JPモルガン・エクイティ・プレミアム・インカムETF【JEPI】が2021年12月29日に分配金を発表しました。は0.4586ドル(厳密には0.45861ドル)でした。
1年前の同期は0.5428ドルだったので、1年前の同期との比較では15.5%減です。前回2021年12月の分配金は0.3824ドルなので、前期との比較では19.9%増です。
2022年1月7日の終値は62.56ドル、過去1年の分配金は4.1612ドルなので、利回りは6.65%になります。
※このページでの利回りは、過去1年間の分配金をもとに計算します。
【JEPI】の過去の分配金と増配率は?
【QYLD】が設定されたのは2020年5月です。下の表は過去の配当金の一覧です。データが少ないので何とも言えませんが、2021年の分配金は2020年と比べて減少傾向です。前年の同期と比べると(右から4列目)、20%ぐらい減っていますね。
※背景が赤になっているのが対象月と比べてマイナスです
【JEPI】の毎月の分配金は?
期別の分配金を重ねて1年後とにしました。権利落ちは毎月1日ごろです。1月はなく、12月に繰り上がるため、12月は2回あります。2020年と比べて、2021年は結構減っていますが、最後に盛り返しました。
横に一列に並べると、2021年2月から一気に減ったのがわかります。最近は回復傾向です。
設定以来の株価、利回り、YOCは?
株価と利回りの比較しましょう。株価が青い線です。緩やかながら上昇しています。2020年5月が50ドル。2022年1月が62.5ドル。設定当初から約1.25倍になっています。
利回りを過去12カ月の分配金から算出したものが、赤い線です。分配金を支払いはじめてから1年後から登場します。2021年5月は8.1%、現在の2022年1月7日は6.65%ですね。
現在の分配金を12倍して利回りを計算する方法もあります。これが黄色い線です。毎月分配金が異なりますのでデコボコです。直近の利回りは8.80%です。最近1年は分配金が少なめでしたが、今回は結構増えましたので、直近の利回りが高い状態になっています。
ちなみに毎月分配型のETFは現在の分配金を1年換算したものを使うケースもありますが、【JEPI】のように月々の分配金の差が激しい場合は、過去12カ月の分配金から利回りを計算したほうがしっくりきますね。
ライバルETFとの比較
【JEPI】のライバルといわれるカバードコールETFの【XYLD】、【XYLG】、そして【QYLD】と主要データを比べましょう。
もともと【QYLD】は日本の証券会社でも購入可能でしたが、2021年10月中盤より【JEPI】が買えるようになり、2021年11月の頭からは【XYLD】や【XYLG】が購入できるようになりました。
【XYLD】はS&P500をカバードコールするETFなので、【JEPI】との類似性があります。【XYLG】は保有しているS&P500の半分をカバードコールします。そして、【QYLD】はナスダック100指数のカバードコールなので、少し異なります。
運用総額は【JEPI】と【QYLD】が6000億円を超えており、競っています。【XYLD】は920億円なので、一桁少ないですね。【JEPI】は設定が2020年5月なので、2年弱ほどしかないです。設定から短い期間と考えると、売れ行きはかなり好調と言えます。
過去1年分配金から算出した利回りは、通常は【QYLD】【XYLD】【JEPI】の順で高いです。ただ、2021年12月の分配金で50%カバードコールETFの【QYLG】と【XYLG】がとてつもない金額だったので、現在この両銘柄の利回りは通常よりかなり高い状態です。
分配金利回り(12カ月)は過去1年の分配金から算出したものです。
分配金利回り(直近)は直近の分配金が今後1年続いたものとして算出しました
カバードコール系ETFの利回り推移
カバードコール系ETFの2021年12月の分配金はいずれも好調でした。とくに【QYLG】【XYLG】は凄まじい額だったので、直近の分配金を1年換算して株価で割って利回りを求めると、以下のグラフのような推移になります。
カバードコール系ETFの利回りを過去1年分配金から算出
先ほどのグラフだと、少しイメージしづらいかもしれません。過去1年の分配金から利回りを算出しました。【QYLG】【XYLG】は2021年12月が凄まじかったので、過去1年からの利回りでも、爆上げしています。【QYLD】も通常よりは多かったです。
2021年9~11月ぐらいのデータが、最近の利回りの目安かなと思います。つまり【QYLD】11%、【XYLD】9%、【JEPI】7%、【QYLG】5.5%、【XYLG】4.5%ぐらいですね。
【JEPI】はどんなETFか?
