2024年の米国高配当&増配ETFの分配金が決定しました。
今回はVYM、SCHD、DGRO、HDV、SPYD、DVY、VIG、DGRW、VOOなど18種類のETFを徹底分析します。
最新データをもとに、様々な角度から比較します。
ETFの特徴、運用会社、分配金利回り、経費率、ETFの規模、組入れ方式、東証版や投資信託版、NISA口座の対応、セクター、組入れ銘柄の規模、トータルリターン、シャープレシオ、リスク、過去に購入した場合のYOC、増配率、将来YOC予測など、ややマニアックなデータが満載です。
基本データ比較、その1(運用会社、分配金利回り、種類)
今回は米国の高配当や増配をテーマにした18のETFを徹底比較します。
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まずは基本データを確認していきます。
表内の赤字は、他のETFと比べて数値が優れているという意味です。たとえば分配金利回りなら【SPYD】と【FDL】が4%台と高いです。
表の一番下は、18ETFを分配金利回りごとに分類しました。ある程度の目安です。高配当、高配当&増配、中配当&増配、低配当&増配、市場全体の5つです。増配がコンセプトに入っていないETFもありますが、組入れ銘柄を見ると増配傾向の銘柄が多く入っています。
ETFの運用会社は8つあります。バンガードが最多で4つです。運用会社ごとに見ていきましょう。
運用会社ごとにETFを確認
ETFを運用会社ごとに分けました。
バンガードが4つで、ブラックロック、ウィズダムツリー、ファーストトラストが3つ、ステートストリートが2つです。チャールズシュワブとグローバルXとプロシェアーズが1つずつです。
運用会社のカラーは、ある程度コーポレートカラーを参考にしました。
バンガードは紺色、ブラックロックはモノトーン、ステートストリートが紺色、ウィズダムツリー緑色、ファーストトラストが水色です。
複数のETFがある場合は、運用会社のカラーと似ている色を使用しています。
分配金利回りは?
分配金利回りをグラフにしました。2025年1月24日のものです。過去12カ月の分配金から算出しました。
上段の左上の【SPYD】が分配金利回りがもっとも高く、下段の右下の【VOO】が分配金利回りがもっとも低いです。
今回のコンテンツは、上下2段に分けたタイプのグラフが頻繁に登場します。並び順は分配金利回りの高い順です。
グラフで使用するカラーは、ティッカーコードの背景色を使います。
高配当に分類したのは、分配金利回りが3.5%以上のETF。【SPYD】、【FDL】、【HDV】、【DHS】、【DVY】、【SCHD】の6つです。
高配当&増配に分類したのは、分配金利回りが2%台の後半のETF。【QDIV】、【VYM】、【SDY】、の3つです。
中配当&増配に分類したのは、分配金利回りが2%前後。【VTV】、【DGRO】、【FVD】、【NOBL】、【DLN】の5つです。
低配当&増配に分類したのは、分配金利回りが1%台の後半。【VIG】、【RDVY】、【DGRW】の3つです。
そして【VOO】が市場全体です。
ETFのコンセプトは?
