ブラックロック社のiシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF【HDV】が、2022年3月23日に分配金を発表しました。0.7698ドル(厳密には0.76976ドル)です。1年前の同期は0.8821ドルでしたので、1年前の同期と比べて12.7%減です。
利回りを過去1年間の分配金額から算出すると、2022年3月23日の終値は106.06ドル、過去1年の分配金額は3.3957ドルなので、利回りは3.20%になります。
※このページでの利回りは過去1年間の分配金をもとに計算します。
【HDV】の過去の分配金と増配率は?
下の表は「HDV」の過去の分配金の一覧です。
今回の【HDV】の分配金が増配or減配なのかは、どのデータを比較するかによって異なります。なぜかというと、四半期ごとに分配金を支払っているETFは、期によって支払額が異なるからです。
もっともオーソドックスなのは、前年の同期との分配金額の比較です。今回が0.7698ドル、前年の同期が0.8821ドルなので12.7%減になります。表の右から4列目の「対前年同期増減率」という部分が、この数値を比較した結果です。
また、前年同期との過去1年分配金額の比較も重要です。今回が3.3957ドル、前年の同期が3.5356ドルなので、4.0%減です。表の一番右側の「過去1年分配金額の対前年同期増減率」というところです。ここがプラスだと増配傾向と言えます。
※背景が赤になっているのが減配です
【HDV】の期別分配金は?
コロナ・ショックがあったにもかかわらず、2020年の分配金は大きく伸びました。2021年の分配金は12月は過去最高額でしたが、年間トータルでは前年をわずかに下回りました。今回やや少なかったのは、前回が多すぎたためかもしれません。
【HDV】の年間分配金額と株価の比較は?
こちらは年間分配金と株価の比較です。株価は最新年を除いて年末のものです。【HDV】の分配金が最初に支払われたのは2011年6月です。直近の2022年は3月のみで、あと3回分配金があります。
株価と分配金の伸びは似ていますね。これが似ているというのは、利回りがほぼ同じで推移していることを意味しています。
2021年の年間分配金を、9年前の2012年と比較すると1.67倍です。
【HDV】の分配金額を棒グラフで確認しよう
期ごとの分配金額を株価と比較しました。最近は期によって少し差が出てきています。前回2021年の12月が初めて1ドルの大台(1.0515ドル)に乗りました。それに比べると今回は物足りないかもしれません。
【HDV】の過去1年分配金額を棒グラフで確認しよう
過去1年分配金額を棒グラフにして、【HDV】の株価と比較しました。先ほどの期別分配金と比べると、マイルドになります。高配当ETFの分配金は期ごとで一喜一憂するのではなく、過去1年分などを比較して、伸びているかどうかをチェックするのが重要です。
過去1年分配金額は、株価とある程度連動しています。コロナ・ショックの2020年3月に株価は大幅に下がりましが、過去1年分配金はほとんど減少がなかったです。
【HDV】の年間増配率は?
年間増配率はどうでしょうか? 最初に分配金が支払われたのが2011年の6月からなので、2013年から見てみましょう。これまでに2度、前年よりマイナスだった年があります。ただし、その前年はどちらも二桁増配です。つまり、前の年に分配金を出しすぎたため、そのしわ寄せが来たとも考えられます。
長期の増配率をチェック!
1年ごとの増配率は年によって差が激しいので、イメージしづらいかもしれません。そういう時は、複数年単位で増配率をチェックしましょう。下のグラフは過去3年と過去5年の増配率の推移です。
2017年以降は4~7%で推移しています。今後も4~6%ぐらいで推移しそうですね。
期ごとの分配金を前年同期と比較!
こちらは期ごとの分配金を、前年同期と比較したものです。
プラスの時が多いですが、10%ぐらいのマイナスのときが結構あります。ETFの分配金の増減はそれほど細かく気にする必要はないのかもしれません。
2020年以降の利回りは?
2020年に入ってからの【HDV】の株価と利回りを見てみましょう。利回りは、過去1年の年間分配金額から算出しました。青線が株価(左軸)で、赤線が利回り(右軸)です。
利回りは2020年の年初は3.4%前後で推移していましたが、2月半ば以降は株価が急落し、3月23日には利回りが5.18%まで上昇しました。現在は株価がコロナ・ショック前を上回り、利回りは3.20%です。
現在の【HDV】の株価と利回りの関係は?
年間分配金額が現在と同じく3.3957ドルで変わらなかったら、利回りはどのように変化するでしょうか。下のグラフは年間分配金額が現在と同じ3.3957ドルが続いた場合の、利回りと株価の相関図です。利回りを0.1%ごとに株価を出しました。今後【HDV】を購入しようと考えている人は、目安にしてください。
過去10年間の利回り、YOC、株価は?
