バンガード社のバンガード トータル・ストック・マーケットETF【VTI】が、2020年12月22日に配当金を発表しました。0.7818ドルです。1年前の同期は0.8855ドルでしたので、1年前の同期との比較では11.7%の減配です。
配当利回りを過去1年間の配当金額から算出すると、2020年12月22日の終値は192.95ドル、過去1年の配当額は2.7694ドルなので、配当利回りは1.44%になります。
【VTI】の過去の配当金と増配率は?
【VTI】が設定されたのは2001年5月です。下の表は過去の配当金の一覧です。
配当利回りの計算方法は、年4回配当金を支払う個別銘柄では、最新の配当金額を4倍した額が年間配当額となり、それを株価で割って配当利回りが算出されます。
ところがETFの場合は、組み込まれている銘柄によって配当金を払うタイミングが異なるため、期によってバラバラになります。そこで、最新の配当金と過去3回の配当金を足した数字、つまり過去1年分の配当額が年間配当額となり、それを元に配当利回りが算出されることが多いです。
今回の【VTI】の配当が増配or減配なのかは、どのデータを比較するかによって異なります。もっともオーソドックスなのは、前年の同期との配当額の比較です。今回が0.7818ドル、前年の同期が0.8855ドルなので11.7%の減配になります。また、前年同期との過去1年配当額の比較では、今回が2.7694ドル、前年の同期が2.9047ドルなので、4.7%減配となります。
※背景が赤になっているのが減配です
【VTI】の年間配当額と年間増配率は?
【VTI】の配当金を1年ごとにまとめてグラフ化しました。2020年の配当合計金額は前年よりも4.7%減りました。
【VTI】の期別配当は?
2020年は6月の配当が素晴らしかったがですが、それ以外の3、9、12月の配当は前年を下回りました。ただし2018年と比較すると増えていますので、2019年が良すぎたという考え方もできそうです。
【VTI】の過去1年配当額を棒グラフで確認しよう
先ほどの表の過去1年配当額を棒グラフにして、【VTI】の株価と比較しました。過去1年配当額の伸びと株価の動きは、ある程度連動しています。最近の過去1年配当額は足踏み状態ですが、株価は急激に伸びています。
【VTI】の配当額を棒グラフで確認しよう
こちらは期ごとの配当額を株価と比較したものです。2019年12月の配当が圧倒的に多いです。それを除けば、今回の配当が一番多いです。
今年に入ってからの配当利回りは?
2020年に入ってからの【VTI】の株価と配当利回りを見てみましょう。過去1年の年間配当額から算出しました。青線が株価(左軸)で、赤線が配当利回り(右軸)です。配当利回りは1.7%前後で推移していましたが、2月半ば以降は株価が下がったため、3月23日には配当利回りが2.6%まで上昇しました。現在はコロナ・ショック以前を株価が上回り、配当利回りは1.44%です。
現在の【VTI】の株価と配当利回りの関係は?
年間配当額が現在と同じく2.7694ドルで変わらなかったら、配当利回りはどのように変化するでしょうか。下のグラフは年間配当額が現在と同じ2.7694ドルが続いた場合の、配当利回りと株価の相関図です。配当利回りを0.2%ごとに株価を出しました。今後【VTI】を購入しようと考えている人は、目安にしてください。
【VTI】を過去に買っていた場合のYOCは?
過去に【VTI】を買った場合、現在の購入単価当たりの配当利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 現在から5年前までの株価、配当利回り、YOCを見ていきましょう。株価は月末のもので月1回なので、やや大雑把です。下のグラフの黄色の線が、過去に買った場合の、現在の購入単価当たりの配当利回り(YOC)です。
2020年12月22日の終値は192.95ドル、過去1年の配当金額は2.7694ドルなので、現在の配当利回りは約1.44%です。過去5年の平均配当利回りは約1.83%です。過去5年で株価は右肩上がりで、増配もしていますので、早い時期に買った方がYOCは上がります。2016年1月頃に買っていたら、現在YOCは約2.8%になっていました。
【VTI】の今後の配当予想は?
現在の過去1年配当金額(2.7694ドル)と1、3、5、10年前の同時期の過去1年配当金額(2.9047ドル、2.343ドル、2.067ドル、1.148ドル)を比較して年間増配率を計算し、それを使って将来の配当金とYOCを予想しました。
YOC(Yield on Cost)とは、購入単価あたりの配当利回りのことです。【VTI】株を2020年12月22日の終値192.95ドルで買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。棒グラフが配当金予想、折れ線グラフがYOC予想です。
年間増配率は過去1年がマイナス4.7%、過去3年が5.7%、過去5年が6.0%、過去10年が9.2%でした。現在の配当利回りは1.44%です。もっとも増配率の低い過去1年のペースだと10年後のYOCは0.9%、20年後のYOCは0.6%になります。もっとも成績の良い過去10年の増配率を当てはめると10年後のYOCは3.5%、20年後のYOCは8.4%になります。どの期間の増配率を当てはめるかによって大きく結果は異なりました。真ん中の過去3年、5年に近い増配率で進みそうな気がします。
【VTI】のセクター別のファンド構成比は?
【VTI】に組み込まれている銘柄のセクター別の組込比率です。バンガードの公式サイトではICB(Industry Classification Benchmark)で分類されていますので、これをGICS(Global Industry Classification Standard)に変換しました。情報技術の割合が最も多く、全体の4分の1以上を占めています。以下、ヘルスケア、一般消費財、金融、通信サービスと続いています。
【VTI】の上位組込銘柄はどんな会社か?
【VTI】の組込比率0.5%以上の上位34銘柄です。ベンチマークは、CRSP USトータル・マーケット・インデックスです。上位34銘柄で、全体の37.9%を占めています。
過去8カ月の組込比率1%以上の銘柄比較
最近8カ月間の組込比率0.5%以上の銘柄の比較です。上位の中ではテスラ【TSLA】が急上昇しています。
まとめ
【VTI】の今回の配当は今ひとつでした。S&P500連動型ETFの【VOO】もマイナスでした。この2つのETFは昨年12月の配当が多かったため、その時点との比較でイマイチの結果になったようにも見えます。
1年前と比較して、組込上位にテスラ【TSLA】のような配当金を払わないハイテク・グロース銘柄の割合が増えたのが、減配の理由かもしれません。逆に高配当銘柄は1年前と比べて株価が伸び悩んでいるため、【VTI】内の比率が少なくなり、その結果配当が減ったと考えられます。
今後も今年同様にハイテク・グロース株が伸びるのなら、時価総額加重平均方式を採用している市場全体の指数系ETFは、株価は上がるけど配当金はあまり増えない傾向が続くかもしれません。
なお、例年通りだと、次回は3月の後半に配当金額が決定し、その数日後に配当落ちになりそうです。