ETFのコンセプトはさまざまです。
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【VYM】のように配当利回りが平均以上というシンプルなものもあれば、【SCHD】のように様々な条件でスクリーニングするETFもあります。
そこで、高配当や増配ETFの定番である3つのコンセプト、高配当、増配、財務健全のどれを重視しているか分けてみました。
3要素すべてを重視していると良いファンドで、1つのみだとダメというわけではありません。
2つだけ高配当や増配ETFでないものが含まれています。規模がかなり大きいので、比較対象として向いています。
左下の【VTV】は大型バリュー銘柄という割安株を集めたETFです。バリュー株は配当利回りの高い企業が多いので、比較対象とします。
右下の【VOO】はS&P500が対象のETFです。米国株の基準とも言えるETFで、比較対象としての定番です。
基本データ比較、その2(設定年月、経費率、運用総額、組入れ方式、銘柄数、上位10銘柄比率)
続いて、基本データのその2です。設定年月、経費率、運用総額、組入れ方式、銘柄数、上位10銘柄比率です。
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銘柄数は【VYM】、【VOO】が500以上、【DGRO】が400以上と多いです。
上位10銘柄の比率が低いのは、組入れ方式の均等加重に該当するETFです。
上位10銘柄で20%を切っているのは【SPYD】、【QDIV】、【FVD】、【NOBL】で、いずれも均等加重。残りの均等加重の【RDVY】は21.3%なので、こちらもかなり低いです。
ETFが設定された年を確認
ETFが設定された年をグラフで見ていきます。
グラフの左の数値が設定された年です。いずれも長期実績があります。現在2025年なので、【QDIV】を除いて、ほぼ10年以上の歴史がありますね。
【SPYD】は今年の10月に10年を迎えます。
最も古いのは【FVD】と【DVY】で、2003年です。21年以上経過しています。
経費率を比較
経費率を確認します。グラフが小さいほど、経費率が低いです。
長期のリターンをよくするには経費率が重要なので、重視している投資家が多いですね。ただし、高配当ETFは比較的経費率が高めです。
0.1%を切っているのが8つもあります。
バンガードは4つのETFすべてが0.1%以下です。【VYM】、【VTV】、【VIG】、【VOO】です。
それ以外では【SPYD】、【HDV】、【SCHD】、【DGRO】が0.1%以下です。
ファーストトラストのETFはやや経費率が高めで、0.4%以上です。【FDL】、【FVD】、【RDVY】です。
※VIGの経費率は2025年2月より、0.06%から0.05%になりました
ETFの規模を比較
ETFの規模、運用総額をチェックしましょう。SeekingAlphaのデータです。
運用総額はETF価格×発行済み枚数です。ETFの価格が上昇し、売れ行きが好調なら、この数値が高くなります。さらに経費率も低くなる傾向のため、わりと重要です。
S&P500ETFの【VOO】が210兆円と圧倒的で、大型バリューETFの【VTV】が28兆円です。どちらも高配当や増配ETFではありません。
高配当&増配ETFの中では【VIG】が16兆円で最大規模です。【VYM】と【SCHD】は10兆円を超えており、その次に規模が大きいです。
3番手グループは【DGRO】が4.8兆円、【DVY】と【SDY】が3.1兆円ほどです。
組み入れ方式を確認
組入れ方式についてグラフで確認しましょう。
時価総額加重は規模の大きな銘柄の比率が高くなります。5つあります。バンガードの【VYM】、【VTV】、【VIG】、【VOO】がすべて入っています。大型株が多くなり、株価上昇が狙えるのがポイントです。ただし、分配金利回りが低くなる傾向です。
配当利回り加重は、配当利回りの高い銘柄の比率が高くなります。【DVY】、【SDY】の2つです。銘柄の採用条件は厳しいです。そうしないと、株価が低迷している高配当の罠銘柄が入ってしまうからです。上位銘柄はややマイナー銘柄が多く、大型株も少なめです。
配当加重は高配当ETFで採用されることが多いです。6つあります。ウィズダムツリーは【DHS】、【DLN】、【DGRW】、すべてが入っています。配当加重はETFによってルールが異なります。基本的には支払った配当額の多さで比率を決めます。時価総額加重と配当利回り加重の中間のようなイメージで、株価上昇と配当利回りの両方を狙います。大型株が多めで安定感があり、バランスが良いです
均等加重は、全銘柄の比率が同じです。5つあります。大型株が少なめで、中小型株が比較的多く入ります。どちらかというとサテライト向きです。分配金の伸びがやや不安定なことが多いです。比較的上級者向けのETFですね。
米国高配当&増配18ETFの購入手段と新NISA
18ETFの購入可能な種類について確認します。
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まずは、日本の大手ネット証券を使った米国ETFの購入。ほとんどが可能ですが、【SCHD】と【DGRO】は購入できません。
続いて東証ETFです。ブラックロックの【HDV】は【2013】として上場、【DGRO】は【2014】として上場しています。
S&P500配当貴族ETFは、米国版は【NOBL】ですが、東証ETFとしてはグローバルXの【2236】や【2095】があります。
S&P500ETFの東証版は、ブラックロックの【1655】、三菱UFJアセットの【2558】をはじめ、各資産運用会社のものがあります。
年4回の分配金を支払うタイプの投資信託は、最近増えています。設定した証券会社のみで購入可能です。【SCHD】の投資信託はSBI証券と楽天証券から、それぞれ出ています。
またSBI証券は【SPYD】、【VYM】、【VIG】の投資信託も設定しました。
今回の18ETFは、基本的に新NISAの成長投資枠の対象です。ただし毎月分配型は対象外です。そのためウィズダムツリーの【DHS】、【DLN】、【DGRW】、グローバルXの【QDIV】はNISA口座では購入できません。
分配金の税金は?