過去に【HDV】を買った場合、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)はどのくらいでしょうか? 現在から10年前までの株価、利回り、YOCを見ていきましょう。株価は月末のもので月1回なので、ややアバウトです。
下のグラフの黄色の線が、過去に買った場合の、現在の購入単価当たりの利回り(YOC)です。この線が左肩上がりの場合は、株価好調&増配傾向にあるといえます。なので【HDV】は長期で見ると、なかなか好調です。
2022年3月23日の終値は106.06ドル、過去1年の分配金は3.3957ドルなので、現在の利回りは3.20%です。過去10年の平均利回りは約3.4%です。
10年前と比較して株価は上がっており、増配もしていますので、早い時期に買った方がYOCは上がります。2012年5月に買っていたら、現在YOCは約6.0%になっていました。
利回りは3~4%がレンジなので、3.5%以上で買いたいところです。
基本情報を確認しよう
【HDV】は財務が健全かつ持続的に平均以上の配当を支払うことのできる75銘柄を選び、支払った配当額の総額をベースに銘柄の加重を行います。そのため、配当利回りの高い米国の大企業が中心のETFになります。リートは対象外です。四半期に1度(3、6、9、12月)、銘柄の入れ替えがあります。
【HDV】とライバルの米国の高配当ETF【VYM】【SPYD】【DVY】を比較しましょう。経費率は【HDV】【VYM】【SPYD】は0.1%を切っていますが、【DVY】が0.39%と少し高いです。
利回りは【SPYD】がもっとも高く3.6%で、【HDV】【DVY】【VYM】と続きます。
運用総額と組込銘柄数は【VYM】が多いですね。【DVY】は運用総額は約2兆円を超え、【HDV】も約1兆円となかなかです。
【HDV】のセクター比率は?
【HDV】に組み込まれている銘柄のセクター別の組込比率です。GICS(Global Industry Classification Standard)で分類されています。
【HDV】は3月18日頃に銘柄入れ替えを実施しました。今回の入れ替えで、エネルギー・セクターにはパイオニア・ナチュラル・リソーシズ【PXD】が新加入となり、除外はありませんでしたが、比率が21.7%から17.6%に下がりました。既存のエクソン・モービル【XOM】とシェブロン【CVX】が好調で株価が上がって比率が上がりすぎたため、この両銘柄の比率を大幅に下げて調整したためです。
金融セクターは5.1%から11.8%に大幅増です。新加入のJPモルガン・チェース【JPM】の組込比率6.3%分ぐらいが増えています。
組込銘柄数とセクター比率の比較
【HDV】の組込銘柄数は金融と公益事業が15銘柄ずつで最多です。どちらもセクター比率はそれほど高くありません。セクター比率の首位ヘルスケアは、組込銘柄数では6と少ないです。ヘルスケア・セクターの6銘柄はすべて20位以内に入っており、時価総額の大きい銘柄ばかりです。
【HDV】とライバルETFのセクター比率は?
高配当ETF【SPYD】【DVY】【HDV】【VYM】、連続増配ETF【SDY】【VIG】に組み込まれている銘柄のセクター比率を比べましょう。
【HDV】はヘルスケアが多いですね。高配当ETFでヘルスケア・セクターが多いのは珍しいです。エネルギ、生活必需品を含めて上位3セクターで約58%と半分以上を占めており、少し偏っています。
【HDV】以外は金融が多いです。
生活必需品、ヘルスケア、情報技術の3セクターは、近年は不景気に強い傾向があります。【HDV】【VYM】【VIG】はこの3セクターが多く組み込まれています。
【DVY】と【SPYD】は上位セクターが似ています。どちらも金融、公益事業、エネルギー、生活必需品が上位です。また、不動産がそれなりに組み込まれているのは【SPYD】と【SDY】です。
【HDV】の上位組込銘柄はどんな会社か?
【HDV】の組込比率1%以上の3月18日のデータです。全部で26銘柄あります。ベンチマークは、モーニングスター配当フォーカス指数です。上位26銘柄で、全体の約86%を占めており、かなりの集中投資といえます。上位10銘柄でも全体の52%なので、上位銘柄の影響が大きく出るETFと言えます。
【HDV】は配当金の総支払額によって加重平均しています。つまり、並び順は時価総額と配当利回りを掛けた数値のほぼ大きい順になります。下の表の右から2列目です。
【HDV】は財務の健全性が高く、持続的に平均以上の配当を支払うことのできる、質の高い米国籍企業が対象です。そのため、上位組込銘柄のほとんどが連続増配年数も10年を超えています。表の一番右側の列です。
2020年5月以降の上位銘柄は?
