX | 70.43 | 14 | 986 |
KO | 53.70 | 18 | 967 |
PEP | 58.66 | 17 | 997 |
MCD | 57.07 | 18 | 1027 |
IBM | 119.61 | 8 | 957 |
MMM | 73.80 | 14 | 1033 |
NEE | 55.23 | 18 | 994 |
MO | 17.81 | 56 | 997 |
LOW | 20.94 | 48 | 1005 |
SYK | 45.43 | 22 | 999 |
CAT | 51.33 | 20 | 1027 |
ADP | 39.30 | 26 | 1022 |
CB | 50.41 | 20 | 1008 |
BDX | 69.75 | 14 | 977 |
CL | 76.28 | 13 | 992 |
合計 | 19996 |
現在と10年前の株価、年間配当額、配当利回りを比較
次に株価、年間配当額、配当利回りを現在と10年前で比較しましょう。10年前の2009年9月はリーマンショック後の落ち込んでいた時期なので、株価は低迷していますね。現在の1/2ぐらいがほとんどです。この時期に購入された人の決断力には称賛を送りたいですね。10年前の配当利回りは【XOM】は2.42%、【IBM】は2.15%と低かったのですね。そして【MO】は10年前でも今でも7%オーバー。立派ですね。【KO】は2012年8月に1→2に分割、【CL】2013年5月に1→2に分割しました。
ティッカー | 現在株価 | 現在年間配当額 | 現在配当利回り | 10年前株価 | 10年前年間配当額 | 10年前配当利回り |
---|---|---|---|---|---|---|
JNJ | 128.69 | 3.80 | 2.95% | 60.89 | 1.93 | 3.17% |
XOM | 69.22 | 3.48 | 5.03% | 68.61 | 1.66 | 2.42% |
WMT | 115.28 | 2.12 | 1.84% | 49.09 | 1.055 | 2.15% |
PG | 121.94 | 2.98 | 2.44% | 53.85 | 1.72 | 3.19% |
T | 35.49 | 2.04 | 5.75% | 27.01 | 1.64 | 6.07% |
CVX | 118.15 | 4.76 | 4.03% | 70.43 | 2.66 | 3.78% |
KO | 55.23 | 1.60 | 2.88% | 53.70 | 1.64 | 3.05% |
PEP | 137.64 | 3.82 | 2.78% | 58.66 | 1.75 | 2.98% |
MCD | 217.58 | 4.64 | 2.13% | 57.07 | 1.54 | 3.07% |
IBM | 135.69 | 6.48 | 4.78% | 119.61 | 2.15 | 1.80% |
MMM | 159.50 | 5.76 | 3.61% | 73.80 | 2.04 | 2.76% |
NEE | 224.34 | 5.00 | 2.23% | 55.23 | 1.89 | 3.42% |
MO | 43.82 | 3.36 | 7.67% | 17.81 | 1.3 | 7.30% |
LOW | 110.09 | 2.20 | 2.00% | 20.94 | 0.35 | 1.67% |
SYK | 218.24 | 2.08 | 0.95% | 45.43 | 0.5 | 1.10% |
CAT | 118.77 | 4.12 | 3.47% | 51.33 | 1.68 | 3.27% |
ADP | 168.88 | 3.16 | 1.87% | 39.30 | 1.32 | 3.36% |
CB | 159.25 | 3.00 | 1.88% | 50.41 | 1.15 | 2.28% |
BDX | 250.28 | 3.08 | 1.23% | 69.75 | 1.32 | 1.89% |
CL | 74.70 | 1.71 | 2.29% | 76.28 | 1.72 | 2.25% |
現在と10年前の評価額を比較して損益を計算する
評価額を現在と10年前で比較しましょう。もっとも増加率が高いのが【LOW】で425%です。10年前に購入した1000ドルが評価額5285ドルになっています。【SYK】や【ADP】、【NEE】も増加率が300%を超えて、評価額が4000ドル以上になっています。【XOM】や【IBM】などの長期投資向きと言われている銘柄は10年前と比較して、株価はほとんど変わりません。そして評価額の合計は10年前が1万9996ドル(約2万ドル)、現在は5万4225ドルになっていました。配当を考えないでこの上昇率はスゴイですね。
ティッカー | 現在株価 | 10年前株価 | 現在評価額 | 損益 | 損益 |
---|---|---|---|---|---|
JNJ | 128.69 | 60.89 | 2059 | 1085 | 111.3% |
XOM | 69.22 | 68.61 | 1038 | 9 | 0.9% |
WMT | 115.28 | 49.09 | 2306 | 1324 | 134.8% |
PG | 121.94 | 53.85 | 2317 | 1294 | 126.4% |
T | 35.49 | 27.01 | 1313 | 314 | 31.4% |
CVX | 118.15 | 70.43 | 1654 | 668 | 67.8% |
KO | 110.46 | 53.70 | 2124 | 1157 | 119.7% |
PEP | 137.64 | 58.66 | 2340 | 1343 | 134.6% |
MCD | 217.58 | 57.07 | 3916 | 2889 | 281.3% |
IBM | 135.69 | 119.61 | 1086 | 129 | 13.4% |
MMM | 159.50 | 73.80 | 2233 | 1200 | 116.1% |
NEE | 224.34 | 55.23 | 4038 | 3044 | 306.2% |
MO | 43.82 | 17.81 | 2454 | 1457 | 146.0% |
LOW | 110.09 | 20.94 | 5284 | 4279 | 425.7% |
SYK | 218.24 | 45.43 | 4801 | 3802 | 380.4% |
CAT | 118.77 | 51.33 | 2375 | 1349 | 131.4% |
ADP | 168.88 | 39.30 | 4391 | 3369 | 329.7% |
CB | 159.25 | 50.41 | 3185 | 2177 | 215.9% |
BDX | 250.28 | 69.75 | 3504 | 2527 | 258.8% |
CL | 149.40 | 76.28 | 1940 | 948 | 95.6% |
10年分の配当額を計算して比較する
10年間の配当について検証しましょう。10年前にすべての銘柄を約1000ドル分購入しましたので、配当の合計はある意味フェアな比較といえるかと思います。もっとも配当額が多かったのは【MO】で1091ドル。購入金額を上回っています!