分配金にかかる税金について確認しましょう。
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【VYM】や【HDV】など、米国上場ETFは特定口座だと分配金の税金は28.3%、NISA口座の場合は10%です。
【SCHD】の投資信託や【DGRO】の東証上場ETF【2014】などは、二重課税調整制度の対象です。そのため、特定口座で購入した場合は、米国の税金がかからず20.3%です。
投資信託や東証上場ETFをNISA口座で保有した場合の税金は10%なので、米国上場ETFと同じです。
米国高配当&増配18ETFのセクター、組入れ銘柄の規模
ETF組入れ銘柄のセクター比率を比較します。GICSによる分類です。
比率が高いほど背景の色が濃くなっています。右端が合計の数値で、多い順に並んでいます。
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合計比率の1位は金融で、多くのETFで上位に入っています。【HDV】は3%なので、少ないですね。
合計比率の2位と3位は生活必需品とヘルスケアです。この2つのセクターは比較的ディフェンシブな銘柄が多く、安心できます。
合計比率4位の資本財と5位の情報技術は、左側の分配金利回りの高いETFに少なく、右側の分配金利回りの低いETFに多いです。
合計比率6位の公益事業と7位のエネルギーは逆で、左側の分配金利回りの高いETFに多く、右側の分配金利回りの低いETFに少ないです。
1つのセクターの目立ったETFとしては、不動産は【SPYD】に23%も入っており、他のETFにはあまり入っていません。
金融は【RDVY】が40%とかなり多いです。少し偏りすぎかもしれないですね。
エネルギーは【HDV】が27%と多く、公益事業は【DVY】が29%と高いです。
情報技術は【VIG】と【VOO】が多いですね。この2つのETFが人気なのがセクターからも少し伺えます。
比率1位のセクターが20%を超えていないのが、【SCHD】、【SDY】、【DLN】です。セクターの分散が効いていると言えます。
上位3セクターを比較
データが細かすぎるので、それぞれのETFの上位3セクターを抽出しました。
金融は1位が7ETF、2位が5ETFです。3位はゼロで、トップ3に入っていないのが6ETFです。
金融の入っていない【HDV】、【QDIV】、【SDY】、【FVD】、【NOBL】、【DGRW】は結構貴重かもしれないですね。財務健全を重視ているETFが多いです
3位まで入っているセクターの数は、生活必需品が11ETF、ヘルスケアが8ETF、情報技術が7ETFです。
情報技術は上段で3位以内は【VYM】のみで、残りの6ETFは下段です。高配当ETFには入っておらず、低配当の増配系などに含まれている傾向です。
上段の高配当ETFは金融、生活必需品、ヘルスケアの3セクターのうち、2つ以上入っているケースが多いです。下段の右側に位置している低配当ETFは、情報技術と金融が入っているケースが目立ちます。
組入れ銘柄の規模を比較
組入銘柄の規模を比較します。超大型株、大型株、中型株、小型株、超小型株がどのくらい入っているかです。Morningstarのデータです。
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ざっと見たところ、超大型株は右側の分配金利回りの低いETFに多いですね。
一番下がETFの組入れ方式です。この方式ごとに並び替えてみると、興味深い傾向が浮き彫りになります。
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並び替えました。超大型株と大型株は、時価総額加重と配当加重のETFが多いです。配当利回り加重と均等加重を採用しているETFは、超大型株と大型株が少なめです。
逆に中型株と小型株は、配当利回り加重と均等加重のETFが多いです。時価総額加重と配当加重のETFは、中型株と小型株が少ないですね。
つまり時価総額加重と配当加重だと規模の大きな銘柄が多く、配当利回り加重と均等加重は規模が小さな銘柄が目立つというわけですね。
最初の組入れ方式のところで説明したとおりになりました。
トータルリターンを比較しよう
トータルリターンを比較します。