上位組込銘柄の推移です。【HDV】は毎年3、6、9、12月の中盤から後半にかけて銘柄の入れ替えがあります。下の表ではすべての期間で銘柄の入れ替えが行われています。
上位12銘柄の顔ぶれはあまり変化がないですね。常連組の最近の変化はAT&T【T】、ファイザー【PFE】がいなくなり、JPモルガン・チェース【JPM】が久々に加入したぐらいです。
【HDV】は年4回銘柄を入れ替えていますが、コアの部分は不動のメンバーで固められており、しかも比率が高いですね。
【HDV】上位20銘柄は主要ETFには組み込まれているのか?
【HDV】の組込比率上位20銘柄は、他のETFにどのくらいの割合で組み込まれているのでしょうか? 高配当【SPYD】【HDV】【DVY】【VYM】、連続増配【SDY】【VIG】、市場全体【DIA】【VOO】【VTI】、ハイテク・グロース系【QQQ】【VUG】【VGT】の主要12ETFへの組込比率(%)をまとめました。
背景色のオレンジ色が濃いほど、組込比率が高いことを意味しています。【HDV】の上位銘柄は濃いオレンジ色なので、他のETFよりも集中投資なのがはっきりとわかりますね。
【HDV】の組込上位銘柄は、すべて【VYM】にも組み込まれています。
【HDV】と【VYM】の重複率は40%と一番高いです。また【VYM】の中には【HDV】組込銘柄が93%も含まれています。
【HDV】との重複率では高配当【SPYD】【DVY】、連続増配【VIG】がいずれも24%と高いです。
【HDV】上位銘柄は利回りが3%を超えていると【SPYD】【DVY】【SDY】に組み込まれており、3%未満は【VIG】【DIA】の上位に入っています。【HDV】は高配当が主力ですが、利回りの高くない健全な銘柄もフォローしていると考えられます。
※組込比率は、【HDV】は2022年3月18日、バンガード社のETFは2月末、その他のETFは3月14日頃のデータをもとにしています。【DIA】は株価の高い銘柄が比率が高くなり、【SPYD】は均等平均加重組入なので、これらのETFの組込比率はそれほど重要ではありません。
主要ETFのティッカー・コードの下の数字は3月18日の利回り(%)です。
一番下のETF同士の比率は「etfrc.com」のデータです。
ライバルETFとトータルリターンを比較する
【HDV】とライバルの高配当ETF【DVY】【VYM】、連続増配ETF【SDY】でトータルリターンを比較します。PORTFOLIO VISUALIZERを使って、10年間を比べます。
2012年3月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合、2022年2月には【SDY】が3万2300ドル、【VYM】が3万1600ドル、【DVY】が3万1500ドル、【HDV】が2万6200ドルになっていました。【VYM】【DVY】【SDY】はほぼ同じですね。【HDV】はコロナ・ショック以降の戻りが今ひとつです。
過去の分配金はどのくらいか?
2012年3月に1万ドル投資して分配金を再投資した場合の年間でもらえる分配金の推移です。税金は考慮しません。PORTFOLIO VISUALIZERのデータです。
10年間の分配金の合計は【SDY】が6700ドル、【DVY】が6300ドル、【HDV】が6100ドル、【VYM】が5800ドルでした。
【SDY】が頭一つ抜けていますが、2013~17年などにキャピタルゲイン分配金があったためです。それを除くと、他のETFと同じくらいです。【HDV】はまずまずです。
主要ETFとのトータルリターン比較
高配当【SPYD】【HDV】【DVY】【VYM】、連続増配【SDY】【VIG】、インデックス【DIA】【VOO】【VTI】、ハイテク・グロース【VUG】【QQQ】【VGT】の過去1、3、5、10年のトータルリターンを比較しました。現在の利回りは★です。
【HDV】の過去3年以上リターンはこの中では一番悪いですね。過去1年のリターンは好調です。
危険度はどのくらいか?
ETFの安定度を比べてみましょう。最大ドローダウンは、計測期間における最大下落率です。マイナスの数値が小さいほど最大下落率が低いです。
シャープレシオとは、同じリスクを取った場合のリターンの比較です。「(ファンドのリターン?無リスク資産のリターン)÷標準偏差」の値です。
ソルティノレシオはシャープレシオの改良版で、相場が軟調の際の成績を示しています。「(ファンドのリターン-無リスク資産のリターン)÷下方偏差」で計算します。
【HDV】は下落耐性はまずまずで、【SPYD】や【DVY】より安定しています。
主要ETFと増配率を比較する
高配当【SPYD】【HDV】【DVY】【VYM】、連続増配【SDY】【VIG】、インデックス【DIA】【VOO】【VTI】、ハイテク・グロース【VUG】【QQQ】【VGT】の過去の増配率を比較しました。
2022年3月の分配金決定後を基準としたデータです。
どの期間も素晴らしいのが【VIG】です。【SDY】もなかなかですが、2013~17年の特別分配金を含んでいません。
【HDV】の増配率は過去10年は8.9%と高いですが、年々減ってきています。過去1年ではマイナス4.0%です。
いずれのETFも過去10年は増配率が高いですが、それと比べると過去1年や3年は少し減っています。例外は【VIG】ですね。
【HDV】の今後のYOC予想は?