JPモルガン・エクイティ・プレミアム・インカムETF【JEPI】は、オプションの販売と米国大型株(主にS&P500)への投資を組み合わせ、オプション・プレミアムと株式配当から毎月の収益を得ることを目指します。
【JEPI】の約80%が、S&P500採用銘柄を中心とした低ボラティリティ銘柄。この部分で株価の値上がり益を狙います。
20%を上限に、エクイティ・リンク・ノート(ELN)が組み込まれています。これは、株式に連動してインカムを狙う仕組債の一種です。
エクイティ・リンク・ノート(ELN)はS&P500のコール・オプションを売るデリバティブで、S&P500でカバードコール戦略を行う【XYLD】と少し似ています。
【JEPI】はELNでインカムを狙い、大型株の部分でキャピタルゲインを狙う、いいところどりのETFとも言えます。
エクイティ・リンク・ノート【ELN】とはどんな商品か?
【ELN】は、S&P500指数を参照するノックイン型の仕組債です。
参考までに、日経平均リンク債を例に挙げます。以下のようなルールです。
期間、クーポン(利率)、ノックインレベルを設定し、ノックアウト(早期償還)判定を定期的に行います。発行体はオプションの売りのポジションを取るので、オプション料がクーポンとしてもらえますね。
(1)?(2):保有期間中にノックアウトを上回った場合は、額面価格(行使価格)で早期償還となります。
(3):償還時までノックインとノックアウトの間で推移すれば、高いクーポンをもらえます。このケースを目標としています。
(5):保有期間中にノックインを下回った場合は、償還時の価格で支払いとなるので、マイナスになるケースが多いです。(4):一度ノックインを下回った後、償還時の価格が額面価格以上になった場合は、額面価格(行使価格)での償還となります。

【JEPI】のセクター比率は?
【JEPI】に組み込まれている銘柄のセクター別の組込比率です。かなり分散されています。ヘルスケア、情報技術、資本財、金融、生活必需品がそれぞれ10%強です。ELN(Equity Linked Note)が16.3%です。
右の円グラフ、S&P500ETF【VOO】と比較すると、情報技術セクターの比率がかなり減って、資本財と生活必需品セクターが増えました。
【JEPI】は、主にS&P500の中から低ボラティリティ銘柄を採用する方針です。情報技術セクターはボラティリティが激しい銘柄が多く、資本財や生活必需品セクターは株価の安定した連続増配銘柄が多いためですね。
【JEPI】の上位組込銘柄は?
【JEPI】の組込上位には【SPX】が目立ちます。これはS&P500に連動したエクイティ・リンク・ノート(ELN)です。全部で10銘柄あり、合計比率は16.3%です。
株式の利回りは?
下の表は【JEPI】に組み込まれている株式の上位10銘柄です。有名な銘柄と地味な銘柄が入り混じっている感じですね。
昨年10月と比較してもあまり変化はないですね。オールド・ドミニオン・フレイト・ライン【ODFL】は老舗トラック輸送。プログレッシブ【PGR】は自動車保険会社。日本ではあまり知られていない銘柄ですね
なお、株の組込銘柄数は全部で約100銘柄で、組込比率を考慮した場合の利回りは約1.4%です。それほど高くないですね。
ELNとは利率(クーポンレート)はどのくらいか?
下の表はJPモルガンアセットマネジメントのアニュアルレポートに記載されている内容です。
【ELN】の発行体はトロント・ドミニオン銀行、カナダ・ロイヤル銀行、BNPパリバ、UBS、シティグループなど世界的な金融機関ばかりです。償還日が1週ずつずれています。
左が2021年1月、右が2021年8月です。下の表の赤線を引いたところが、ELNのクーポンレート(いわゆる利率)です。2021年1月は53~63%で、2021年8月は35~39%です。約20%も下がっています。ちなみに、ELNの占める割合は、JEPIの中で最大で20%と定められています。
JEPIの利回りを計算してみよう
先ほどの2021年8月のELNのクーポンレートなどを使って、実際の利回りがどのくらいか計算しましょう。
左の円グラフが【JEPI】の株とELNの割合です。まずは右上の表で計算します。円グラフが2021年10月、中身は8月なので、少し時期が違いますがご容赦ください。
株の比率84.3%に、先ほど株式の全組込銘柄から算出した利回り1.4%を掛けると118になります。
ELNの比率は15.7%、こちらはクーポンレート平均が約37%ぐらいなので、掛けると580.9。
この2つの数字を足すと698.9。これを合計比率100で割ると6.99%になります。
つまり2021年8月の利回りは約7%です。
同じように、右下の表は2021年1月のクーポンレートで計算しました。
株とELNの比率や利回りは多少違うかもしれませんが、利回りは9.82%と出ました。
運用総額の変化は?