まずは1年と3年です。
1年は【VOO】が25%ともっとも成績が良いです。2番手は【DLN】で19.7%、【FDL】と【DHS】が18%で3番手グループ。【VYM】が17.6%で続いています。
3年は【DGRW】が9.1%で首位。【FDL】が9.0%で差のない2番手で、【VOO】が8.9%で3番手です。【DHS】が8.3%、【DLN】が8.2%と続いています。
通常トータルリターンは分配金利回りの低い右下のグループの成績が良いですが、1年と3年に関しては上段の分配金利回りの高いETFが健闘しています。ここ数年は金利上昇の影響もあり、高配当株に有利な相場だったからです。
ただし、【SCHD】はあまり成績が良くないです。1年は11.7%、3年は4.2%で、この中では最下位に近いです。【SCHD】は高配当ETFとしては少し特殊で、バリュー株があまりなく、グロース要素が強いです。2022年の下落相場において他の高配当ETFほど恩恵を受けなかったと考えられます。
長期のリターンはどうか?
続いて、5年と10年のトータルリターンの比較です。
5年は【VOO】が14.5%で首位、【DGRW】が13%で2番手、【RDVY】が12.6%で3番手、【VIG】が11.5%で4番手。右下の4つが強いです。5番手が【SCHD】で11.1%です。
10年は【VOO】が13.1%で首位、【RDVY】が12.5%で2番手、【DGRW】が12.3%で3番手、【VIG】と【DGRO】が11.4%で4番手。5年とほぼ同じで、右下の4つが強いです。6番手は【SCHD】で11.0%です。
5年と10年は分配金利回りの低い右下の4ETFが圧倒的に強いですね。それ以外だと【SCHD】と【DGRO】が11%前後と成績がよいです。
トータルリターン、リスク、シャープレシオを比較しよう
トータルリターン、リスク、シャープレシオを比較します。縦軸がトータルリターン(年率)、横軸がリスク、括弧内の数値がシャープレシオです。
シャープレシオは投資効率の良さを示したものです。トータルリターンが高く、リスクが低いと、シャープレシオは高くなります。
表の左上がローリスク・ハイリターンで理想です。右下がハイリスク・ローリターンで良くないです。
赤い線は市場資本線です。無リスク資産のリターンの2.8%から【VOO】に向けて引きます。この線より左上が効率的という意味ですが、【VOO】はかなり優秀なので、高配当ETFのほとんどが右下に位置しています。どのくらい線に近づけるかという感じですかね。
このグラフは3年のデータです。
シャープレシオは【DGRW】が0.40でもっとも成績が良いです。2番手グループは結構混戦で、【FDL】が0.36、【VOO】が0.35、【DLN】が0.34、【DHS】が0.33です。3番手グループは【VYM】、【HDV】、【VTV】で0.3近辺です。
【SCHD】は0.09で、3年の成績は良くないです。
3年は高配当ETFが比較的健闘していますね。
ちなみに【DLN】のシャープレシオは0.34、【VOO】が0.35なので、本来なら【DLN】は赤い線よりもやや右下に位置しているはずです。なぜこうなったかを説明します。
それぞれのETFの無リスク資産のリターンを求める
Portfolio Visualizerのデータから作成しました。トータルリターン、リスク、シャープレシオのデータはありますが、無リスク資産のリターンはありません。
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そこで、右上の計算式を使って、無リスク資産のリターンを求めました。トータルリターンからシャープレシオとリスクを掛けた数値を引くと、無リスク資産のリターンになります。
各ETFの無リスク資産のリターンは右から2列目の太字です。それぞれ異なっています。
おそらく無リスク資産のリターンが固定ではなく、ETFごとに最適なデータを取得している可能性があります。
【DLN】の無リスク資産のリターンは3.07%、【VOO】は2.81%なので異なります。
仮に【DLN】の無リスク資産のリターンを【VOO】と同じ2.81%にしたら、シャープレシオは0.36になるので、【DLN】の過去3年シャープレシオで表示されていた位置でぴったりになるわけです。
5年シャープレシオは?