現在の過去1年分配金額(3.3957ドル)と1、3、5、10年前の同時期の過去1年分配金額(3.5356ドル、3.1184ドル、2.7456ドル、1.441ドル)を比較して年間増配率を計算し、それを使って将来YOCを予想します。YOC(Yield on Cost)とは、購入単価あたりの利回りのことです。【HDV】株を2022年3月23日の終値106.06ドルで買った場合、将来の利回り(YOC)がいくらになるかという予測です。
年間増配率は過去1年がマイナス4.0%、過去3年が2.9%、過去5年が4.3%、過去10年が8.9%でした。現在の利回りは3.20%です。
「分配金を再投資しない」「分配金を再投資しない(税引き後)」「分配金を再投資する」「分配金を再投資する(税引き後)」の4パターンで検証します
分配金を再投資しない場合のYOC
まずは分配金を再投資しない場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。スタート年のYOCは、現在の利回りの3.20%です。
もっとも増配率の低い過去1年の増配率(マイナス4.0%)で推移すると、10年後のYOCは2.1%、20年後のYOCは1.4%になります。もっとも成績の良い過去10年の増配率(8.9%)で推移すると10年後のYOCは7.5%、20年後のYOCは17.8%です。
分配金を再投資しない場合(税引き後)のYOC
次に分配金を再投資しないケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%で計算します。スタート年のYOCは3.20%ではなく、税引き後の2.31%になります。
もっとも増配率の低い過去1年の増配率(マイナス4.0%)で推移すると、10年後のYOCは1.5%、20年後のYOCは1.0%になります。もっとも成績の良い過去10年の増配率(8.9%)で推移すると10年後のYOCは5.4%、20年後のYOCは12.8%です。
分配金を再投資する場合のYOC
それでは分配金を年1回再投資する場合のYOCを見てみましょう。税金は考慮しません。再投資する分配金額は、10年間の株価の年平均成長率(CAGR)を計算し、それを使って調整します。【HDV】の過去10年株価のCAGRは6.38%なので、再投資する際の分配金はその分少なくします。
もっとも増配率の低い過去1年の増配率(マイナス4.0%)で推移すると、10年後のYOCは2.7%、20年後のYOCは2.2%になります。もっとも成績の良い過去10年の増配率(8.9%)で推移すると10年後のYOCは11.8%、20年後のYOCは76.4%です。
分配金を再投資する場合(税引き後)のYOC
最後に分配金を再投資するケースで、税金を引いた場合のYOCをチェックしましょう。分配金は約28%の税金を引いた72%で計算します。スタート年のYOCは3.20%ではなく、税引き後の2.31%になります。
もっとも増配率の低い過去1年の増配率(マイナス4.0%)で推移すると、10年後のYOCは1.8%、20年後のYOCは1.4%になります。もっとも成績の良い過去10年の増配率(8.9%)で推移すると10年後のYOCは7.5%、20年後のYOCは37.0%です。
【HDV】は過去1年増配率(マイナス4.0%)と過去10年増配率(8.9%)では差が大きいので、結果は大きく異なりました。過去10年増配率は設定当初の分配金が少なかった頃が対象なので、あまりアテにならないかもしれません。過去3年や5年ぐらいで推移する可能性が高そうです。
ちなみに過去3年の増配率(2.9%)で推移すると、10年後のYOCは3.9%、20年後のYOCは7.2%になります。過去5年の増配率(4.3%)で推移すると10年後のYOCは4.6%、20年後のYOCは10.4%です。
まとめ
【HDV】の今回の分配金は今ひとつで、1年前の同期と比較して12.7%減でした。
前回2021年12月が1.0515ドルと史上最高額を大きく更新したため、そのしわ寄せが来た可能性が考えられます。また、前回の2021年12月の銘柄入れ替えで高配当のAT&T【T】が除外された影響もありそうです。
年間増配率は3~6%ぐらいで推移しそうです。
トータルリターンは【VYM】や【DVY】には劣り、【SPYD】と同水準です。