【T】や【MCD】、【CVX】、【NEE】も500ドルを超えています。【MCD】と【NEE】は現在の配当利回りが2%台前半とあまり高くないですが、増配率の高さでカバーした感じです。逆に配当額が少ないのは【SYK】で300ドル以下です。そして10年間の配当の合計は9330ドル。約2万ドルの投資に対して46%です。なお、グラフの一番右には、ベンチマークとしてS&P500に連動しているETF、SPDR S&P 500 ETF トラスト【SPY】のデータを載せておきます。
10年前と10年前に購入した場合の元本利回り(YOC)を比較する
10年間に購入した配当貴族銘柄は、現在どのくらいの利回りになっているでしょうか? もっとも目立っているのが【MO】で、当時の配当利回りが7.3%だったのが、そのまま保有し続ければYOC(元本利回り)が18.87%になりました。ただし増配率は9.96%と高いのですが、トップクラスというわけではありません。10年前時点の配当利回りの高さがモノを言った感じです。
【LOW】は10年前の配当利回りが1.67%と低かったのですが、YOCが10.51%と約10倍になりました。増配率が20.18%と抜きんでております。【MCD】は配当利回り2.7%からYOCが8.13%に上がりました。こちらも増配率11.66%とかなりのものです。なお、グラフの一番右には、ベンチマークとしてS&P500に連動しているETF、SPDR S&P 500 ETF トラスト【SPY】のデータを載せておきます。
評価額と配当を合わせて計算する
最後に評価額と配当を合わせた額でまとめます。全体としては約2万ドル分購入して、10年後には評価額が5万4225ドル、配当の合計が9330ドル、合計6万3555ドルになりました。また、1株あたりの平均は投資した1000ドルが評価額2711ドルになり、配当が467ドル、合計が3178ドルです。10年で約3倍になりました!
個別の銘柄では【LOW】の評価額と配当の合計が5713ドルでトップ、【SYK】や【ADP】【NEE】、【MCD】も4000ドル以上でした。これらの銘柄の現在の配当利回りは高くても2%台前半なので意外です。逆に成績が悪かったのは【XOM】、【IBM】です。いずれも配当利回りが高く、長期投資家が保有していることが多い銘柄ですね。こちらも意外な結果といえるかもしれません。ただ、この10年の成績がよかった銘柄がオススメかどうかは微妙です。とくに現在評価額が高い銘柄は、現在の株価が割高という可能性が高く、今買うには躊躇してしまいますね。なお、グラフの一番下には、ベンチマークとしてS&P500に連動しているETF、SPDR S&P 500 ETF トラスト【SPY】のデータを載せておきます。
バフェット銘柄など、これまでの記事を比較
これまでの記事で検証したものを比較します。10年前に買ったという前提で、現在の評価額と配当金の合計を計算しました。ベンチマークとして【SPY】の5年と10年のデータも記載。「SPY(5年)」以下は5年間の成績です。
もっとも優れているのは、現在のバフェット銘柄2軍(上位11~20位)を10年前に買ったものでした。10年前にバフェットと同じ銘柄を買うよりも、現在のバフェット銘柄を10年前に買ったほうが成績が上回っております。これは10年前にバフェットが所有していた上位銘柄の中で、期待できそうにないものは売却したり比率を減らしたからです。まさにバフェットが進化し続けているというわけです。さすがオマハの賢人。米寿を迎えてもまだ伸びしろがありそうです。