続いて5年です。
シャープレシオは【VOO】が0.70でもっとも成績が良いです。2番手は【DGRW】で0.68。【VOO】といい勝負ですね。3番手は【RDVY】で0.66です。かなりリスクが大きいです。4番手は【VIG】で0.60。5番手グループは【DLN】と【SCHD】で0.54です。
10年シャープレシオは?
最後は10年です。【SPYD】や【QDIV】はありません。
期間が10年と長いと、かなり成績が似てきます。
シャープレシオは【VOO】が0.77でもっとも成績が良く、差のない2番手が【DGRW】で0.76です。3番手は【VIG】で0.73で、4番手は【DGRO】で0.70です。5番手グループは【SCHD】0.66、【DLN】です。そして【RDVY】はここでもリスクが大きく、シャープレシオは0.62です。
5年や10年のデータだと、分配金利回りの低い【VOO】、【DGRW】、【VIG】が優秀ですね。
その次のグループは【DLN】、【DGRO】、【SCHD】です。【RDVY】はリターンはよいですが、リスクもかなり大きいです。
過去に購入した場合の現在YOCは?
5年前や10年前にETFを購入していた場合、現在、取得価額に対する利回り(YOC)はどのくらいになっているかというグラフです。いわゆる自分利回りというやつです。
左の赤い棒グラフが現在の分配金利回り、真ん中の青い棒グラフが5年前に購入していた場合のYOC、右の緑色の棒グラフが10年前に購入していた場合のYOCです。
5年前に購入していた場合だと、【FDL】が5.5%と最も高く、【SCHD】が5.2%で続き、【SPYD】が4.9%で3番手です。4番手は【DVY】と【DHS】で4.6%。
10年前に購入していた場合だと、【SCHD】が7.7%と最も高く、【FDL】が7.2%で続き、【DVY】が6.1%で3番手です。4番手は【DHS】で5.7%です。
総合的に見ると。【FDL】と【SCHD】が素晴らしいです。下段の中では【DGRO】が10年前に購入していた場合のYOCが5.4%とかなり高いですね。
増配率を比較しよう
増配率を見ていきましょう。
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1年、3年、5年、7年、10年増配率の一覧です。背景のオレンジ色が濃いほど増配率が高いという意味です。
【RDVY】の3年増配率21.7%が圧倒的に高いですね。
1年増配率を確認
1年の増配率をグラフにします。
【SCHD】が12.2%で最も高く、【DVY】が7.1%で2番手、【VTV】が6.7%で3番手です。
【DHS】、【QDIV】、【DLN】、【RDVY】はマイナスです。1年なので、マイナスのケースもありますね。
3年と5年増配率は?
続いて3年と5年の増配率です。
3年は【RDVY】が21.7%と圧倒的に素晴らしく、【SCHD】が9.9%で続き、【FDL】が9.6%で3番手です。8%台は【DHS】、【DGRO】、【FVD】、【VIG】です。
5年は【RDVY】が11.8%と最も高く、【SCHD】が差のない11.6%で続き、【VIG】が9.6%で3番手です。4番手が【DGRO】で8.3%、5番手は【NOBL】で7.4%です。
3年と5年は【RDVY】と【SCHD】が素晴らしいですね。
7年と10年増配率は?
続いて7年と10年増配率です。
7年は【RDVY】が14.7%と素晴らしく、【SCHD】が12.0%で続き、【DGRO】が10.1%で3番手、【NOBL】が9.1%で4番手です。
10年は【SCHD】が11.0%と最も高く、【NOBL】が9.9%で続き、【RDVY】が8.9%で3番手です。4番手が【DGRW】で8.4%、5番手は【VIG】で7.9%です。
7年と10年も【SCHD】と【RDVY】が素晴らしく、【NOBL】の成績も良かったです。【DGRO】は10年のデータはなく、7年は10.1%と高水準でした。
トータルリターンと分配金利回りの関係は?