【JEPI】とライバルのカバードコールETF【XYLD】【QYLD】【XYLG】の運用総額の変化を比較しました。表の上に伸びている緑棒が資金が流入(売れた)、下に伸びている赤棒が資金流出(売られた)です。
【JEPI】設定された2020年5月以降のデータです。50.68億ドル増えています。【QYLD】もほぼ同じ50.06億ドル増えています。【XYLD】は7.85億ドル増です。
売れ行きのグラフでは【XYLD】が最近は好調のように見えます。ただし一桁少ないです。ETF DATABATEのデータです。
ライバルETFとトータルリターンを比較する
【JEPI】とライバルETFのトータルリターンを比較します。S&P500をカバードコールするETF【XYLD】、その50%をカバードコールする【XYLG】、ナスダック100をカバードコールするETF【QYLD】と比べました。もっとも後発の【XYLG】が設定されたのが2020年9月なので、2020年11月から2021年12月までの1年2カ月間を比較します。PORTFOLIO VISUALIZERを使用しました。
2020年11月に1万ドル投資して配当を再投資した場合、2021年12月には【XYLG】が1万3900ドル、【JEPI】が1万3400ドル、【XYLD】が1万3100ドル、【QYLD】が1万2700ドルになっていました。
期間が短いので何とも言えませんが、【JEPI】は2番目です。S&P500を50%カバードコールする【XYLG】が好調です。
主要ETFとの分配金比較は?
2020年11月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合の年間でもらえる分配金の推移です。分配金は再投資します。税金は考慮しません。
1年2カ月間の分配金の合計は【QYLD】が2000ドル、【XYLD】が1200ドル、【JEPI】が1100ドル、【XYLG】が1000ドルでした。現在の利回りとだいたい一致していますね。
【JEPI】の今後のYOC予想は?
現在の過去1年分配金額(4.1612ドル)と過去の同時期の過去1年分配金額を比較して年間増配率を計算し、それを使って将来YOCを予想しようと思ったのですが、分配金を支払い始めてから1年7カ月ほどしか経っていないので、増配率を計算できません。
そこで、年間増配率が変化なし、1%、マイナス1%、2%という4つのパターンで検証します。
ちなみに、YOC(Yield on Cost)とは、購入単価あたりの利回りのことです。【JEPI】株を2022年1月7日の終値62.56ドルで買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。
現在の利回りは6.65%です。
「分配金を再投資しない」「分配金を再投資しない(税引き後)」「分配金を再投資する」「分配金を再投資する(税引き後)」の4パターンで検証します
分配金を再投資しない場合のYOC
まずは分配金を再投資しない場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。スタート年は、現在の利回りの6.65%です。
もっとも増配率の低い増配率マイナス1%で推移すると、5年後のYOCは6.33%、10年後のYOCは6.02%になります。もっとも成績の良い増配率2%で推移すると5年後のYOCは7.34%ドル、10年後のYOCは8.11%です。
分配金を再投資しない場合(税引き後)のYOC
次に分配金を再投資しないケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%が支払われます。スタート年のYOCは6.65%ではなく、税引き後の4.79%になります。
もっとも増配率の低い増配率マイナス1%で推移すると、5年後のYOCは4.55%、10年後のYOCは4.33%になります。もっとも成績の良い増配率2%で推移すると5年後のYOCは5.29%ドル、10年後のYOCは5.84%です。
分配金を再投資する場合のYOC
それでは分配金を年1回再投資する場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。
もっとも増配率の低い増配率マイナス1%で推移すると、5年後のYOCは8.67%、10年後のYOCは11.13%になります。もっとも成績の良い増配率2%で推移すると5年後のYOCは10.25%ドル、10年後のYOCは16.35%です。
分配金を再投資する場合(税引き後)のYOC
最後に分配金を再投資するケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%が支払われます。スタート年のYOCは6.65%ではなく、税引き後の4.79%になります。
もっとも増配率の低い増配率マイナス1%で推移すると、5年後のYOCは5.73%、10年後のYOCは6.77%になります。もっとも成績の良い増配率2%で推移すると5年後のYOCは6.74%ドル、10年後のYOCは9.72%です。
設定から日が経っていないので将来のことは予想しづらいですが、【JEPI】は利回りがかなり高いので、分配金が維持されていた場合、再投資し続ければ、YOCはかなり期待できます。
まとめ
【JEPI】は設定から日が浅いので、データからの傾向はつかみづらいです。【QYLD】への投資比率が高い人が、こちらに少し振り分けるなどの使い方がいいかもしれません。
S&P500をカバードコールする【XYLD】とは、似ています。利回りは【XYLD】のが高いですが、リターンはわずかに【JEPI】が優勢です。
経費率が0.35%と低いのは、評価できます。超高配当ETFの中ではかなり良心的です。これが売れている理由かもしれません。
分配金は1年前と比べて下がっていましたが、直近の分配金はかなり回復しました。