トータルリターンと分配金利回りを散布図で比較します。
縦軸がトータルリターン、横軸が分配金利回りです。右上が素晴らしいという意味です。
まずは3年です。
一般的な傾向として、分配金利回りが低いETFはトータルリターンが高く、分配金利回りが高いETFはトータルリターンが低い傾向にあります。
傾向を示す赤いラインを背景に加えます。
過去3年の場合は、分配金利回りの高いETFがトータルリターンも優れているケースが目立ちます。
【FDL】、【DHS】、【HDV】などは、この赤いラインよりも右上に位置しています。
逆に【NOBL】や【FVD】は分配金利回りが低く、トータルリターンも低いということになります。
5年リターンと分配金利回りを比較
続いて過去5年を見ていきます。
過去3年と比べると、左上から右下に向かって、ETFが点在しています。
分配金利回りが低いETFはトータルリターンが高く、分配金利回りが高いETFはトータルリターンが低いというのが、はっきりとわかりますね。
傾向を示す赤いラインを背景に加えます。
過去3年よりも赤いラインの幅を細くしましたが、ほとんどのETFが収まっています。
【SCHD】と【FDL】が赤いラインよりも右上に位置しており、高配当&高リターンというわけです。
10年リターンと分配金利回りを比較
最後に過去10年を見ていきます。
過去5年とだいたい同じですね。分配金利回りが低いETFはトータルリターンが高く、分配金利回りが高いETFはトータルリターンが低いです。
傾向を示す赤いラインを背景に加えます。
過去5年と同じで、【SCHD】と【FDL】が赤いラインよりも右上に位置しており、高配当&高リターンです。
【FDL】はすべての期間で赤いラインより右上に位置していました。高配当でありながら、リターンもなかなか高いETFです。【SCHD】は5年や10年で、赤いラインより右上でした。
分配金利回りとトータルリターンという観点からは、この2ETFがよかったですね。
逆にイマイチだったのが、【FVD】、【NOBL】、【SDY】ですかね。
将来YOCはどうなるか
それでは、いまETFを購入したら、将来、取得価額に対する利回り(YOC/Yield On Cost)がどのくらいになるのかをシミュレーションします。
現在の分配金利回りに過去の増配率を当てはめて計算していきます。
3年、5年、7年、10年の増配率を使用します。
「分配金は再投資しない。税引き前」という設定です。
計算式はこんな感じです。現在の分配金利回りを基準にして、年間増配率に年数をかけて計算します。
たとえば現在の分配金利回り3%、年間増配率6%だったら、10年後のYOCは5.37%になります。これは、配当成長モデルによるYOC予測とも言います。
現在の分配金利回りの高い順に左上から右下に向かって並んでいます。スタート地点の分配金利回りは結構重要です。
まずは3年増配率を使った将来YOC予想です。
左側の赤い棒グラフが10年後YOC。右側の青い棒グラフが20年後YOCです。
10年後YOC予想は、【RDVY】が11.3%で首位、【FDL】が10.3%で2番手、【SCHD】が9.1%で3番手です。
20年後YOC予想は、【RDVY】が79.4%で圧倒的に首位、【FDL】が25.7%で2番手、【SCHD】が23.3%で3番手です。
【RDVY】は3年増配率が21.7%と抜群に高かったため、将来YOCも伸びました。ただ今後20年間の増配率の平均が21%というのは、不可能な気がします。
5年増配率を使った将来YOC予想
続いて5年増配率を使った将来YOC予想です。
10年後YOC予想は、【SCHD】が10.6%で首位、【FDL】が7.9%で2番手、【DVY】が6.3%で3番手です。
20年後YOC予想は、【SCHD】が31.8%で首位、【FDL】が15.2%で2番手、【RDVY】が14.4%で3番手です。
5年増配率を使った場合は、増配率11.6%で分配金利回りも3.5%と高い【SCHD】の成績が良かったです。
7年増配率を使った将来YOC予想
続いて7年増配率を使った将来YOC予想です。【QDIV】はありません。
10年後YOC予想は、【SCHD】が11.0%で首位、【FDL】が9.3%で2番手、【DVY】が7.1%で3番手です。
20年後YOC予想は、【SCHD】が34.4%で首位、【RDVY】が24.1%で2番手、【FDL】が21.1%で3番手です。
7年増配率を使った場合は、増配率12%で分配金利回りも3.5%と高い【SCHD】の成績が良かったです。
10年増配率を使った将来YOC予想
最後は10年増配率を使った将来YOC予想です。【SPYD】、【QDIV】、【DGRO】はありません。
10年後YOC予想は、【SCHD】が10.1%で首位、【FDL】が8.7%で2番手、【DVY】が7.1%で3番手です。
20年後YOC予想は、【SCHD】が28.8%で首位、【FDL】が18.3%で2番手、【DVY】が14.1%で3番手です。
10年増配率を使った場合も、増配率11%で分配金利回りも3.5%と高い【SCHD】の成績が良かったです。
全体的に見ると【SCHD】が素晴らしく、【FDL】が2番手です。この2つが他を大きく引き離しました。3番手は【RDVY】、4番手が【DVY】ですね。【RDVY】は分配金利回りは低いですが、増配率が高いので、将来YOCはかなり伸びました。
それぞれの項目をランク分け
これまで取り扱ったデータをランクづけしました。「A」が最高で「B」「C」「D」の順です。「S」はありえないほど最高の場合です。【VOO】の運用総額のみ当てはまりました。
相対比較で、やや強引に差をつけました。参考程度にしてください。
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上段が基本的なデータ。下段がこれまでの成績ですね。どのデータを重視するかは、人それぞれですね。
高配当ETFの基本と言えば、現在の分配金利回りです。左から分配金利回りの高い順に並んでいます。
トータルリターンを重視する人も多いですね。右側の分配金利回りの低いETFに「A」評価が目立ちます。
増配率を重視する人も多いですね。【SCHD】、【DGRO】という優良ファンドに加え、【RDVY】が「A」評価でした。
【SPYD】、【HDV】、【VYM】の高配当御三家ETFは、最近の分配金が今ひとつのため、増配率はそろって「C」評価です。やや意外な結果ですね。
シャープレシオはトータルリターンと成績が似ています。米国ETFはリスクの差があまりないためです。この2つを比較すると面白いですね。たとえば【DGRO】はトータルリターンはB評価ですが、シャープレシオは「A」評価です。優良ファンドのにおいがしますね。
逆に【RDVY】はトータルリターンは「A」評価ですが、リスクが大きすぎるので、シャープレシオは「B」評価になっています。
ランキングの数をまとめる
「S」「A」「B」「C」「D」の数値をまとめたデータです。
「S」はVOOに1つあっただけです。
「A」の数は【VIG】が8個で最多、【SCHD】が7個で続いています。
「B」の数は【VTV】が11個で最多、【VYM】が10個で2番手です。
「S」「A」「B」を合わせた数は【VYM】、【VTV】、【DGRO】が15個で最多、【SCHD】が14個で続いています。
ランキングの数から総合的にみると、【VYM】、【VTV】、【DGRO】、【SCHD】が良かったということですね。
【VTV】は今回の分析で登場したのは、最初の高配当でも増配でもないバリューETFというところだけですね。特に際立った成績があるわけではないですが、ほとんどの数値が平均以上の「B」評価です。【VYM】と少し似ています。
今回は高配当に関するデータが中心だったので、右下の低配当ETF、【VIG】、【DGRW】、【VOO】などの成績があまり良くなかったのは、仕方ないです。気にする必要はありません。ご存じの通り、これらは優良ファンドです。
全18ETFの分配金の傾向を一挙公開!
最後に、それぞれのETFの分配金をグラフにしたので確認しましょう。分配金の傾向を一言コメントします。
まずは【SPYD】。分配金は微増です。7年増配率は3.9%と少し物足りません。
続いて【FDL】。2023年に一気に増えました。分配金利回りは4.1%と高く、10年増配率も7.7%と高水準ですが、分配金の伸び方はやや不安定です。
【HDV】の分配金は堅実に伸びていますが、10年増配率は5.3%なので、それほど高くはないです。
【DHS】は貴重な毎月分配型ですが、そのためNISAの対象外。オーソドックスな米国高配当ETFで毎月分配型はこのETFだけです。10年増配率は6.7%とまずまず。
【DVY】の分配金の伸びは鮮やかです。ほぼ減配していません。10年増配率は7.1%となかなか高いです。
【SCHD】です。分配金利回りが3.5%ほどと高水準で、それでいて10年増配率は11%と極めて高いです。SBIや楽天の投資信託版の売れ行きが絶好調なのもわかります。
【QDIV】は設定から日が浅いETF。毎月分配型です。5年増配率は5.4%と今ひとつ。直近1年の分配金もも前年より少し減らしました。
【VYM】は高配当ETFの代表格。分配金の増え方は鮮やかでしたが、ここ1年はやや軟調で、前年とほぼ同じでした。10年増配率は6.2%なので、少し物足りないかもしれません。
【SDY】は2017年までキャピタルゲイン分配金を出していました。それを含めずに増配率は計算しています。2021年以降の分配金は横ばいです。連続増配ETFですが、近年はあまり増配していません。
【VTV】は今回紹介したETFの中でVOOに次いで運用総額が大きいです。大型バリュー株が対象。分配金の伸びは素晴らしいです。10年増配率は7.7%と高水準。
【DGRO】は米国ETFは購入できませんが、東証上場ETFの2014が中身が同じです。7年増配率は10.1%とかなり高いです。
【FVD】は設定が2003年とかなり古株で、リスクが抑えられているのが特徴です。分配金は右肩上がりですが、少し不安定。10年増配率は5%と今ひとつ。
【NOBL】はS&P500配当貴族銘柄を集めたETF。10年増配率は9.9%と高いですが、3年増配率は3.2%と今ひとつ。
【DLN】は配当を支払っている米国大型株が対象。毎月分配型。10年増配率は6.0%とまずまずですが、最近の分配金はやや停滞気味です。
【VIG】は分配金の伸びが素晴らしいです。とくに2021年9月にベンチマークを変更して以降が際立っています。10年増配率7.9%、5年増配率9.6%と高水準です。
【RDVY】は2022年の分配金が突出しています。10年増配率は8.9%、5年増配率11.8%と高いですが、1年増配率はマイナス10%。分配金にかなり波があり、難易度の高いETFです。
【DGRW】は将来増配しそうな銘柄で構成されたETF。日本の個人投資家に人気のあるETFです。10年増配率は8.4%と高水準ですが、3年増配率は2.1%とやや停滞しています。
【VOO】はS&P500が対象のETF。分配金利回りは1.2%と低く、キャピタルゲイン狙いのETFですが、10年増配率は6.7%となかなか高いです。
まとめ
✅分配金利回りが高いと、トータルリターンが低くなるのが一般的な傾向だが、【SCHD】、【FDL】は高配当でありながら、リターンもなかなか良かった
✅【SPYD】、【HDV】、【VYM】の高配当御三家ETFは、最近の分配金がそれほど良くないので、増配率は他のETFと比べて今ひとつ。【VYM】はそれ以外の項目は高水準
✅全体的に優れていた【VYM】、【VTV】、【DGRO】、【SCHD】はいずれも運用総額が大きかった。ETFの場合、規模と成績はわりと比例
✅上位セクターは、高配当ETFだと金融、生活必需品、ヘルスケアが中心、低配当のETFだと情報技術と金融が入っているケースが多かった
✅シャープレシオは【VOO】が素晴らしく、それ以外だと【DGRW】、【VIG】、【DLN】、【DGRO】などが良かった
✅【RDVY】はリターンや増配率がかなり高水準だが、金融の占める割合がかなり多く、リスクが大きい

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